WE Love 女子サッカーマガジン

髙田春奈チェア就任から一年の集大成 ここまで変わったWEリーグカップ決勝 マスコット、イベント、スタグル 女子サッカーの今を感じる

「コンセプトは『WEリーグを楽しめる一日にしよう』でした。もちろん試合のレベルの高さもですが、多様性であったり、アットホームさであったり、そういったものをいろんなところに散りばめて実現できた一日だったと思います。」

WEリーグチェアの髙田春奈さんは、2023年10月15日に等々力陸上競技場で開催された2023-24WEリーグカップ決勝の直後に一日のプログラムの考え方を説明しました。おそらく、多くのファン・サポーターは週末を満喫できたことでしょう。全力を尽くして両チームが戦った120分間+P K戦だけではなく、この日、行われたさまざまなイベントや一日の楽しい雰囲気が、ファン・サポーターから盛んにS N Sで発信されていました。

それは一年前とは明らかに違う景色でした。WEリーグが目指す方向を定め進化したことは明らかです。今回のWE Love 女子サッカーマガジンは「髙田春奈さん チェア就任から一年の集大成」の視点から、髙田さんのコメントを交えて2023-24WEリーグカップ決勝を振り返ります。

2023-24WEリーグカップ決勝に駆けつけたマスコットたちの一部 写真提供:WEリーグ TOP画像も

今から一年前、2022年9月29日に髙田春奈さんが二代目のWEリーグチェアに就任しスポーツ界を驚かせました。そして、その二日後に味の素フィールド西が丘で行われた2022-23WEリーグカップ決勝で、髙田さんはチェアとして初めてファン・サポーターの前に姿を見せました。

あの頃、コロナ禍の影響もあって先行きが見えないと囁かれていたWEリーグには、今、幾分、明るい光が差し込んでいます。2022―23と2023-24WEリーグカップ決勝、一年を経て開催された二つの決勝に、どれほどの違いがあったのかを具体的な数字等で振り返ってみましょう。

等々力補助競技場で行われたサッカークリニックに参加した選手たち 写真提供:WEリーグ

数字で見ると二つの決勝に明らかな違い

前回大会とは異なり、2023-24WEリーグカップ決勝は首都圏から遠く離れたホームタウンのチームによる決勝となりました。しかし、入場者数は約2倍。前回大会は3千546人だった入場者数が6千261人になりました。アルビレックス新潟レディースのファン・サポーターだけで約1千500人が来場したと推計されています。サンフレッチェ広島レジーナのファン・サポーターも1千人程度の来場とみられます。

グループステージを合わせた大会通算の平均入場者数は1千436人です。前回大会の平均入場者数は1千6人ですから約40%増となっています。この数字はカップ戦ながら2022−23 Yogibo WEリーグの平均入場者数1千401人を上回りました。

注目度についても数字で比較してみましょう。グーグルにおけるキーワード「WEリーグ」の人気度は過去の注目週を上回りました。2023−24 WEリーグカップ決勝を開催した週を100とすると2022−23 Yogibo WEリーグの優勝が決まった週は80、2022−23 WEリーグカップ決勝を開催した週は94となります。ネット上でも注目が高まっていることがわかります。(グーグルトレンド調べ)

そして、優勝賞金は前回大会の200万円の5倍に膨らみ1千万円となりました。2位の賞金は500万円です。

優勝したサンフレッチェ広島レジーナ 写真提供:WEリーグ

12時には盛り上がり始めていた場外イベント広場

キックオフは16時ですが、午前中から等々力陸上競技場の周辺にファン・サポーターが集まり始め、12時には盛り上がりを見せ始めていました。午前中からさまざまなイベントが用意されていたからです。髙田さんは、狙いをこのように話します。

「初めて来られる、女子サッカーを見てみたいと思ったけれど機会がなかった方にたくさん来ていただけるような場所にしたいと考え、いろいろなイベント等も用意しました。」

髙田さんは就任以来「素晴らしい選手を『輝く場所』に連れていきたい」と話していました。2022年には、WE Love 女子サッカーマガジンの取材でこのように答えています。

「お客様を増やすことは重要ですが、単純に増やすことだけでは『輝く場所』が生まれることはありません。V・ファーレン長崎の代表取締役社長をしていたときに、いつも『スタジアムは愛に溢れている空間』だと思っていました。スタジアムの見えないオーラというか空気感が特殊なので、そういう雰囲気に囲まれる世界をWEリーグでも作っていきたいです。」

髙田さんの言葉にあった「愛に溢れている空間」がスタジアムの内外に生まれつつありました。その芽はスタンドから発せられる応援の雰囲気だけで息吹いたのではありません。スタジアム外で中心になったのはメインスタンドと釣り池の間にある場外イベント広場です。スタジアムの玄関口に面したスペースでイベントの賑わいを創れるのは、等々力陸上競技場の特徴です。

