こういう試合を求めていた!応援してもらえるのが嬉しい 大宮V スタンボー華選手 #女子サカ旅 は金沢
今シーズンから、大宮アルディージャVENTUSでプレーしているスタンボー華選手のインタビューです。スタンボー華選手はFIFA U-20女子ワールドカップ フランス2018優勝メンバー。年代別の世界一に輝きました。当時、所属していたINAC神戸レオネッサでは、出場機会を得ることが難しかったのですが2020年シーズンはコンスタントに出場。身長175cmの恵まれた体格を生かしたプレーを出来る、日本の女子サッカー待望の大型ゴールキーパーです。そのスタンボー華選手が大宮アルディージャVENTUSに移籍しました。何が理由だったのでしょうか。
#女子サカマガ では、2021WEリーグプレシーズンマッチのホームゲーム初戦(大宮V-S広島R)の2日後にインタビュー取材をさせていただきました。今後のWEリーグのスタンダードになるのではないかと話題になった、あの好ゲームの直後に、スタンボー華選手が何を語ったのか、これまで、あまり明かしてこなかった胸の内を、ぜひご覧ください。
そして、後半でご紹介するスタンボー華選手の #女子サカ旅 は金沢の一人旅です。息を呑むような美しい写真もお楽しみください。
サポーターに「のせられる」ホーム初戦
スタンボー—対戦相手がサンフレッチェ広島レジーナ。生まれたばかりのチーム同士の対戦でした。どの試合もそうですが、この試合は負けたくない気持ちが強くて……ホームでの初めての試合ということもあって、みんな気合が入っていました。観客も多く、これまでの女子の試合では感じられない雰囲気があったと思います。
—元チームメイトの島袋奈美恵選手(S広島R)と対戦されて、いかがでしたか?
スタンボー—試合前からとても楽しみでした。試合が始まる前にメンバー表を見せてもらうと「島袋」と名前が入っていて「おお、あいつ、きたなー」みたいな感じでした。序盤に(島袋)奈美恵がドリブルしてきました。同じチームにいると心強い存在なのですが、相手にすると嫌な選手だと改めて感じました。でも、奈美恵と一緒にプレーできたのは楽しかったです。
—ご自身のプレーはいかがでしたか?
自分的には50点くらいです。まず、前半にチームのエンジンがかかりづらかったところ。もっと自分がチームを盛り上げる声掛けをできればと思っていました。もう少しシンプルに、狙いすぎない……同じ時点からチームがスタートしたサンフレッチェ広島レジーナと比べると、まだまだの部分が多かったと思います。自分のプレーも50点だし、チームのプレーもそれほど良くなかったので、素晴らしい環境に対して、申し訳なかったです。キックは、あまり前につけられなかったです。もっと攻撃に直結していくパスは上手くしていきたいです。
—この試合は、かなりの評判になっていますね。
スタンボー—注目していただけるのは嬉しいです。(以前に所属した)INAC神戸レオネッサは女子サッカーだけのチームなので「女子サッカーファン」が多い感じです。大宮アルディージャVENTUSはファン層が違う感じがします。男子の応援をしている人たちならではの雰囲気を凄く感じました。
一つ一つのプレーへの反応が大きい!応援してもらえるのが嬉しい
—私はこの試合を見て「女子を特徴としない女子プロサッカー」ができるのだな、と感じました。これは「大宮アルディージャの試合であって、女子サッカーを特徴としていない試合」なのだと思いました。
スタンボー—外から見ても、そう感じるのですね。中から、とても強く感じていました。例えば、スタンドにはユニフォームを着ている人がとにかく多い。自分たちは、まだ出来たばかりのチームなので、普通ならばユニフォームは販売されていないのですが、皆さん、同じ色の大宮アルディージャのユニフォームを着ている。なおかつ、皆さん、ずっとサッカーを楽しんでこられている人たちなので、プレーへの盛り上がり方に驚きました。自分は、良いプレーをしたつもりがなくても、スタンドから「今のは良かったよ」と伝えてくれる。だから「このプレーで良かったんだ」とモチベーションになる。少しミスがあっても、精一杯の身体を張ったプレーには、しっかりと褒めてくれるし、自分らが自信を持ってプレーできるように背中を押してもらったと思っています。
—いわゆる「のせられる」ということですか?
スタンボー—もう、みなさんのおかげで、凄くのせてもらいました。一つ一つのプレーへの反応が大きかったです。
—スタンボーさんは、もしかすると、このような雰囲気のプロサッカーを求めていたのではありませんか?
スタンボー—だいぶ求めていましたね(笑)。ホントに嬉しいんですよ。プレミアリーグとかを中継で見ていると観客の声が凄いじゃないですか。ああいうところでプレーしたいという思いがあったから、こうして応援してもらえるのが嬉しいです。
移籍の決断は「だいぶ難しかった」
—スタンボーさんが大宮アルディージャVENTUSに移籍されることを聞いたときに、私は驚きました。なかなか出場のチャンスを得られなかったINAC神戸レオネッサで、2020年シーズンにレギュラーポジションを得て「いよいよスタンボーさんの力でタイトル獲得か?」と思われたタイミングでの移籍だったからです。ご自身の決断は難しかったですか?
スタンボー—正直にいうと悩みに悩んで「だいぶ難しかった」です。(所属チームでレギュラーポジションをとった後の)2020年11月、なでしこジャパン(日本女子代表)候補合宿に初めて呼ばれました。そのとき、自分は手も足も出ませんでした。あんなの、久々の感覚でしたね。その経験から自分が学びたいものは何かと考えました。ゴールキーパーというポジションは人を引っ張っていかなければなりません。でも、日頃(所属チームで)の自分は、引っ張っているというよりも引っ張られていると思いました。だから、自分を主張しなければならないなでしこジャパン(日本女子代表)に放り出されたら何もできなかったのです。
そこで個人のレベルアップが絶対的に必要だと思いました。そこから移籍を悩みました。
「いらない自信」を自覚したなでしこジャパン(日本女子代表)のトレーニングキャンプ
—大宮アルディージャVENTUSに移籍してから、なでしこジャパン(日本女子代表)のトレーニングキャンプ(鹿児島:3月17日〜3月31日)と4月8日パラグアイ女子代表戦、11日パナマ女子代表戦(ベンチ入り)に呼ばれました。2020年11月の合宿と違いはありましたか?
スタンボー—以前は、もしかすると慢心していたのかもしれないですね。自分で、もうちょい上手くできると思い込んでいたのです。ある意味「いらない自信」ですよね。ちょっと自分を勘違いしていたのかもしれないです。あのとき「自分は下手くそだった」というショックがあった。
でも、今は楽しんでいます。自分よりも上手い人たち(池田)咲紀子さん、山(下杏也加)さんとプレーできる。見ても楽しい、一緒にプレーしても楽しい、話しても楽しい……なでしこジャパン(日本女子代表)トレーニングキャンプは、自分が成長するための経験を蓄える特別な3週間でした。
—「いらない自信」が仮にあったとして、それを解消するきっかけは何だったのでしょうか?
スタンボー—一度、打ちのめされたのが良かったのかもしれません。
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