サッカー番長 杉山茂樹が行く

J1リーグ第2節で目撃した「サッカーの教科書」に載せたくなる2ゴール

写真:Shigeki SUGIYAMA

 土曜日(3月6日)に行われたFC東京対セレッソ大阪戦。FC東京が3-2で逆転勝利を収めた一戦だが、こちらの脳裏に焼き付いているシーンはC大阪の2点目だ。
 
 1-1で迎えた後半13分。原川力が決めた右足シュートもさることながら、それに至るプロセスが優れていた。サッカーの教科書に載せたくなる理想的なゴールだった。
 
 C大阪は瀬古歩夢がセカンドボールを拾うと、奧埜博亮、松田陸、清武弘嗣のパス交換から、ほぼタッチライン上で開いて構える右のサイドハーフ、坂元達裕へとボールを繋いだ。
 
 そこで坂元はボールをキープする。小刻みなステップでジワジワと内側に入りながら時間を稼いだ。その間に、右のタッチライン際に右SBの松田陸が進出。坂元、松田陸、そして2トップの位置から下がってきた大久保嘉人と3人の間でパス交換を行った。相手のゴールラインまで20mという地点。坂元がボールを受けてから10秒あまり経っていた。FC東京はプレッシャーを掛けられずにいた。
 
 状況は3対3だった。FC東京は左SB小川諒也、インサイドハーフの安部柊斗、CBのジョアン・オマリの3人が対応に出ていた。しかし、その場所はタッチライン際だ。坂元、松田陸の両サイドアタッカーが、相手から受けるプレッシャーの絶対量は、四方からプレッシャーを受けやすい真ん中の半分になる。真ん中が360度の世界であるのに対し、サイドは180度の世界だ。ディフェンダーは片側からしか迫ってこない。ボールを保持する側に「地の利」がある。サイドとはそうした特性を備えた場所になる。
 
 その緩い3対3の間隙を大久保が突いた。縦に走るとその鼻先に、タッチライン際に開いていた坂元から縦パスが送られた。大久保はゴールライン付近からそのまま、グラウンダーのボールを鋭角に折り返す。中央で清武が打つと見せかけてスルーしたその直後だった。ゴール正面から放った原川のミドルシュートが、目にも鮮やかなビューティフルゴールとして飛び込んできたのは。
 
 だが、展開の鮮やかさはそれ以上だった。原川はその瞬間、視界に、相手ディフェンダー、相手GK、そして折り返しのボールが、くっきりと描かれていたはずだ。シュートを狙いやすい状況にあった。こう言っては何だが、その難易度は見た目以上に低かったと思われる。

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