両チームの弱点箇所がマッチアップ。「ベルギー対日本」の見どころに迫る!
写真:岸本勉/PICSPORT
決勝トーナメント1回戦で、西野ジャパンが対戦するベルギーは、ここ10年の間に欧州で最も力をつけたチームだ。82年スペインW杯から02年日韓共催W杯まで連続8大会本大会に駒を進め、最高位は86年メキシコ大会のベスト4。ベスト16入りも4回記録している。しかし、ユーロでは振るわず、欧州では二流国の域を脱せずにいた。
06年と10年は予選落ち。ベルギーは気がつけば二流以下に転落していた。そうした現実に危機感を抱いたのか、選手の育成に強化に力を注いだ。その成果が、今日の姿というわけだ。
かつては個人技に優れた選手が少なかった。質の高い選手が絶対的に不足していた。欧州レベルと呼ぶに相応しい選手といえば、ルク・ニリス、シーフォ、クーレマンスぐらいに限られた(プロドーム、パフなどGKを含めれば、もう少し増えるが)。
そのベルギーがいまや、選手のタレント性では欧州のトップクラスの座に就いた。日本とベルギー。選手個々を比較すれば、0対3で敗れても仕方ないぐらい、両国には力の差がある。
しかしサッカーは個人競技ではない。チーム戦として両国を比較すると、その差は縮まる。日本に付け入る隙は出てくる。
西野ジャパンの戦術が特別、優れているから、というわけでもない。ひとつは相性のよさはある。日本の武器はパス回しだ。前回ブラジルW杯がそうだったように、パスを悪い場所で引っかけられないことが、最も用心すべき点になる。
例えば1対4で敗れたコロンビア戦では、真ん中で難しいパスを繋ごうとして奪われ、ショートカウンターを浴び、攻めれば攻めるほど、決定的なピンチに陥るという症状に陥った。
だが、ベルギーは高い位置から厳しいプレスを掛けてくるチームではない。布陣は3-4-3。このベルギー式3バックは、5バックで後ろを固める傾向がある、攻撃的か守備的かといえば、後者の匂いがするサッカーだ。
後ろを固めているからといって、穴がないわけではない。3-4-「3」の「3」の左に位置するアザールが、試合の多くの時間(スペインのイスコのように)、ピッチの真ん中で構えるので、左サイドは、その一列下で構える左ウイングバック、カラスコ1人になりがちだ。その3-4-3は左右が非対称の関係にある。
ズバリ、日本の狙い目はここになる。右から効果的な攻めを見せることが、ベルギーを混乱に陥れる最善策と考える。
しかし、残念なことに、日本の右サイドはけっして強くない。4-2-3-1の3の右を担当している原口元気は、例えば同じポジションの右で構える乾貴士に比べると、活躍度という点で大きく劣る。
西野監督は、原口を常に右で使うが、適性はどう見ても左だ。右という苦手な場所でもがき苦しんでいるように見える。グループリーグの2試合(コロンビア戦、セネガル戦)では、途中交代で本田圭佑が投入された。セネガル戦では貴重な同点ゴールを叩き込んでいるが、3試合目(ポーランド戦)では、出番がなかった。ゴールこそ決めたが、動きは鈍そうに見える。ゆっくりで、重たそうで、日本のよい意味で軽いパス回しに溶け込めていない感じだ。
ポーランド戦では、そこに酒井高徳がスタメン起用された。その下で構える右サイドバックには、酒井宏樹がこれまで通り先発出場したので、右サイドには従来のサイドバックが、2人縦に並んだことになる。
華やかさはないが、堅い作戦だ。試合の後半、万が一日本リードで終盤を迎えたときなどに、オプションとして有効かと思われるが、試合開始からどうなのか。右サイドを得意にするアタッカーを選ばず、左を得意とする選手(乾、宇佐美、原口)ばかりを選んだ弊害を見る気がする。
それが、決勝トーナメント1回戦対ベルギー戦という大一番を前に、鮮明になっている。突くべき場所は見えているのに、突くべき選手がいない。あえて選ばずに、ロシアに来てしまった。
日本は第3戦のポーランド戦で、同じ顔ぶれで戦った1、2戦とメンバーを一新。スタメン11人中6人を入れ替えて臨んだ。西野監督は冒険に出で、そして何とかベスト16入りした。
植田直通、大島僚太、遠藤航。フィールドプレーヤーでは、この3人以外の全員が1度ピッチに立っているので、誰が活躍しそうで、誰が活躍しなさそうか、ある程度、見極めがついている。
多くの選択肢を残しながら決勝トーナメント1回戦を迎えている。そうした余裕が全くなかった過去2回とは、様子がずいぶん違う。その点はとても評価できるが、右サイドの問題は未解決に終わっている。そしてその点が次戦のベルギー戦で、大きなウエイトを占めようとしている。西野監督はどう対処するつもりなのだろうか。僕にとっての一番の注目点は、日本の右サイド対ベルギーの左となるのだ。