WE Love 女子サッカーマガジン

WEリーグのスタジアムにプロリーグらしい雰囲気は生まれたのか 選手とサポーターの証言から考える

COVID―19(新型コロナウイルス感染症)の感染拡大に伴う緊急事態宣言の影響等で、WEリーグの観客動員は、目標には及ばない数字となっています。第節は、INAC神戸レオネッサのホームゲームの会場が収容人数3千632人のJ―GREEN堺S1メインフィールドとなった上に収容人数の50%上限の影響もあり、全5試合の観客数が2千人を割り込んでしまいました。第5節までの平均観客数は1千916人です。

しかしながら、いずれのスタジアムも、試合の流れに連動した手拍子が沸き起こり、スタンドの盛り上がりという点では、近年の女子サッカーの試合会場とは違いが表れています。幅広い世代の笑顔が溢れました。少なくとも、スタンドにプロリーグらしい雰囲気が生まれたことは、WEリーグの未来に向けた好材料となっています。また、試合後や、試合前の選手取材で、ファン・サポーターに触れる選手が多いことから、拍手の音がプレーする選手を後押しする力になっていることが、うかがえます。これからピッチ上のプレーに良い影響が現れてくるに違いありません。 

拍手、手拍子に、選手から喜びのコメントが相次ぐ

仙台、浦和でアウェイの、そして、相模原ではホームの、合計3つの開幕戦を経験した松原有沙選手(N相模原)は、第節でホーム開幕戦を終えて「今までよりもたくさんの方に来て頂いている実感があります。本当にありがたいことです。」と話しています。ノジマステラ神奈川相模原は第5節のホームゲームで嬉しい初勝利を記録しました。

大澤春花選手(千葉L)はジェフユナイテッド市原・千葉レディースのアカデミー出身。中学生時代がから、ずっと黄色いユニフォームに袖を通してプレーしています。

「拍手の音が(スタジアム)全体どこからも聞こえるのは(これまでのとの)大きな違いでした。今まで、3千600人近くの観客の中でプレーしたことがなかったので鳥肌が立ちました。」と、メインスタンドだけではなくバックスタンド、ゴール裏スタンドからも拍手に包まれることを喜びと感じています。

 高橋美夕紀選手(大宮V)は、WEリーグ開幕直前の7月11日に大宮アルディージャVENTUSに加入した選手です。7月10日までは、2021プレナスなでしこリーグ1部に出場していました。2021WEリーグプレシーズンマッチを経験することなく、いきなり出場した大宮アルディージャVENTUSのホーム開幕戦には3千419人のファン・サポーターが集まりました。高橋美夕紀選手は試合後に、このようなコメントをしています。

「スタンドの手拍子や拍手が背中を押してくれました。一緒に戦ってくれている感じがしました。勝利をプレセントできず悔しいですが、心強いサポータの方々がたくさんいて凄くうれしかったです。」

大宮アルディージャVENTUSも第5節のホームゲームで嬉しい初勝利を記録しています。4−1に大勝に、大きな手拍子が自然発生しました。

コロナ禍のスタジアムでも、ファン・サポーターの熱は選手に届いています。

では、拍手、手拍子を送る側のファン・サポーターは、WEリーグのどこに魅力を感じ、どのように応援しようと考えているのでしょうか。AC長野パルセイロ・レディースとノジマステラ神奈川相模原のサポーターにお話をお聞きしました。

※事前にアポイントをとってスタジアムの敷地外でお話をうかがっています。

全力プレーに魅了される女性サポーター

AC長野パルセイロ・レディースのホーム開幕戦は第節に行われました。日テレ・東京ヴェルディベレーザと0−0の引き分け。名門チームをあと一歩まで追い込むシーンもあり、長野Uスタジアムは、手拍子、拍手で盛り上がりました。

WEリーグの開幕で女子サッカーは新時代に入ったといえます。愛するクラブを応援するサポーターは、今、何に惹かれているのでしょう。長く応援する3名の女性サポーターに話をうかがいました。

