WE Love 女子サッカーマガジン

大統領選挙、コロナ禍の米国大学女子サッカーで何が起きたのか!?WEリーグでも起きるのか!? オクラホマ大学10番 黒崎優香さんに聞く(後篇)

米国大統領選挙は、様々な混乱を経て、ジョー・バイデン氏が勝利しました。選挙戦が本格化する前から選挙中まで、米国民を二分するような出来事が多数ありました。その中で、象徴的なムーブメントがBlack Lives Matter(黒人の命も大切だ)」です。ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官によって殺害された事件を皮切りに、全米で様々な抗議行動が展開されました。スポーツ界でも抗議行動は行われました。この後篇ではオクラハマ大学で抗議行動を経験された黒崎優香さんに、お話をうかがいます。黒崎優香さんは20172018シーズンにケンタッキー大学でプレー。トランスファー(Transfer)した20192020シーズンはオクラホマ大学で10番を背負ってプレーしています。将来の目標はNWSLNational Women’s Soccer League)でのプレーと公言されていた黒崎優香さんは、今、何を考えているのか、「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」のアクションはチーム内でどのように決まったのかをお聞きしています。また、インタビュー前には、全く想像していなかったのですが、黒崎優香さんは、WEリーグ・岡島チェアの発言から「米国的な考え」を感じるそうです。

前篇は、こちらからご覧ください。

提供:黒崎優香さん

Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」には、多くの競技がアクションを起こしています。最も早くアクションを起こしたプロスポーツ(公式戦)は米国女子プロサッカーNWSLNational Women’s Soccer Leagueです。6月27日のNWSLチャレンジカップ開幕戦で選手、スタッフが国歌斉唱の際に膝をつきました。COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大防止のため開幕が遅れていた各種プロスポーツよりも先行してNWSLチャレンジカップは開幕したため、多くのスポーツファン、関係者の注目を集めました。日本でも、これに関連して、大坂なおみさんの行動が話題になりました。

黒崎優香さんによると、オクラホマ大学でも、こうしたアクションが実行されました。実行までに、ミーティングが行われチームとしてどうすべきかの話し合いが行われました。おそらく、日本国内のスポーツ現場とは違ったプロセスが踏まれています。近年、社会におけるスポーツの役割が話題となり様々な意見がある中で、既に20世紀から、多くの課題(例えば1970年代のウーマンリブ)と直面してきた米国スポーツ界が、今は、どのように対処しているのか、日本からは見えない、各個人の行動があるのではないか・・・黒崎優香さんの体験から聞いていきます。

—前提として「米国社会が平等ではない」ということは日本にいてもわかりますが、サッカーチームの中やスポーツの中で不平等を感じることはあるのでしょうか?

黒崎–チームでは誰もが平等にチャンスを与えられています・・・でも、社会では「黒人だから」という理由でああいうことが起こっているということは間違えないです。でも、逆に白人の中は「黒人のニュースだけ取り上げられているけれど白人でも普通にそういうことは起きているんだよ」という意見を持っている人もいるのです。だから、この問題は本当に難しくて、正解はないと思います。その人が、どの地域で育った、どのような家系で育ったかでも意見が変わるのです。

筆者が驚いたのは、黒崎優香さんより提供された1枚の写真です。その写真には、これまで、日本で報じられてきた「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」のイメージを覆す強い力がありました。多くの選手は立ったままです。この問題が、どれほど難しいことなのか・・・米国大統領選挙直後だから、少し理解しやすいかもしれません。お話を黒崎優香さんからうかがっています。このアクションは、どのように決まったのか?「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」は人権問題なのか?政治問題なのか?・・・ここでもう一度、この記事のタイトル画像となったこの写真をご覧になって、ひと呼吸おいてから、この先のインタビューをご覧ください。なお、オクラハマ大学のあるオクラハマ州の米国大統領選挙は、トランプ大統領が65%を得票し圧勝しています。

提供:黒崎優香さん

最終的にはヘッドコーチ(監督)に決める権利がある

黒崎–騒動がどんどん大きくなっていきました。チームには黒人選手がいて「自分たちも何かしたい」と発言しました。では、チームというコミュニティとして何ができるのか?という話し合いをしました。でも、チームの中には、それもしたくないという人もいるので難しい問題だったし、自分は、それを経験できたて良かったと思います。

—ミーティングを行なったようですね。永里優季さんもシカゴ・レッドスターズのチーム内でミーティングを行なったと書いていました。こうした問題が生じ、チームの方向を決めるときは、ミーティングが行われるのが普通なのですか?

黒崎–チームには黒人選手がいて「自分たちも何かしたい」と発言しました。「ウォームアップシャツを黒にして意思を示したい」という案がありました。でも、それをやりたくないという人もいます。日本だと、本心は嫌でもチームの輪を乱さないためにやる人がいると思います。でも、米国では、政治的な問題について「他の人の意見を聞くけれど自分の意見を全く変えない人」が多い感じがするのです。そこで、最後は「(賛成・反対)どちらを選んでもリスペクトとしよう」ということをチームで決めました。全員が意見を表明するわけではないです。中には「自分は意見を表明したくない」さらには「ミーティングもしたくない」という人もいるのです。

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