メディアと女子サッカー 取材するテレビ局の意図まで理解して取材を受けられるようになるとプロとしての評価につながっていきます テレビ局勤務とクラブ広報を経験した小野瞳さん(元ベガルタ仙台レディース)
小野さんの瞳に、今の女子サッカーはどのように映っているのでしょうか。「WEリーグのメディア露出が思うように進まない」という声を聞きます。地元・仙台のテレビ局は、どのように女子サッカーを取り上げてきたのでしょうか。今回は、9年間働いたテレビ局職員、テレビ局と接してきたクラブ広報職員という経験をお持ちの元マイナビベガルタ仙台レディース・小野瞳さんに「メディアと女子サッカー」についてお話しいただきました。
まずは、小野さんの歩みを振り返ってみましょう。小野さんは、東京電力女子サッカー部マリーゼ、ベガルタ仙台レディース、マイナビベガルタ仙台レディース(マイナビ仙台レディース)でプレー。引退後はマイナビ仙台レディースの職員としてチームの立ち上げに参加しています。「地元一筋の女子サッカー選手」として知られていました。
サッカーとの最初の接点は生まれ育った宮城県宮城郡松島町。幼稚園で、気づいたらボールを蹴っていた少女です。その転機は仲の良い男の子に誘われてスポーツ少年団(松島SCJ r)に入ったことで訪れます。男の子の中でプレーしていましたが、中学1年生のときに対戦したチームに珍しく1人の女の子の選手がいました。そのチームの監督は、唯一の女の子選手のお父さんでした。その女の子と共に、そのお父さんが関わる女子サッカークラブ(ビッキー泉・仙台)に参加することで、小野瞳さんは女子サッカーの世界に足を踏み入れることになりました。
東京電力女子サッカー部マリーゼから始まった「地元一筋」
早稲田大学を卒業後に、地元に近い有力チーム・東京電力女子サッカー部マリーゼへ加入。しかし1ヶ月後に活動休止。福島県にも宮城県にも帰ることができず。この先、どうやって生活していけば良いのか不安な中で、サッカーとは離れた東京での「OL生活」の経験を積み重ねていきました。「きっと、いつか、みんなでサッカーをできる日が帰ってくる」と信じて、毎日を過ごしていると、ベガルタ仙台の妹分としてベガルタ仙台レディースが誕生。東京電力女子サッカー部マリーゼの選手を受け入れることが決まります。できれば地元でプレーしたいと考えていた小野さんはベガルタ仙台レディースでプレーすることを決意します。小野さんの脳裏には、かつて宮城県で活動していたYKK AP東北女子サッカー部フラッパーズ(東京電力女子サッカー部マリーゼの前身)の記憶にありました。小野さんはチームと共に故郷の宮城県に帰ってきたのです。
ベガルタ仙台レディースでは、360度から歓声が聞こえる夢のような時間を過ごしました。地元でサッカーをできる喜びを味わい、どうすれば愛されるチームになるだろうと考えながらプレー。2020年シーズン限りで引退しマイナビ仙台レディースのフロントスタッフへ。そして、2021年末に退職し、2022年から関東圏に拠点を移してテクニカルコーチとして新たな活動を始めました。
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フリーのテクニカルコーチという選択
小野—引退後はフリーになって、さまざまな分野のプロフェッショナルの方とお会いすることが増えました。今まで経験できなかった人に出会い、新しい経験をできるようになりました。私なりに、それを理解して身につけようとしています。そして、これまで選手として生きてきた私の身体の使い方や技術(テクニカル)、駆け引き、メンタルを(次の世代の人たちに)伝えていきたいです。これまで、マイナビ仙台レディースでクラブスタッフとして全力を尽くしてきたのですが、今度は、色々な場所でたくさんの方と出逢いながら出向いてトレーニングを実施していきたいと思っています。
パーソナルトレーニングを行うこともありますし、日替わりでスクールに出向くこともあります。元鹿島アントラーズの鈴木隆行さんと奥野僚右さんの設立された『和魂サッカースクール』でも教えています。
クラブから離れてサッカー界が見えるようになった
小野—4月17日に味の素フィールド西が丘で開催されたマイナビ仙台レディースとアルビレックス新潟レディースの試合にはヒントがありました。子どもたちだけではなく、大人もスタンドにたくさんいらしていました。皆さん、サッカーそのものを見るためにいらっしゃるだけではありませんでした。指導者が同伴者に解説しながら試合を見ていたり、お酒を飲みながら楽しむ方がいらしたり、サッカーを楽しむ方もいれば、会場の雰囲気を楽しむ方もいらっしゃいました。今までは、それに気がつきませんでした。
来場者プレゼントのハンドクラップが、本当に拍手のような音でした。子どもたちが気軽に使用できました。ボールパーソンの女子学生が、とても強く興味を持っていました。声が出せないスタジアムで一体感を掴んでもらえる取り組みが良かったですね。クラブの所属から離れたら、お客さんの目線に近づいて、クラブができる範囲の外に目が届くようになりました。見えるものが増えてきたと思います(笑)。
—日常生活の中で市民が女子サッカーと接点を持つきっかけは東京よりも仙台の方が多いと感じませんか?
小野—首都圏で生活すると、テレビで女子サッカーに触れることはとても少ないです。女子サッカーを知る機会が乏しいと感じます。私が働いていた仙台では各局が、朝の情報番組、夕方の情報番組で女子サッカーを取り上げていました。試合や選手インタビューを見る機会が多くあったと思います。地元テレビ局の強さを感じます。
私はtbc東北放送のテレビ制作局で9年間働いていました。朝の情報番組『ウォッチン!みやぎ』のスポーツコーナーのフロアディレクターをしていました。ベガルタ仙台レディースの試合のVTRが流れるのは、主に火曜日です。スタジオでカンペを出し、秒出しをしながら、番組制作に携わってきました。一部は編集も行っていました。自分が活躍した試合の週は、出社してから突然に「生出演できる?」と振られることもありました。試合を振り返って解説したり、次節の抱負を話したりすることが何度もありました。
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