西部謙司 フットボール・ラボ

登里享平か、それ以外か。高宇洋か、それ以外か。田中聡か、それ以外か。代えの利かない「個」が浮き彫りにするビルドアップの人材問題

人に頼らないビルドアップのシステムを構築した結果、その優劣を左右するのは「個」という現象が起きている。欧州でもJリーグでも現場の頭を悩ますジレンマについて考察していく。

欧州もJリーグも直面する「形だけではボールをつなげない」問題 

インターナショナルマッチデーなので、世界各地で国際試合が組まれています。日本代表は北朝鮮が開催不能でアウェイ戦がなくなりましたけど。

フランスvsドイツ、イングランドvsブラジルという豪華対戦がありました。

ドイツ代表、いきなり復活していました。フランス代表に2-0勝利。フランスも強かったのですが、ドイツの豹変ぶりが驚き。トニ・クロースの復帰がほぼすべてでしょう。クロースが入ったことで後方のパスが目に見えて落ち着き、同時にフロリアン・ビルツ、ジャマル・ムシアラをハーフスペースで使うメドが立った。そうしたら、これまでとは全然攻撃力が違ってきた。

先制点はキックオフのパスを受けたクロースがビルツへミドルパスをつなぎ、そのままビルツのミドル炸裂。フランスが1回もボールに触らないまま得点。1トップのカイ・ハヴァーツ、2列目のビルツ、ムシアラ、イルカイ・ギュンドアン、そしてクロースが絡んだパスワークがいきなり覚醒しています。

もう1つのビッグクラッシュだったイングランドvsブラジルは、1-0でブラジルが勝利。こちらもロドリゴ、ヴィニシウス、ルーカス・パケタが絡むとブラジルらしい近距離のパスワークが見られ、これに関してはイングランドより上手でしたね。ただし、自陣のビルドアップに関してはさっぱり。

ゴールキックからつなごうとしているのに上手く運べない。パス2、3本でロングボールになってしまうことがほとんどでした。これに関しては欧州っぽい形で運んでいこうという意図のようなのですが、逆にブラジルらしさは希薄で、結果もよくなかった。敵陣に入るとさすがに上手いのですが、こちらは完全に個の力ですからね。わかりあえる優れた個同士の間でのやり取りになると、さすがにブラジルの伝統は生きているわけで。

結局、形だけではつなげない。これはJリーグも同じです。

いわゆるポジショナルプレーはどこもやっている。ということは、対戦相手にも仕組みがわかってしまっている。逆にプレスしたらチャンスじゃん、という流れですね。

仕組みがないよりは、あった方が断然いい。ただ、それだけだとつなげなくなった。欧州の試合をざっと見ましたが、やはりつなげるチームとそうでないところが明確にありました。代表チームなので、クラブほど手の込んだことはできない事情はあるにせよ、逆に同じ形なのに、つなげるチームと怪しいチームがあるわけです。

ビルドアップの能力は「教えられない能力」なのか? 

違いは「人」です。

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