WE Love 女子サッカーマガジン

三菱重工浦和レッズレディースのこと、日テレ・ベレーザとの対戦のこと 長船加奈選手(浦和)の #女子サカ旅

Yogibo  WEリーグが9月に開幕します。2020プレナスなでしこリーグを制覇した三菱重工浦和レッズレディースは優勝候補。その守備の要となるのが長船加奈選手です。

筆者は、東アジア女子サッカー選手権2010のことをよく覚えています。寒い日に味の素スタジアムで開催された大会でした。長船選手は岩渕真奈選手と共に期待の新戦力として選出され活躍しました。4位になった北京五輪の2年後、そして、世界一になるFIFA女子ワールドカップドイツ2011の前年のことでした。長船選手の活躍に、FIFA女子ワールドカップ前の高揚感を感じていました。

しかし、その2011年は、長船選手のサッカー人生を一変させました。東日本大震災です。当時、東京電力女子サッカー部マリーゼに所属(3年目)だった長船選手は、プレーをする場を失いました。

シーズン途中に日テレ・ベレーザ(当時)に移籍。翌年には、東京電力女子サッカー部マリーゼの仲間と一緒にプレーするためにベガルタ仙台レディースへ。そして25歳の新春に浦和レッズレディースに移籍します。浦和レッズレディースがプレナスなでしこリーグを優勝した年のオフ。二連覇への期待を背負った加入でした。

長船選手のキャリアを振り返れば、今では、浦和でのプレーが一番長くなっています。今回は、苦労の末にリーグ優勝の栄光を掴んだ長船選手が、三菱重工浦和レッズレディースのこと、日テレ・ベレーザとの対戦のことを語ってくださいました。

長船加奈選手

大きな怪我から始まった浦和でのプレー

—2020プレナスなでしこリーグは優勝できて良かったですね。

長船浦和レッズレディースに来て良かったと感じる優勝でした。特に苦しかったのは移籍一年目です。チームに馴染もうとしていたときに怪我をしてしまいました。チームに入りきれない感じも続き、怪我の後、チームにフィットしていくのに時間を要しました。チーム状況も良くなくて、この一年はしんどかったです。あれは、FIFA女子ワールドカップカナダ2015の年でした。怪我をして行くチャンスを失ってしまいました。

—前年は、コンスタントになでしこジャパン(日本女子代表)の試合に出場されていました。怪我でつまずいた感じでしたね。

長船そうですね。ちょうど、年齢的に25歳で良い時期でした。怪我で、せっかくのやる気が削がれて、一時期は気持ちが落ちました。

—落ちた気持ちは、どのように持ち直したのですか?

長船「サッカーを出来る喜び」を感じることからです。東日本大震災でサッカーをやりたくても出来ない時期がありました。その経験から「サッカーをできる喜び」を強く感じるようになりました。怪我による4ヶ月くらいの離脱を終え、またサッカーが出来るようになって、サッカーを出来る喜びが一段と大きくなった気がします。練習に復帰する喜びが、とても大きかったです。

(離脱中は)チームメイトのみんなが声をかけてくれたし(復帰を)元気に迎え入れてくれました。チームメイトのみんながいてくれたからリハビリを頑張れました。

長船加奈選手

日テレ・ベレーザの選手との一対一が楽しい

長船ベガルタ仙台レディースでプレーしていたときは、日テレ・ベレーザに勝つことが出来なくて、いつも悔しい思いをしてきました。とても強いチームです。でも、浦和レッズレディースに森栄次さんが来てくれてからは、勝てることが増えて自信になりました。楽しみながら試合を出来るようになりました。今までは「勝ててもしんどい」というか、日テレ・ベレーザ戦は、サッカーを楽しみながらプレーする感覚がなかったのですが、森さんの下では、心に余裕ができて、楽しみながらプレーを出来るようになりました。日テレ・ベレーザの選手は一対一が上手いのですが、怖がることなく、むしろ、そのシチュエーションでプレーすることが楽しくなりました。

森さんのサッカーは、やることがはっきりしているし、チャレンジをさせてくれます。だから、自分が成長出来るし楽しみながら出来ます。「失敗することを恐れずに次に繋げれば良い」と指導されているので、ピッチ上で思い切ってチャレンジできます。

—素人考えだと、攻撃の選手のチャレンジはイメージしやすいのですが、守備の選手のチャレンジはイメージしにくいところがあります。例えば、どのようなところがチャレンジの対象になりますか?

長船一般的には、守備の人数は一枚余るのが普通だと思います。森さんが来てからの浦和レッズレディースは後ろの選手はマンツーマンで守ります。一枚も余りません。そのため、スペースが生まれますしリスクは高くなりますが、パスカットを出来ると攻撃にすぐに繋げられます。前への守備のチャレンジをさせてくれています。

—確かに、長船選手ら、最終ラインの選手がボールを持ったときに、一本目の縦につけるパスの選択肢が多く、見ていて楽しいですね。

長船攻撃の選択肢が広がります。

—対戦相手から見た日テレ・ベレーザは、どのようなチームでしょうか?

長船一人一人が上手いから抑えるべきところがいっぱいあります。個人技もチーム力もあるから、試合運びもうまい。だから、試合で、私たちは、その逆を突いていくプレーをします。上手いからこそフェイントに反応してくれたりする。駆け引きを楽しみながら対戦できます。

—上手い相手だからこそ、お互いが競い合う、騙し合う面白さがありますね。

長船以前は、ただ走らされてボールを回されるサッカーになっていました。こちらから攻撃を仕掛けることが少なく、対戦を楽しむ余裕がなかったです。常に守備に追われていました。でも、最近は対戦を楽しんでいます。

—ここ数試合は三菱重工浦和レッズレディースが大きく幅を広げ、最終ラインから早いタイミングで縦パスが入るようになりました。これまでとは逆で、日テレ・ベレーザの選手が慌ててボールを追いかけるシーンも多々あります。いかがですか?

長船パスを回せている実感があります。自分たちの時間帯のときに点を決められれば、試合を楽に運べます。先制すれば、今まで、日テレ・ベレーザがやってきた試合運びを浦和レッズレディースが出来るようになると思います。

—この2年間で、かなり出来るようになりましたね。

長船ボール回しの基礎的な部分を森さんが教えてくれて、目指ししている試合を出来るようになりました。凄く楽しいです(笑)。

優勝の原動力は「前から仕掛ける守備」

長船難しい試合を勝ちきれたことです。大量得点をしなくても1−0で勝てる勝負強さ身に付きました。他のチームと比べて失点が少なかったです。あれだけリスクがある守備をしながら失点を抑えられたのは、みんなの守備があってのことです。やっぱり前のポジションの選手から守備に行ってくれるので、自分たちのところでは既に相手のコースが限定されていることが多いです。

数的優位を作ってボールを奪うことを目指しています。守備の仕掛けのタイミングは個人の判断になるので、タイミングが遅れると、奪い切れずにピンチを招くこともあります。もっと「思いっきり行くところ」「今はいかないところ」の判断を的確につけられると、楽に守備を出来るようになると思います。その決断は「お互いに声をかけて」というよりも、自分の判断で動かないとワンテンポ遅れてしまいます。練習をやりながら、各自で覚えていくしかないと思います。

新たなやり方にチャレンジした2021WEリーグプレシーズンマッチ

—2021WEリーグプレシーズンマッチを経てYogibo  WEリーグ開幕に向け、各チームが進化しています。ここまでの試合の手応えはいかがですか?

長船正直、プレシーズンマッチでは手応えを感じていないです。課題が残りました。昨シーズンと同じようにやっていてはダメだという感覚です。

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