あまり話題にならなかったけど横浜FMvsFC東京で書いておきたいこと
Jリーグで厳しい制限付きながら観客を入れて試合をするようになり、最初に大きな話題になったのは浦和レッズの観客が口笛やヤジを飛ばしたということでした。そういう「悪い」とされる話はすぐに広がるものの、「美しい」話はあまり書き留められないような気がします。
私にとってこの試合のハイライトに欠かせないのは16分、田川亨介がディフェンスラインの裏に飛び出した場面でした。それまで横浜FMが開始早々の4分、あっさり先制点を挙げFC東京を圧倒していました。少し動きがぎこちなかった田川でしたが、このシーンでやっと自分の推進力を発揮し、ぐいっと前に出るとドリブルで突き進みます。そしてペナルティエリア内で倒されPKを獲得したのですが、田川は肩を負傷し、そのまま担架に乗せられて退場してしまいました。
実は私も競り合いから倒れて左肩の肩鎖関節脱臼していて、多少なりとも肩の負傷の痛みは分かるつもりです。余談ですが、病院に行ったら、放置するか、あるいは人工靱帯を入れて何年かおきにメンテナンスすると言われました。数年おきのメンテナンスもしんどいと思い、「肩の靱帯が3本とも切れていると何か不具合がありますか?」と尋ねたところ、「僕の患者さんでは『冷蔵庫が1人で運べなくなった』と言ってた人がいたよ」ということだったので、たぶん、残りの人生でも1人で冷蔵庫を運ぶことはそうそうないだろうと思い、放置してあります。
閑話休題。
田川が担架で運ばれるとき、日産スタジアムの観客から大きな拍手が寄せられました。原則的にはアウェイ席がないのでホーム横浜FMのファンだけが来ているはずです。しかも拍手の中心地は横浜FMのゴール裏でした。
自分たちのチームがPKを取られ、そのPKを奪った憎いはずの選手が退場するとき称賛の拍手で送ってあげる。これは観客が入っていなければなかった風景です。横浜FMのファンは、「サッカーファン」としての素晴らしさを体現してくれたと思います。口笛やヤジを飛ばした人よりも、この日拍手を贈った人のほうが多いのは間違いありません。だったらやっぱり、制限が付いたとしても僕は観客を入れる試合のほうがいいと思います。
(残り 98文字/全文: 1014文字)
この記事の続きは会員限定です。入会をご検討の方は「ウェブマガジンのご案内」をクリックして内容をご確認ください。
ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。
会員の方は、ログインしてください。
外部サービスアカウントでログイン
Twitterログイン機能終了のお知らせ
Facebookログイン機能終了のお知らせ