サッカー番長 杉山茂樹が行く

常識を疑え。3バック=5バックは本当に「守備固め」に相応しい作戦か。成功体験しかない森保Jを心配する

写真:Shigeki SUGIYAMA
「4-3-3、4-2-3-1、3バックを相手や状況によって賢く使い分けていく」とは、最近の会見で森保一監督が述べたコメントだ。だがこの3つの布陣の関係は並列ではない。4-3-3と4-2-3-1は親戚関係にあるが、「3バック」はそうとは言いがたい。
 
 3バックも4バック同様、いくつか種類がある。攻撃的なものもあれば守備的なものもある。それを森保監督は十把一絡げに3バックと表現する。
 
 これは森保監督に限った話ではない。解説者、評論家も同様だ。時間がない場合は仕方ないが、そうではない場合、説明する時間がたっぷりあるでも「3バック」と表現する。
 
 森保監督が採用する3バックは主に3-4-2-1だ。3バックと言うより、5バックと言った方が適切な守備的な布陣である。
 
 数ある4バックの中にあって4-3-3と4-2-3-1が、攻撃的に位置するのとは対照的である。だが3バックは、少なくとも日本では画一視されている。攻撃的な3バックを拝む機会は少ない。現在のJリーグでは大木武史監督率いるロアッソ熊本ぐらいだろうか。
 
 3バックは事実上5バックで、守備的なものとの固定観念に支配されている。その結果、4-3-3あるいは4-2-3-1から3バックに転じた時、大きなギャップとなって現れる。9月に行われたドイツ戦がそうだった。試合展開はガラリ一変した。攻めるドイツ、守る日本にハッキリと分かれた。「守備固め」に入ったことが一目瞭然となった。
 
 森保監督はこの変更について「賢く、したたかに戦うため」と述べている。しかし、試合展開はこれで一転、守りっぱなしになるわけだ。安心感が得られるわけではない。野球に用いられる守備固めとは似て非なるものになる。野球のコンセプトでサッカーを捉えれば、安心で安全な采配に見えるが、サッカー的には博打、賭けを連想させるよく言えば、度胸のよい采配だ。
 
 欧州のサッカー史を辿れば、むしろ心配にさせられる。
 

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