サッカー番長 杉山茂樹が行く

レベルダウン著しいJリーグとレベルアップ著しい日本代表。アンバランスに支配される日本の行く末

写真:Shigeki SUGIYAMA
 J1リーグ。2位の横浜F・マリノスがアルビレックス新潟に引き分け、首位を行くヴィッセル神戸が名古屋グランパスに勝利したため、優勝の栄冠は最終節を待たずに神戸の頭上に輝いた。
 
 勝ち点差2で迎えた試合だった。両者が競いあうスリリングな展開になっていたことは確かである。しかし世の中の反応はいまひとつ鈍かった。その反応の強弱を何で判断するか。テレビ、新聞からネットに移行したいま、正確に捉えることは難しくなっているが、少なくとも阪神とオリックスが日本シリーズを争ったプロ野球には大きく劣っていた気がする。
 
 横浜FMが、優勝した昨季を上回るサッカーをしながら神戸に優勝を浚われたわけではない。神戸に敗れたと言うより、昨季の自分たちに敗れた恰好だ。メンバー的にもサッカー的にも後退したことで、よく言えば手堅い、悪く言えば古典的なサッカーを展開する神戸に遅れを取った。
 
 右肩上がりが終焉を迎え、右肩下がりが始まったシーズン。Jリーグの2023年シーズンを一言でいえばそうなる。Jリーグがレベルダウンした原因を探すことは簡単だ。現在100人に迫る日本人選手が欧州でプレーしているからだ。その数が増えることは、Jリーグ側にとっては人材の流出に当たる。
 
 選手個々のレベルが上がったことでJリーグのレベルは下がったーーとは皮肉な結果である。これはJリーグの市場価値が下がったことを意味する。折からの円安がそれを後押しする。Jリーグのチームには外国人選手の値段が滅茶苦茶高く感じられるのだ。外国人枠を満たしているクラブはけっして多くない。外国人選手の質も高いとは言えない。ベンチを温める選手は少なくない。
 
 この欄でも以前に紹介したことがあるエピソードだが、ロベルト・カルロスに1996-97シーズン、インテルからレアル・マドリードに移籍してきたタイミングでJリーグという選択肢はなかったのかと訪ねれば「ブラジル人選手の間では4、5番目のリーグだ」と述べていた。
 

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