ノーミルク佐藤フットボールゼミ

城福浩vsハリー・キューウェル~データへの考え方の立ち位置が分けた勝負の明暗~│東京ヴェルディ🆚横浜F・マリノスレビュー

両監督の采配の意味や互いのスタイルへの対策の数々に拳を握りしめながら…見入っちゃいましたね…*
どうも、ノーミルク佐藤です*

本日は【2024J1リーグ開幕節、東京ヴェルディvs横浜F・マリノス】の一戦のレビューをしていきます。
結果は1-2。
序盤に東京VのWG山田楓喜が自信満々にFKを狙い撃てば、横浜FMは終盤にPKを獲得し、CFアンデルソン・ロペスが決めきって同点。後半アディショナルタイム、松原健が逆足の左足を対角に振り抜いたシュートが決まって横浜FMの逆転勝利。

単に試合展開を追うだけならば、ハイライトを視聴すればよく、選手や監督のコメントが気になるのであれば、Jリーグやチームの公式サイトで事足ります。だからここでは、戦術やデータ的な側面からわかる指揮官「城福浩🆚キューウェル」に焦点を当てた上で進めていきます*

 

◎前半│先手は城福浩/拡大と収縮でマリノスに突きつけた課題

城福浩監督は森保一日本代表指揮官同様「良い守備から良い攻撃」を戦術の核とする監督です*
横浜FM戦ではコンパクトな4-4-2を軸に、RSB稲見哲行だけはマリノスLWGエウベルに対してフェイスガードのような距離を保っていました。
敵陣内では、FW染野唯月やFW木村勇大が高い位置でボールホルダーにチェックを仕掛けます。ボールの奪いどころや自陣後方のポジショニングがセットされた後、自陣撤退局面に持ち込み、収縮型のコンパクトディーププレス4-4-2へ移行。

横浜FMは東京Vのコンパクト4-4-2の中にボールを通したくても、パスコースは敵味方で密集しており、チャレンジするパスを選択すれば、東京Vの封鎖包囲網に引っかかってカウンターを食らう展開に。封鎖網回避のため、両サイドのアウトサイドレーンにパスを回し、大外から揺さぶり続けて、東京V守備陣の集中力を削ぐために、コンパクトな布陣に風穴を開ける動きを続けましたが…東京Vの集中力が削がれることはありませんでした。

東京Vは絶えず守備フェーズが続くわけではなく、プレスからボールを奪ったカウンターからピッチの幅全体を大きく活用した3-2-5/2-3-5のシステムで横浜FMの守備陣を強襲。拡大/攻撃フェーズ⇔敵陣奪取フェーズ⇔自陣ブロックフェーズを自信たっぷりにプレーし続けました。とても好感を持てたのは、東京Vの選手たちは自分たちがボールを奪ったりやブロックで跳ね返すごとに、その選手を褒める・励ます等の承認活動が見受けられたことです。決して一人で戦っていない、集団で戦っているさまが見受けられました。

◎後半00~10分│変化なき状態

東京Vにとっては、横浜FMの急所を抑え続けていることが重要でした。横浜FMのアンカー喜田拓也を封鎖することで、Wトップ下のOMF山根陸やOMF渡辺皓太を二次的に無効化。彼らがボールに触るためには、4-4-2ブロックの外側へ回らざるを得ません。ここでキューウェル監督が決断です。

◎後半10分│キューウェルの仮説検証と城福浩の回復

横浜FMはRWG水沼宏太とDMF喜田拓也を下げて、RWGヤンマテウスとLWG宮市亮を投入します。LWGエウベルをトップ下&2TOPの一角へポジションスライド。すなわち、就任以後頑なに続けてきたWトップ下型を一時的に諦め、山根陸と渡辺皓太に昨季継続のWボランチを任せます。その数分後、東京Vは両サイドを変更。LMF齋藤功佑とRMF山田楓喜を下げてLMF山見大登とRMF河村慶人を投入。プレスにカウンター、可変スライドと前半から続いた多くのタスクを担った二人の交代は、おそらくはリード時に元から考えられていたものでしょう。4-4-2の強度回復も狙っていたでしょうか。

東京Vが現状の継続を狙った一方で、横浜FMは指向性的には一歩下がったような交代アクションに。ただし、このアクションはキューウェル監督にとっての仮説検証。中盤の形に変化があることで、自軍と敵軍にどのような変化が起こるのか、実験したのではないでしょうか。

◎後半25分~後半35分│キューウェルの仮説検証を疑い始める城福浩

横浜FMは後半27分にCMF渡辺皓太とLWGエウベルをOMF天野純、OMFナムテヒを投入することで、DMF山根陸をアンカーに据えた4-1-2-3に再び戻ります。中盤を活性化する交代に、城福浩監督はFW木村勇大からFW山田剛綺にシフト。
このあたりから城福監督は何かを疑っているようでした。横浜FMは機能不全に陥った4-1-2-3から4-2-3-1や4-4-2/4-2-4に変更して攻撃の精度が向上。全てのポジションがマンツーマン状態になる形は、横浜FMの質的優位が上回る可能性が高くありました。
そこで元に戻す仕掛けは東京V側にとっては不気味に思わずにはいられません。しかし、着手すべき課題もなく、現状ステイとなります。ただし、この段階でキューウェル監督はあるポイントに確信をもったように感じられました。
J1の開幕戦を見続ける中で、今季は昨季よりも「守備陣の体力や選択肢、余裕」を奪うアクションが多く見受けられています。この時点で一人のデータに想定外の数値が、もう一人の関与アクションデータに明確な差が見受けられていました。

◎後半40分以降│決定打となった横浜FM植中朝日の投入

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