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レジェンド山木里恵監督が語る沖縄らしい共闘  全保連琉球デイゴスとヴィクサーレ沖縄FCナビィータ

2021九州女子サッカーリーグ(Qリーグ)1部は2021年4月21日に開幕し、全保連琉球デイゴスが3−0でヴェルスパ大分レディースを下しました。ところが2日後の2021年4月23日に「Qリーグ(1部)沖縄県でのリーグ戦の一部延期について」が発表されてしまいます。沖縄県に「まん延防止等重点措置」が発出されたからです。2021九州女子サッカーリーグ(Qリーグ)部で、全保連琉球デイゴスとヴィクサーレ沖縄FCナビィータのつのチームが戦っています。このチームのホームゲームは開催が延期となりました。

お隣の鹿児島県とも海を挟み、なかなか県外のチームとの交流をしにくい沖縄県のサッカー事情ですが、2月は一つの晴れ舞台。本土のチームが、暖かな沖縄県内でキャンプを行えば、そこでトレーニングマッチを開催して腕試しをすることができます。実際に対戦して、レベルの違いを肌で感じると、良い経験になるとのこと。COVID―19(新型コロナウイルス感染症)の感染が収束に向かえば、再び、多くのチームが沖縄でキャンプをされ、沖縄のチーム、そして沖縄でプレーする選手にとって楽しみな2月になります。しかし、2021年2月に沖縄県内でキャンプを行った女子サッカーチームは、ごく僅かしかありませんでした。

伊賀FCくノ一三重との練習試合 提供:全保連琉球デイゴス

さて、そんな厳しい環境の中でもチャレンジするレジェンドの声を沖縄からお届けします。全保連琉球デイゴスの山木里恵監督です。全保連琉球デイゴスは、沖縄初の全国リーグ参入を目指し2014年に誕生。今年で創設7年目を迎えました。今シーズンは2021九州女子サッカーリーグ(Qリーグ)部制覇とプレナスなでしこリーグ参入を目指しています。

山木里恵監督 提供:全保連琉球デイゴス

山木里恵監督はオリンピック、度のFIFA女子世界選手権(現・FIFA女子ワールドカップ)のメンバー。日本女子代表の出場試合数は50。一時代を築いた、日本女子サッカー史に残る名選手です。また、1999年から2002年には、黄金時代の1.FFCフランクフルトでもプレー。ブンデスリーガの優勝はもちろん、UEFA女子チャンピオンズリーグも制覇。ドイツ年間最優秀女子サッカー選手賞に8年連続で輝いたビルギット・プリンツ選手ともプレーしています。

ただ、ご本人は「そういうときもありましたよね。そのときは、そのとき。プロフィールは過去のことです。」と、過去の経歴の話題はあっさりと受け流してしまいます。そこで今回は、山木里恵監督と沖縄サッカーの現在に絞って、お話をご紹介します。なお、もう一つのチーム、ヴィクサーレ沖縄FCナビィータの監督兼任選手の津波古友美子監督は元チームメイトです。

山木里恵さんと日産F.C.レディースのときのチームメイトだった方に、お話をお聞きすると「まさか、里恵が指導者になると思わなかった」と、皆さん、口を揃えて言われます。なぜ指導者に、そして、沖縄に来られたのでしょうか?

全保連琉球デイゴスのホームタウン・浦添市の街並みと海

新しいことにチャレンジしてみたい

山木総監督に大竹七未さん(日本女子代表でチームメイト)、監督に持田紀与美さん(日産F.C.レディースで同期)のいる女子サッカー部で2年間、コーチをやりました。元々は、全く違う仕事をしていたのですが「指導者をやってみないか?」とお誘いを受け、私はサッカー界に戻りました。その後「そろそろ新しいことにチャレンジしてみたい」と思っていたところ、全保連琉球デイゴスから監督のお話をいただきました。たまたま、その場所が沖縄だったということです。それまで沖縄に住んだことは当然のことなく、私にとって縁もゆかりもない土地なので、新しいチャレンジをするにはちょうど良いと思いました。沖縄って、憧れはありますが、滅多に行く機会がないですよね。当然、誰も知っている人がいないところなので、自分の力がどれくらいあって、何を出来るか、試せる良い機会になりました。

