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川澄奈穂美選手の期限付き移籍から考える日本サッカーの秋春制

INAC神戸レオネッサに川澄奈穂美選手が帰ってきました。NWSL(米国女子サッカーリーグ)スカイブルーとは契約期間中で期限付き移籍となります。本日、2020年8月17日に開催された記者会見はインスタライブで中継されました。

川澄奈穂美選手は、なでしこジャパンに初めて選出されたときに背負った番号36でプレーします。「とにかくタイトルを獲る」「米国のリーグで感じたスピード感、パワーをプレーで見せていきたい。」「チームの見せ方、発信の仕方を伝えたい」と抱負を語ってくれました。4年ぶりのプレナスなでしこリーグ復帰です。楽しみです。

日米を期限付き移籍で往復する川澄奈穂美選手の移籍を振り返ってみましょう。

川澄奈穂美選手は2014年2月から8月まで、NWSL(米国女子サッカーリーグ)のシアトル・レインFCへ初の期限付き移籍をしました。INAC神戸レオネッサとの契約期間中でしたから今回の期限付き移籍とは逆ですね。「1シーズンに2つのリーグでプレーできること」が理由として記者会見で語られました。2014年のNWSL(米国女子サッカーリーグ)は8月に全日程を終えていました。期限付き移籍を終えてINAC神戸レオネッサに復帰したのは9月。最終節11月24日まで2ヶ月間、プレナスなでしこリーグでプレーしました。

その後、2016年秋にINAC神戸レオネッサからシアトル・レインFCへ完全移籍。今回と同じようにシアトル・レインFCとの契約期間中にINAC神戸レオネッサへの期限付き移籍をしています。

なぜ、このタイミングで期限付き移籍となったのでしょう。

今シーズンのNWSL(米国女子サッカーリーグ)はCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の影響でシーズンを縮小。6月28日から7月27日までの1ヶ月間の集中開催で幕を閉じました。そのため、8月にINAC神戸レオネッサへ期限付き移籍をすることができたのです。おそらく、4月からはNWSL(米国女子サッカーリーグ)に復帰し米国でプレーすることになります。

WEリーグは9月開幕・5月閉幕の秋春制。

さて、WEリーグは秋春制で開催されることが発表されています。開催期間は9月開幕・5月閉幕となっています。

1シーズン2クラブ掛け持ちは難しくなります。

現在、通常(2019年)のNWSL(米国女子サッカーリーグ)は4月開幕・10月閉幕です。残念ながら、開幕時期とクライマックス時期がWEリーグのスケジュールと重複してしまいます。今後は、川澄奈穂美選手のようなWEリーグとNWSL(米国女子サッカーリーグ)の掛け持ちは難しくなりそうです。

欧州の有力女子リーグとはスケジュールが丸々重複します。

スペイン・リーガ・イベルドローラ 9月開幕・3月閉幕
ドイツ・ブンデスリーガ 9月開幕・6月閉幕
イングランド・スーパーリーグ 9月開幕・5月閉幕
フランス 9月開幕・6月閉幕
スウェーデン・ダームアルスヴェンスカン 5月開幕・11月閉幕
(WEリーグ 9月開幕・5月閉幕)

WEリーグでは川澄奈穂美選手のような1シーズン2クラブ掛け持ちは困難。しかし海外の有力選手を獲得しやすくなります。

スウェーデンリーグは春秋制ですが、多くの有力女子リーグはWEリーグの開催期間と重複する9月開幕・春閉幕の秋春制です。1シーズン2クラブ掛け持ちは困難です。しかし、逆に、シーズンが有力女子リーグと揃ったことで、シーズンオフが同一となり、海外の有力選手を獲得しやすい条件が揃ったといえます。ぜひ、獲得してほしいものです。

ちなみに・・・秋春制は寒冷地に不利なのか?という疑問への回答。

秋春制と聞くと、北陸地方、東北地方、北海道のファンの多くが「無理ではないか」「寒冷地のことを無視してもらっては困る」という声が噴出します。では、実際に、どのくらい寒冷地のクラブに不利に働くスケジュールとなるのでしょうか。考えてみました。

開催期間は6ヶ月間。最大10クラブでリーグ戦が行われます。

WEリーグ初年度の参加クラブ(6~10クラブ)と発表されています。先に書いたように9月開幕・5月閉幕の秋春制。12月、1月、2月の3ヶ月間をウインターブレイク(中断期間)としているので6ヶ月間の開催期間があります。ここでは参加クラブが想定の最大数10クラブだとして考えます。

10クラブでリーグ戦を行ったJリーグ初年・1993年は6ヶ月間でリーグ戦を行いました。

ファーストステージ2回総当たりは5月15日開幕・7月14日閉幕。約2ヶ月間です。これは週に2試合の超過密日程でした。

セカンドステージ2回総当たりは7月24日開幕・12月15日閉幕。約5ヶ月間です。10月15日から10月28日にカタール(ドーハ)でワールドカップ予選の集中開催があり。10月は1ヶ月間リーグ戦を中断しましたから実質約4ヶ月間です。10月28日に有名なドーハの悲劇が起きますが、ショックを引きずったまま11月6日に、Jリーグは再開しています。

WEリーグは秋春制で4回戦総当たりも不可能ではありません。

WEリーグも1993年のJリーグも6ヶ月間ですから、過密日程となりますがWEリーグは4回戦総当たりを検討可能です。寒冷地のクラブに不利に働くとすれば12月、1月、2月のウインターブレイク(中断期間)明け前のトレーニングが降雪などでしにくいという点です。ただし、これは、通常のJリーグの春秋制と同条件なので、寒冷地のクラブが降雪のない地域で合宿をできれば解決するのではないでしょうか。

WEリーグは余裕のある2回戦総当たりを採用か。

また、過密スケジュールにならないように通常のリーグ戦で多く採用される2回戦総当たりを採用の場合はウィンターブレイク(中断期間)を3月まで伸ばすことも可能です。そうすれば寒冷地のクラブに不利に働く点はほぼなくなります。

欧米リーグからの移籍、寒冷地の不公平感の2つの視点からWEリーグの秋春制を考えてみました。いずれも、致命的な問題は見当たらず、円滑に運営できそうですね。

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