スポーツが「より速く、より高く、より強く」を求める限り男子との比較になる 女子Fリーグ・フウガドールすみだレディース取材から考える集客 女子サッカーと共通の課題
「WEリーグの集客をどうすれば良いか?」取材を通して次から次への見つかる女性スポーツの課題、そして最後に大きな問題が
今回は「外からの視点で女性スポーツと女子サッカーを考える」をテーマとします。女子Fリーグの選手、関係者は、競技の魅力をどのように捉えているのでしょうか。どこからファンを拡大し集客しようとしているのでしょうか。その視点から女子サッカーの集客を考えます。
東京都墨田区で活動するフウガドールすみだレディースを取材
女子Fリーグでは、現在、ファイナルシーズンが行われています。筆者は墨田区総合体育館に足を運び第12節(2023年12月1日:フウガドールすみだレディースVSミネルバ宇部)、第13節(2日:フウガドールすみだレディースVSエスポラーダ北海道イルネーヴェ)を取材しました。第13節は、一枚のチケットで男子Fリーグ、フウガドールすみだVS名古屋オーシャンズも観戦できる男女同日同会場興行です。
取材対象となったフウガドールすみだレディースが残す試合は2024年1月21日(日)さいたまサイコロ戦(サイデン化学アリーナさいたま)、1月27日(土)流経大メニーナ龍ケ崎(キリンレモンスタジアム ソルトアリーナ防府)の2つのみ。2023年6月に開幕した女子Fリーグの最終順位が決定します。
驚きの連続となった生観戦、攻守の入れ替えが激しい女子フットサル
まずは、女子Fリーグの魅力をお伝えしましょう。筆者が女子Fリーグを現地で見るのは初めて。驚いたのは、予想以上にフィジカルコンタクトが強く試合展開が激しいことです。見た目だけではなく、音によるグルーヴも印象的です。シュート打つ際の音が天井に響きます。
試合会場は常にアクティブで前向きな空気に包まれています。「サッカーのペナルティーエリアとペナルティーエリアをくっつけたような感じで攻守の入れ替えが激しいところ」それが、この試合で主将を務めた勝俣里穗選手の話すフットサルの魅力です。
確かに、それは納得する見どころで、筆者は「もっと早く女子Fリーグを現地で見ておくべきだった」と思いました。長く男子Fリーグを観戦していなかった筆者には、女子Fリーグは迫力満点で、かつ、プレーする選手が楽しそうで魅力に溢れていると感じました。
おそらく、筆者が、長く男子Fリーグの試合を観戦していなかったので先入観を持っていなかったことも影響しています。もしかすると、WEリーグも、同じように海外サッカーやJリーグを見慣れていない「女性スポーツへの先入観の薄い層」をファンにしていくと商機を掴めるかもしれないと思いました。
女性スポーツの強みと弱みを考えてみる
筆者は試合と別日にフウガドールすみだレディースでプレーする豊川季絵選手を訪ねました。豊川選手は女子サッカー選手として十文字高校と筑波大学でプレー。その後、フットサルに転向しています。外からの視点で女子サッカーにヒントを提供していただくにはピッタリのアスリートです。そしてもう一つ理由があります。それは豊川選手のお仕事です。
女性スポーツをよく知る女子フットサル選手を訪ねる
豊川選手の取材場所はJFAハウスの入居しているビルとなりました。なぜなら、豊川選手の職場がそこにあるからです。豊川選手は日本トップリーグ連携機構(JTL)に勤務しているのです。日本トップリーグ連携機構は、団体ボール競技が連携し、互いのリーグの強化活動の充実並びに運営の活性化を図っていくことを目的に設立された組織で、代表理事 会長は川淵三郎さんです。
豊川選手は日本トップリーグ連携機構の中でWoman Athletes Project(女性アスリートプロジェクト:通称WAP)を担当。参画する7つの女子リーグ(女子サッカー WEリーグ、バレーボール Vリーグ、バスケットボール女子 Wリーグ、ソフトボール女子 JDリーグ、フットサル Fリーグ、ハンドボール JHL 日本ハンドボールリーグ、ホッケー ホッケー日本リーグ女子 HJL)を結ぶ仕事をしています。
「男子と比べるとスピードが遅いけれど」と前置きが付いた理由
豊川さんは女性スポーツの魅力をどのように考えているのでしょうか。お聞きする前に気になることがありました。
筆者が、先日の試合後の会見で「フットサルの面白さ」を質問した際に勝俣選手の回答に「男子と比べるとスピードが遅いけれど」と前置きが付いたところです。
スピードやパワーが男子との比較になるのは仕方ない
さまざまなスポーツ団体との接点がある豊川選手に、そのことをお話しすると、予想外の答えが返ってきました。
「スポーツが『より速く、より高く、より強く』を求める限り男子との比較になるのは仕方ないですね。」
競技レベル向上の目標として、アスリートやファンが、より運動能力の高い人を設定してしまうことは自然なことだというのです。運動能力だけで比較すれば、女性スポーツは最高点に到達することは難しくなります。そのため、多くの女子選手も、最終的な目標や憧れの選手に男性アスリートの名前を挙げています。
女性スポーツが活路を見出す魅力とは何か?