ビーチクリーン活動後にビーチサッカーを楽しむ 提供:全保連琉球デイゴス

沖縄の女子サッカーの魅力と課題を教えてください。沖縄県内の高校の女子チームは多いそうですね。

山木高校年代の登録者数は全国でもトップくらいの人数です。一つの学校のチームに「小さい頃からプレーされていて高校に入学してもプレーを続けられる子」と「高校に入学してからサッカーをはじめられた子」がいます。「クラブ活動として楽しんでプレーする嗜好の子」と「競技性を求める嗜好の子」とのレベルの差が激しかったりします。その結果、例えば九州の大会に出場して1回戦でも大差で負けてしまうことが起こります。それで、中学校を卒業するとレベルの高いプレーを望む子は沖縄県外に進学してしまうという現状があります。ですから、沖縄県内の高校のレベルをアップして、九州の大会で勝てるようにする必要があります。それが沖縄の高校生年代の課題ですね。高校の先生方と、どうにか課題を解決するお手伝いをしたいとお話をしています。

石川岳にて 提供:全保連琉球デイゴス

COVID―19(新型コロナウイルス感染症)の感染者増でスケジュールを見直すQリーグ

2021九州女子サッカーリーグ(Qリーグ)部は8チーム。そのうちヴィクサーレ沖縄FCナビィータとは同じ沖縄県内での対戦ですが、他は飛行機による移動。これは大変ですね。

山木そうですね。どこへいくのも飛行機による移動です。そこは大変なところです。沖縄に来る対戦相手も大変ですが(笑)。それから学生のチームが多いことも大変なところです(チームが高校のチーム)。学生は、大会が多く忙しいので、順延があるとスケジュール変更が大変です。また、COVID―19(新型コロナウイルス感染症)の感染者数が増えると、簡単には選手を県外に出せない事情もあります。

提供:全保連琉球デイゴス 

沖縄の女子サッカーのレベルを高めたい

全保連琉球デイゴスが沖縄県全体の女子サッカーのレベルを牽引していく感じがしますね。

山木そうですね。2021九州女子サッカーリーグ(Qリーグ)部には、全保連琉球デイゴスとヴィクサーレ沖縄FCナビィータが沖縄県から参加しています。2チームで、少しでも沖縄の女子サッカーのレベルを高くできたら良いと思っています。

大人になっても沖縄県内でプレーを続けてくれる選手が多くないのが、もう一つの課題ですね。沖縄県外に出た子は県外ではプレー続けてくれるのですが……。沖縄県内の選手だけでチームを構成できるくらい、沖縄県の女子サッカーのレベルが上がると良いですが、色々なところでプレーしていた選手が混在している方が、それぞれの良さや特徴が出るので、今は、色々なところでプレーしたことがある選手が集まっています。沖縄の風土に合わせてプレーしながら、プレナスなでしこリーグを目指して頑張っています。以前にプレナスなでしこリーグでプレーしていた選手も何名かいます。皆「沖縄に来たら楽しい」と言ってくれています。でも、引っ越す決断をするまでが大変みたいです。

全保連琉球デイゴスのサイトには「全保連琉球デイゴスつの誓い」が掲載されています。

1沖縄県女子チーム初の全国リーグ優勝を目指します
2沖縄から世界を目指すチーム運営をします
3「Sports Comunity」の創出
4「沖縄から世界へはばたく」選手の育成
5サッカーと観光産業の融合
6Play For Peace
7沖縄県民から愛されるチーム

WEリーグのビジョンにも「世界一アクティブな女性コミュニティへ。」という項目があります。共通項があるように感じます。全保連琉球デイゴスは日本国内の女子サッカーチームを先取りしている先進性のあるチームだと感じますがいかがですか?

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