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【女子サカの街】新旧・東京オリンピックが交差する折り返し地点 スフィーダ世田谷FC1−2横浜FCシーガルズ

眩しすぎるくらいの晴天。東京・調布にあるAGFフィールド。溢れてしまったファン・サポーターは、新緑が美しい芝生のバックスタンドにも案内されました。

満員の小さなメインスタンドの右に、大きな白い壁面があります。武蔵野の森総合スポーツプラザです。幾分、反射を感じます。武蔵野の森総合スポーツプラザは、東京オリンピックではバドミントンと近代五種の会場になっています。この地域と東京オリンピックとの関わりは、試合のレポートの後で紹介させていただきます。 

スフィーダ世田谷FCの布陣は機能したのか!?

強風で人工芝が飛びそうになるコンディションで試合は始まりました。スフィーダ世田谷FCは9番の堀江美月選手のワントップ気味に見える343の布陣。ただ、その特徴は、最終ラインと中盤のポジション変化にあるように感じます。ニッパツ横浜FCシーガルズのボールになると16番の奈良美沙季選手は最終ラインに下がります。4バックの布陣に変わるのです。最終ラインの人数に余裕を持たせます。17番の竹島加奈子選手は3トップの左が登録上の位置ですが、こちらもニッパツ横浜FCシーガルズのボールになると中盤の守りを固めます。442に近い守り方となります。

対するニッパツ横浜FCシーガルズの布陣は、今日も4141。中盤の1に入るのはキャプテンで16番の小須田璃菜選手。中盤の人数を増やしてゲームを支配したいためか、要田勇一監督はベンチから、押し上げに厳しい注文をつけます。観客が声を出せないため、静かなスタジアムにベンチの声がよく響きます。

持ち味を出せずこう着状態の前半

タイトな中盤のディフェンスが得意の両チームの対戦ですから、当然、ハードなフィジカルコンタクトを混じえて試合が進みます。特に、ニッパツ横浜FCシーガルズの立ち上がりの圧力は素晴らしくスフィーダ世田谷FCの持ち味を封じ込めます。しかし20分過ぎから、スフィーダ世田谷FCが主導権を奪い返し、プレーエリアをニッパツ横浜FCシーガルズ陣内奥深くに押し込むことが増えてきます。ただ、スフィーダ世田谷FCは、この時間帯に単純なクロスを狙った攻撃に偏りすぎたのではないでしょうか。ヘディングシュートを打たせたい高さのクロースボールが目立ちました。

お互いに決め手を欠いた試合は選手交代で動く

ハーフタイムに、スフィーダ世田谷FCは7番の中山さつき選手を投入。ニッパツ横浜FCシーガルズは13番の内田美鈴選手を投入します。スフィーダ世田谷FCは前半の単純なクロス狙いから一転して、中央を狙う右ドリブルが結果を出します。中山さつき選手は中盤で相手を背負ってボールを受けて素早い反転、中央を斜めにドリブルで切り裂き押し倒されてフリーキックのチャンスを得ます。これを16番の奈良美沙季選手が、左足グラウンダーの直接ゴール(56分)。

この失点で、直後にニッパツ横浜FCシーガルズは2枚替え。2番の高村ちさと選手、そしてエースで9番の髙橋美夕紀選手を投入します。69分の飲水タイムから試合再開後はスフィーダ世田谷FC陣内にボールを押し込んだまま展開し、髙橋美夕紀選手がニアサイドから蹴り込み同点(72分)。アディショナルタイムは3つ目のシュートチャンスを11番の平川杏奈選手が迫力のヘディングシュートで押し込み(90+1分)、遂にニッパツ横浜FCシーガルズが執念の逆転勝利を掴みました。

全体を通して見ると、スフィーダ世田谷FCは単純な横からのクロスに頼るシーンが目立ち、奪って仕掛ける縦に速く強い攻撃を披露できたとは言い難かった印象を受けました。試合後の神川明彦監督のインタビューコメントからは、選手に長いボールを使うように指示を出していたことがうかがえましたが、攻め手のバランスが良くなかったと筆者は思います。

ニッパツ横浜FCシーガルズは苦しみましたが、髙橋美夕紀選手と平川杏奈選手の「決め手」となる二枚看板が得点したこともあり、今シーズン初勝利としては、お見事すぎるくらいの逆転勝ちであったと筆者は思います。

ここに歓声と声援があれば……

後半の飲水タイム以降の攻防は素晴らしく、サッカーの醍醐味を感じさせる試合でした。惜しむべくは、この攻防に呼応する歓声と声援がなかったことです。東京都では、再びCOVID―19(新型コロナウイルス感染症)の感染者が増加し、ファン・サポーターは今も声を出して応援することができません。もし、この試合を従来通りの観戦スタイルで楽しむことができたら、もっと強い印象を残せたに違いありません。選手・関係者の皆さんには、自らのパフォーマンスを最大の効果で披露できないもどかしさがあると思いますが、とにかく、良いプレーと安全な運営を続けていただければと思います。

調布市は新旧・東京オリンピックが交差する折り返し地点

この記事の序盤で紹介させていただいた通り、武蔵野の森総合スポーツプラザは、東京オリンピックではバドミントンと近代五種の会場になっています。調布市では、多くの競技が行われます。なぜなら1964年の東京オリンピックを語る上で、この調布市、そして、AGFフィールドの横を通る道は欠かすことができない大舞台だったからです。

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