では、女性スポーツは、ファン獲得のために、どこに活路を見出せば良いのでしょうか。豊川さん個人の考えを聞きました。
「女性スポーツの場合は優れた技術や、その人らしさを表現するビジュアルも含めたプレーするスタイルやアスリートの持つストーリーが大切になっていると思います。そのトータルで『この人がこんなプレーをするんだ!』といった驚きが生まれてきます。だから、競技力やスピード・パワーといった運動能力以外の魅力も発信していくべきだと思っています。」
女性の大会が男性の大会の人気を上回るプロゴルフ
日本では、女性スポーツは男性スポーツよりも劣るのか……そこで思い出したのが女子プロゴルフです。
女子のLPGAトーナメント(大会)数は男子のJGTOトーナメント数の約1.5倍。賞金総額でも女子が男子を上回ります。さらに女子の大会はテレビの視聴率も高く、選手のスポンサー獲得も比較的良好です。ゴルフは女性の大会が男性の大会の人気を上回るプロスポーツです。
男子選手の誇るパワーとは違うところで女子プロゴルフは魅力を開花させました。LPGAはファンやスポンサー企業を重視し、プロスポーツに対する潜在的な要望に応えるスタンスを明確に打ち出してきたのです。
女子プロゴルフ(LPGA)の3つの魅力
・選手のタレント性が高い
個性を感じられるストーリーの打ち出し。自分らしさを表現するファッション等のスタイル。積極的なメディアへの登場。
・「プロアマ」等のスポンサーメリットとホスピタリティ
大会の前にスポンサーが選手と一緒にプレーできる「プロアマ」のバリュー向上。選手によるフレンドリーなスポンサー対応、ファン対応の徹底。
・戦略面の面白さを強調
パワーだけではなく、どこにどのように打つと勝利に結びつくのか、ゴルフの戦略面の面白さに気づいてもらえるように誘導。
LPGAが新人選手対象のセミナーを開講し、言葉遣いや挨拶、ファンやスポンサーを顧みる意識を持つよう教育を徹底してきたことはよく知られています。ファンサービス、写真会、サイン会等の努力が口コミを広げ、今につながっています。
見習うべきは、そうしたアクションに加え、ターゲットが明確だという点です。ゴルフブック株式会社の公開したデータ(https://golfbook.co.jp/beginners-golf/jyosi-heikin/)によると女子プロゴルファーと男性の一般的なプレーヤーのドライバーの平均飛距離の違いは20ヤードくらい。パワーを売り物にする男子プロゴルファーと比べるとその飛距離の違いは小さいです。そのため、女子プロゴルファーは男性のゴルフ愛好家(アマチュアプレーヤー)がプレーの参考にしやすい存在なのです。
男性のゴルフ愛好家(アマチュアプレーヤー)は人数が多いですし可処分所得も高い。また、競技の特性上、マナーが良い。適切なターゲティングが行われてきわたけです。
誰から支持を集めれば良いのかターゲティングが重要
全国リーグを展開する女子サッカーと女子フットサルにとって、適切なターゲティングの一つの鍵になるのは「地域」かもしれません。今、社会は女性の活躍を求めています。ビジネスでもスポーツでもアートでも、地域で活発に活動する女性の姿に共感し後押しする機運は全国各地で高まっています。
フウガドールすみだレディースのゴレイロ(ゴールキーパー)須藤優理亜選手はフットサル日本女子代表でも活躍しています。須藤選手は、どのような人に来場してほしいと考えているのでしょうか。聞いてみました。
「墨田区で活動し愛されるチームを目指しています。墨田区民の皆様に来ていただくのが一番の幸せです。フットサルやサッカーに興味がなくても、SNSで選手の写真を見て興味をお持ちになってご来場される方もいらっしゃいます。実際に現地で観戦して『フットサルって面白いな』と思っていただけると嬉しいですね。」
応援しがいのある親近感を感じる存在に
実際の客層について、フウガドールすみだレディース女子強化部長の樫福由佳さんに聞いてみると、このような答えが返ってきました。
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