西部謙司 フットボール・ラボ

「ビルドアップ破壊兵器」としての前田大然論。快足FWがサイドではなくセンターで使われる理由【シン・FW進化論】

開幕から得点を量産する攻撃力はもちろん、守備においても相手の脅威になっている前田大然。まさに相手に致命的なダメージを与える武器、リーサル・ウエポンといえる。なぜ彼がスペースのあるサイドではなく中央で使われるのか? そこには戦術のトレンドと理にかなったマリノスの戦法が見てとれる。武器としての前田大然論、みっちりお届けする。

とにかくやばい前田のハイプレス。トレンドに乗るFWの守備 

かれこれ20年くらい前の話、木村和司さんがこんなことを言っていました。

「将来のサッカーはDFが組み立てる。FWは守備ができる選手になるんじゃないかな」

当時からそういう傾向は多少出ていたかもしれませんが、実際にそんなふうになったのは最近です。

中盤はプレッシャーがきついので、組み立てるというより通過するための場所になっていますね。いかに通過するか、あるいはそこをとばしてしまうか。ある程度余裕を持って組み立てられるのはCBとアンカーのところまでです。FWの守備力はリバプールが典型でしょうか。ビルドアップの中心がDFになるなら、そこへいかにプレッシャーをかけるかがポイントになります。

Jリーグも2年前くらいからビルドアップ重視の傾向が出てきて、GKをビルドアップに組み込むチームが増えました。GKを使えば確実に自陣で数的優位を作れますからね。ビルドアップが進化すれば、当然そこへの守備も強化されます。ハイプレスの傾向も昨年すでに出てきていました。そこで、いかにハイプレスをするかも大事ですが、「誰が」やるかによっても違いは出てくるわけです。

横浜F・マリノスの前田大然はいわばハイプレスのスペシャリストです。第2節から4試合連続得点、第5節時点では6ゴールでリーグのリーディングゲッターとなっています。

CF起用で威力倍増のハイプレス。なぜ相手の戦術を破壊できるのか? 

前田の特徴は何といってもスピード。そしてボール奪取力です。

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