秋春制への移行も含め議論していきたい 一般社団法人日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)専務理事 奥田泰久さん
現在の日本の女子サッカーのピラミッド構造は変則的で、WEリーグとなでしこリーグが繋がっていません。つまり、なでしこリーグ1部で優勝してもWEリーグへの自動昇格はありません。WEリーグには入会審査があり「参入」が必要なレギュレーションになっています。
しかし、一般社団法人日本女子サッカーリーグ(なでしこリーグ)専務理事 奥田泰久さんは、このように言いました。
「WEリーグが輝かなければなでしこリーグの発展は難しいですし、なでしこリーグが輝かなければ、日本の女子サッカー界は輝きません。有機的につながっています。」
プロリーグ元年の2021年を終えようとしています。WEリーグとなでしこリーグは、どのようにつながっているのか、WEリーグの秋春制はどのように影響しているのか等について、奥田泰久さんに聞いてみました。
なでしこリーグ再編元年の2021年シーズン
奥田—2021年はプロリーグとアマチュアリーグが別れた年です。なでしこリーグは1部と2部の2部制で再編成。これまでの32チームが20チームになりました。
コロナが猛威を振るった中でも、なでしこリーグが無事に年間のスケジュールを終えることができたのは誇れることだと思います。選手、審判、関係者、スポンサーをはじめ多くの方にご支援、ご理解をいただいた賜物だと思います。なでしこリーグの底力を実感しました。
プレナスなでしこリーグ2021表彰式は、1年間、頑張っていただいた選手、関係者のためのイベントでした。コロナ禍で招待客全員をお呼びすることはできませんでしたが、表彰対象の選手、監督をお呼びすることができました。直に褒め称えることができたのは、コロナ禍での一歩前進だと思います。
—プレナスなでしこリーグ2021表彰式は、プロリーグとアマチュアリーグが別れてもグレードダウンせずにホテルバンケットで開催。しかも、表彰対象の選手、監督をお呼びすることで昨シーズンよりもランクアップしたことが、とても良かったと思います。
奥田—抗原検査を徹底して行い、実現しました。かける費用はきちんとかけて、不要な費用は大幅に削り、メリハリをつけたリーグ運営をしていこうと考えています。
—今シーズンの競技レベルは、どのように捉えていますか?
奥田—これからが勝負だと思っています。昨シーズンの、なでしこリーグ2部で戦っていたチームの多くが、今シーズンのなでしこリーグ1部で戦っています。リーグ戦スタート時点では、まだ、1部リーグに慣れていない状況だったと思います。そういった中でWEリーグも開幕しました。すると、なでしこリーグのシーズンが始まったばかりなのに選手がWEリーグのチームに移籍してしまうチームもありました。想定外のことが起きてしまい、不安定で厳しいシーズンでした。
一方では、フェアプレー、リスペクトについてはWEリーグをはじめとする他のリーグに劣るところはないと思います。なでしこリーグとして誇れるところです。
現状を踏まえると、なでしこリーグをより強くしていく必要があると思います。なでしこリーグ1部の皆さんが先頭に立ちリーディングチームとして、自覚と覚悟を持って臨んでいただくことが重要です。
今年度のなでしこリーグは「強化担当者ミーティング」を立ち上げました。強化に向けた施策を議論しはじめています。来年度からは、正式に「強化担当者会議」に格上げして進めていきます。具体策の一つとして、1部リーグのスカウティングツールをなでしこリーグが整備して、各チームが分析データを活用できるように整備していきます(検討中)。
—リーグが一括で分析データの共有を行うことで、各チームの底上げを積極的に取り組んでいかれるのですね。
奥田—リーグがやることでスケールメリットを出すことができます。まずトライしていきます。
—各チームの現場の方は嬉しいですね。
奥田—特に、これからWEリーグを目指していかれるチームにとって、このようなツールに、今から慣れていただくことは大きなメリットがあると思います。そのような環境をなでしこリーグとして作っていくことが大切です。
JFA(日本サッカー協会)主催の皇后杯を後押ししていく
奥田—皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会では、なでしこリーグからファイナリストを出したいです。男子と比べて、女子のチームの方が、まだ、アマチュアチームがファイナリストになれる可能性は高いと思います。「現実に近い夢」をなでしこリーグが後押ししていきたいです。
今大会から初めて、なでしこリーグの公式サイトで皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会の情報を掲載しています。年間のチームの強化策の一つとして盛り上げていきます。また、各チームから出た疑問点を、直接、JFA(日本サッカー協会)に問い合わせいただかなくとも、なでしこリーグで相談を受けるようなサポートもしています。些細なことでも、できる限り、勝利に近づいていただけるような支援をしていきます。「皇后杯」という名前の通り、とても大切な大会です。JFAが皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会というプロチームと対戦できる舞台を用意してくれるわけですから、こんなにありがたいことは他にありません。この大会を通じて、チームの強化、チームの価値も上げていけるように活用していただきたいです。
—今シーズンに予想通りにいかなかったことはありますか?私は、観客数の落ち込みが予想外だったのではないかと思いましたが、どうでしょう?
奥田—苦労しました。厳しい数字です。原因はコロナ禍なのか、プロリーグとアマチュアリーグが別れたからなのか、判断は難しいです。来シーズンは、極めて重要な課題として取り組んでいきます。
各チームにお伝えてしているのは、まずは2019年のなでしこリーグ1部の平均観客人数1千340人、なでしこリーグ2部の平均観客人数550人をクリアしていこうということです。そして「満員」というキーワードを伝えていきます。なでしこリーグはチケットが安価なので、満員が大幅な収益拡大に直結するわけではありません。でも、満員になればなんといっても選手が一番嬉しいと思います。満員の環境を整えることが、選手へのご褒美になると思います。選手のためにも観客数にこだわっていきたいです。
お客様を有料で迎え入れる、さまざまな施策に取り組んでいきたいです。「プライスレスな体験」のような、ワクワクドキドキするエンターテイメントな空間、美味しい食べ物……一つ一つの要素の不足を埋めていきたいです。そして、あらゆる年齢層を想定した環境にやさしいスタジアムであるべきです。一朝一夕で全てが変わるわけではありませんが、今、できることはあるはずだと思っています。「こんなことやっているの?」と思ってもらえることがあっても良いと思います。
—メディアの露出状況はいかがですか?
奥田—各クラブで記事が露出すると、それを全クラブに展開し共有しています。他クラブのメディア露出を見て「僕らにもできる」と感じていただく後押しをしています。クラブと地域メディアがしっかりと結びついていると、良い記事が大きく出る場合があります。愛知県では、NGUラブリッジ名古屋の連載記事がありました。ご出産後に復帰された川尻真由選手の記事も掲載されています。
またメディアパートナーのスポニチさんには、開幕前、さらには表彰式等をカラーで特集していただきました。
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