8チームが創意工夫を凝らしたテントブースを出展しました。その周辺には8台のキッチンカーが並びバラエティに富んだ食を提供しました。2022-23WEリーグカップ決勝では、スペースの都合もあり、わずか2台のキッチンカーでしたから大きくパワーアップしました。

賑やかだった場外イベント広場 写真提供:WEリーグ

ノジマステラ神奈川相模原は3人の選手がブースに立ちました。ファン・サポーターと一緒にミニフットゴルフを楽しみ、好プレーには歓声が上がりました。ちふれASエルフェン埼玉のブースには第19回アジア競技大会で日本女子代表のゴールを守り続けた浅野菜摘選手が登場。ファン・サポーターとの記念撮影に応じていました。サンフレッチェ広島レジーナのブースはグッズ販売で長蛇の列となりました。

WEリーグもブースを出展しています。リリースしたばかりの公式アプリの案内、そして、決勝記念グッズとWEリーグ公式マスコットグッズを販売しました。特に人気が高かったのは決勝記念グッズ。両チームのエンブレムと優勝カップが描かれたミニタオルは早々に完売してしまいました。

人だかりとなった「WEリーグ公式マスコットおひろめ&命名セレモニー」

場外イベント広場の目玉は「WEリーグ公式マスコットおひろめ&命名セレモニー」です。キックオフの3時間前にも関わらず、多くのファン・サポーターが集まりました。初登場のWEリーグ公式マスコットの名称がウィーナと発表されました。命名の由来はWEリーグの「ウィ」に加えて勝者を意味する「ウィナー」。WEリーグの「ウィ」となでしこの「な」の組み合わせでもあります。そして、実は「誰もネコだと発表していない」という衝撃の事実も発表されました。司会進行は安田美香さん。アシスタントを「WEリーグ×パーソル キッズお仕事体験」で選ばれた小学生が担当しました。

初めて姿を現したウィーナ(中央) 写真提供:WEリーグ

白を基調としたウィーナのデザインですが、ボディと耳は、優しいハーモニーカラーが彩色されました。WEリーグの提示する多様性はレインボーカラーに象徴される範囲だけではなく、幅が広くゆるやかです。ハーモニーカラーのWEリーグ公式マスコットは、より多様な価値観の調和を伝えるWEリーグの象徴となるでしょう。実は、このハーモニーカラーはマスコットだけに採用された彩色ではありません。10月末に渋谷に開業すると発表されたWEリーグのコミュニティ拠点も同様のカラーリングで彩られます。

想像以上に「見えないハードル」を超えることができるか

この日はWEリーグのみならず各界のマスコットが多数集まりました。髙田さんはX(旧ツイッター)のプロフィールに「ヴィヴィくんの親友」と記載するほど、マスコットには強い思い入れと期待を抱いています。WEリーグ公式マスコットの誕生についてコメントしました。

「生まれるところから一緒に見てきました。ここからまた、さらに育っていくと思います。私もクラブ(V・ファーレン長崎)にいたときに、マスコットはクラブの理念や性格を体現するものだと思っていました。これから、ウィーナちゃんがWEリーグの目指す多様性や女子サッカーの面白さを体現していき、いろいろな人たちに伝えていくくれる存在になってくれることを期待しています。」

髙田さんは、約1年前に「WEリーグを見ていただく前に想像以上に『見えないハードル』みたいなものがあると感じた」と話していました。その後、WEリーグはコミュニケーションの改善を図り、ファミリー層を中心に親しみやすいブランド形成に努力してきました。この日は、従来の女子サッカーファン・サポーターだけではなく、多くのマスコットマニアも来場しました。WEリーグ公式マスコットの登場で「見えないハードル」を下げるスピードが早まるかもしれません。

「渋谷」との連携も

ステージでは「仮装王者は誰だ!WEリーグ初代ハロウィン王決定戦」も開催されました。WEリーグが一般社団法人渋谷未来デザインと立教大学とともに進める、産学連携事業で、渋谷区がハロウィーン期間を「安全安心な街にするため」の施策の一環として企画されました。審査員として選手が参加しています。企業や地域コミュニティとのコラボレーションで開催されたイベントが多いのも2023-24WEリーグカップ決勝ならではといえるでしょう。

「仮装王者は誰だ!WEリーグ初代ハロウィン王決定戦」優秀者6名はフラッグベアラーに 写真提供:WEリーグ

全チームの選手が参加することで、2023-24WEリーグカップ決勝はWEリーグに参加する全チームによる祝祭の趣が強くなり、決勝に進出できなかったチームのファン・サポーターからの関心も高まりました。

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