2年目のシーズンは良い距離感から次のアクションを生みだす ノジマステラ神奈川相模原 代表取締役社長 馬場正臣さん
WEリーグ1年目のウィンターブレイクに起きた最大のニュースは、ノジマステラ神奈川相模原の「代表取締役社長の交代およびチームスタッフ編成に関するお知らせ(2022年3月1日)」でした。FCふじざくら山梨の監督だった菅野将晃さんがノジマステラ神奈川相模原へ復帰。4月1日より取締役としてフロント入りしました。2022―23の新シーズンよりGM兼監督として再び指揮を執り、ノジマステラ神奈川相模原はリスタートします。
シーズン途中でノジマステラ神奈川相模原の代表取締役社長に就任された馬場正臣さんは、シーズン当初は取締役でした。人とのつながりを大切にする明るいお人柄の方です。
ウィンターブレイク後のノジマステラ神奈川相模原はどのように変化したのでしょうか。なぜ、異例ともいえるシーズン途中の体制変更を決断したのでしょうか。そして、どのように2022–23の新シーズンを迎えるのでしょうか。
今回は、ノジマステラ神奈川相模原 代表取締役社長の馬場正臣さんに直撃しました。
プロ契約になった選手たちとの関係に苦慮した1年目の立ち上がり
馬場—なんとかやり切った試行錯誤のシーズンでした。まず、プロ化に伴い(シーズン開幕前に)クラブのコンセプトを作り直す必要がありました。WEリーグがスタートし、クラブはどのように興行として成立させるかを手探りで進めていきました。集客をKPI(重要業績評価指標)にしたときに、前半戦で、なかなか思うような成果を出すことができなかったことを踏まえて、後半戦をなんとか盛り上げたいと思いました。
WEリーグ事務局では差別化のフックとして女性活躍やダイバーシティを掲げました。ただ、軸足の重心が理念にかかり過ぎて、マネタイズの方針がクラブの現場で明確に定まりませんでした。その結果、リーグ全体として集客が足りませんでした。
1試合あたりの平均入場者数5千人という目標を定め、J2のレベルにまで引き上げようとしたものの、それに見合った、WEリーグ事務局、クラブ、選手の発信力、集客の取り組みをもっとやるべきでした。各クラブの集客力を強めるために、各々が取り組んでいますが、当初は、プロ契約になった選手たちに、どのように集客活動をお願いするのか戸惑ったところはあったと思います。
—選手がプロ契約し個人事業主としてクラブから独立したがゆえに、どこまでの活動を依頼するのか、当初は定まらなかったのですね。
馬場—そうです。そのノウハウが不足していました。クラブから選手に明確な方針を示すことができていなかったと思います。
—こうしたことは手探りの中で見えてきたのでしょうね。
馬場—そうですね。「一年目だったから」というエクスキューズはあるのですが、それ以上に「結果を出せなかった」というのが、一年目のシーズンの振り返りです。
空いてしまったファン・サポーターと選手との距離感
—馬場さんが考える、現時点のノジマステラ神奈川相模原の魅力を教えてください。
馬場—本来は「選手とファン・サポーターの距離感が近い」のが魅力です。WEリーグ開幕後も、引き続き親しみやすさを提供するべきでしたが、コロナ禍がファン・サポーターとの物理的な距離を空けてしまいました。そして、意識の距離も空いてしまったと思います。その距離感は埋めづらかったです。
—ファン・サポーターと選手との距離感は痛し痒しのところで、このシーズンにおいてはコロナ禍で物理的な距離を空ける必要がありました。そして、指導者の方針によって適切な距離感が変わってきます。さらには、今後、1試合あたりの平均入場者数が5千人になったら、今まで通りの距離感を5千人との間で保つのに選手の負担がどれくらい増えるのか、といったこともあると思います。とはいえ、やはり距離感は、今のノジマステラ神奈川相模原の良さになってくるのですね?
馬場—そうですね。まずは、ファン・サポーターと選手を隔てる垣根は低くて良いと思います。1試合あたりの平均入場者数が5千人になっても、そのままの距離感を継続できるかどうかは、その場になって考えれば良いと思います。選手には「プロ選手だからこその距離感」を、あまり意識してほしくないと考えています。もう少し(ファン・サポーターに近いところに)降りてきてほしいと思います。
2年目のシーズンから復帰してGM兼監督として指揮を執る菅野(将晃さん)も基本的には同じ考えです。「ピッチ上でのプレー以外も選手評価のポイントになる」という話を菅野とは常々しています。
体制変更で見直してきたクラブ内の距離感
—シーズン途中の2022年4月1日に菅野さんが取締役に就任され、2年目の2022–23シーズンからはGM兼監督に復帰されます。既に取締役としてのお立場で、菅野さんと意見のすり合わせが進んでいたのでしょうか?
馬場—そうですね。菅野は毎週のフロントミーティングに出席しています。クラブを持ち上げるために、フロント、監督、トレーナー等のスタッフ、下部組織……全体で育成型クラブにしていきたいと考えています。そのために、シーズン途中で、それぞれの距離感を近づけるための体制変更をしました。株式会社ノジマの意向も踏まえて「馬場–菅野の体制」になりました。実は、僕はノジマステラ神奈川相模原が立ち上がるときに株式会社ノジマの販促企画グループにいたので、その頃から菅野との付き合いがあります。菅野は柔軟な考えを持っているので、クラブに良い方向づけをできると思っています。クラブの雰囲気は変わってきています。
—2021ー22シーズンの指揮を執った北野誠監督のサッカーは、従来の日本の女子サッカーのあり方を崩して指導していたような印象があります。それがサッカー業界内で高い評価を受けていた面もありますが、いかがですか?
馬場—北野監督は男女の分け隔てなくサッカーに取り組まれ、選手に高い要求をされていたと思います。
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