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大分トリニータ第二次片野坂知宏体制のトリプルハイブリッドシステムとクアドラプル戦術モデル

遂に2024J2リーグが開幕しましたね*
大分トリニータは第1節、ホームにベガルタ仙台を迎えての一戦となりました。
結果は1-1のドローでしたが、片野坂監督が準備を進めてきたものがあまりにもおもしろかったのでお伝えしていきます*

この記事の後で仙台視点の内容や大分(🆚横浜FC)、仙台(🆚長崎)両チームの第2節のプレビューも週内にアップしていきますので、ぜひ!

大分サポの皆さん、開幕節からわかる2024大分トリニータの戦術キーワードは
『ハイプレッシング』
『クイックプログレッション』
『トランスフォーメーション』
『カタノ・ボール』
の4点です*

試合の流れは記事終盤の『トランスフォーメーション』とともにお伝えします*。
大分と対戦されるチームの皆さん、対戦される場合は心してかかってください*

◎第二次片野坂体制戦術キーワード『ハイプレッシング』

昨季の下平体制時から継続してチームに在籍する選手が多いため、2023シーズンのデータ分析記事で触れた通り、前線からのプレッシングや自陣侵入を許さない「封鎖力」は現状の大きな強みとなっています。監督交代で新たな色に染め上げるのはなく、強みを活かす選択はとても効率的です。

わかりやすいデータ指標を用いれば、PPDAと呼ばれるプレス強度・意識を示す項目があります。
※PPDAとは【守備アクションあたりのパス数】で表されます。チームが一度の守備フェーズでボールを取り戻すまでに、相手チームに何本のパスを繋ぐことを許したかを示すものです(詳しくは過去記事参照)。PPDAの数値が低いほど、アグレッシブなプレスをかけていることになります

ベガルタ仙台戦における大分のPPDAは「6.31」
平均は10.00ほど。意識の高さ・強度がわかります。まだ初戦、リーグランキング的な意味は薄いものの、リーグでは5番目に高い数値とも出ています。
ちなみに、
昨季の大分  :8.35
この試合の仙台:9.79
昨季比較、試合内比較でも強度・意識の高さがわかります。

仙台戦では、プレッシングやカウンターからの得点はなかったものの、4-4-2で守る仙台に対して流れの中からの効果的な攻撃を与えなかった部分は実を結んでいたと言って良いでしょう。

◎第二次片野坂体制戦術キーワード『クイックプログレッション』

2017-2022の川崎フロンターレ&横浜F・マリノスの保持型二大王朝時代に保持型チームの研究や解析が進み、2022年のカタールW杯における森保ジャパンが優勝経験国であるドイツ・スペインを打ち破ったことで保持型対抗手段戦術の新潮流「強度を高く、縦に速く」の『クイックプログレッション』を扱うチームが増えました。大分も取り入れた格好です。前項目『ハイプレッシング』同様、今回は得点にこそ繋がらなかったものの、先発メンバーのラインナップと初期配置から興味深い構造となっています。

安藤智哉、ペレイラの両CBに加えて本来CBの藤原優大が右SBで起用されたことは、仙台LMF相良竜之介を1on1でマークする狙いはあったでしょう。しかしさらに、状況次第ではその藤原をRCBに据え、LSB香川勇気を半列アップ、RWG松尾勇佑を半列ダウンすることで、昨今隆盛の守備時5-2-3/攻撃時3-2-5の可変対応も狙っていたのではないでしょうか*

4-4-2のフォーメーションは攻撃時に2-4-4化します。すると守備時5-2-3は敵守備陣2名に対してプレス隊3名、敵攻撃陣4名に対して守備隊5名とどちらも「+1」の構造になっており、攻撃時3-2-5は敵プレス隊2名に対して3名でのビルドアップが可能、敵守備隊4名に対して5枚で攻撃できることから、どちらの局面においても1人多い形でプレイできる形となります。
FW宇津元伸弥は上背こそないものの、抜群のスピードをもっています。プレス局面や裏抜けに強い選手であり、シャドーに入ったFW渡邉新太も同様。仙台戦ではDFと競らせるロングボールではなく、守備準備不十分状態の仙台守備陣の裏を突くようなアクションも見受けられました。ただ、GK濱田太郎含めたロングボールが裏ではなく、FW宇津元伸弥が戦う展開も少なくありませんでした。
序盤なかなか得点・シュートシーンまで至らなかったことで、ロングボール戦略でバトルさせるならば最初からFW長沢駿を活用するはず…と感じた方も少なくないかもしれません。実行に移していないのであれば、やらないだけの理由があるはず。自ずと浮かび上がるのが「これも作戦だったのではないか」という疑問です。
しかしその疑問は後半途中頃から解消されることとなりました。

◎第二次片野坂体制戦術キーワード『トランスフォーメーション』

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