もっちさんは、2019年までトップチームも応援しスタジアムに足を運んでいましたが、2020年からは、レディースだけを応援しています。全員攻撃全員守備、運動量が豊富なところがAC長野パルセイロ・レディースの魅力だそうです。

「レディースの方がスピードは劣るけれど、技術とかメンタルが良く伝わる。私は一目惚れのように引き込まれています。勝っても負けても、どれだけ良い試合をしたのか試合内容を重視したいです。それがトップチームと違うところです。」

Kyaorinさんも「勝ち負けよりも試合が終わった後の充実感が大事」だと言います。

「私の住まいは、長野県でも松本市よりも南にあり、長野市に来るのにクルマで高速道路を走って2時間くらいかかります。それまでは、長野市に来ることは数年に一回くらいだったのですが、AC長野パルセイロ・レディースのホームゲームのために頻繁に通うようになりました。自宅は松本山雅の応援をする人が多い地域なので『なんで松本を越えて長野に応援に行くの?』『なんで女子を応援するの?』と松本山雅サポーターに言われます。」

それでも、最後まで諦めることなくプレーするAC長野パルセイロ・レディースの応援に充実感があるので、Kyaorinさんの週末は、長野Uスタジアムに通うことが当たり前になりました。

「サッカーをプレーしたことがない女性でも、女子の試合は理解しやすく、解らないことがあれば周りの人に質問しやすい。サッカーの知識がない人にこそ、女子サッカーの試合観戦をお勧めしたい。」とKyaorinさんは言います。

ファン・サポーターからの要望に応え、WEリーグのスタートに合わせて、AC長野パルセイロ・レディースのツイッターアカウントはトップチームと分けられ独立しました。そのため、AC長野パルセイロ・レディースに関する情報量が格段に増えました。練習場からの情報も頻繁に更新されるようになりました。

えみゅーさんは、同じ女性として「やりたいことをやりぬいている選手は凄い」と思っています。頑張っている選手の姿を写真や動画で見るのが楽しみです。

「泊選手のユーチューブ動画をよく見ます。いつも楽しみで、アップされると『いいね』の一番乗りを狙うときもあります。」

心が通う充実感、週末の自分の居場所……そして、選手の等身大の姿が、女性ファン・サポーターの共感を生み出しているのかもしれません。その輪は広がる兆しを見せています。

長野Uスタジアム 

変化に対応する男性コアサポーター

WEリーグのスタンドにも、Jリーグと同じようにコアサポーターと呼ばれるサポーターたちがいます。太鼓を叩き、手拍子し、熱狂的に応援する集団です。多くのチームでは、主に男性サポーターによるコアサポーター・グループが形成されています。

プレナスなでしこリーグではバックスタンドに陣取っていた、ノジマステラ神奈川相模原のコアサポーターは、WEリーグの開幕を機にゴール裏の芝生席に定位置を変えました。変わったのは位置だけではありません。応援のリズムや手法にも工夫が見え、WEリーグとウイズ・コロナの観戦スタイルに対応しているように感じます。相模原ギオンスタジアムで開催されたホーム開幕戦は後半に入ると、スタジアム全体が手拍子に包まれました。WEリーグの開幕以前と何が変わったのでしょうか。聞いてみました。

相模大野駅前

MOKUさん「今までのようなおじさんの応援ではなく若い人たちが参加してみたいと思える応援にしたいです。世間の人が注目してくれるきっかけを作れたので、ファン・サポーター、リーグ、チームが一丸となって発信できればと思っています。」

オードリーさん「今までは、オヤジ色満載すぎました。今シーズンからサンデー・ロペス選手が加入しました。今まで通りならば、チャントは『ビューティフル・サンデー(1976年の大ヒット曲)』が良いかな、なんて思いますが、そういうことはやめて、選手と近い年代のファン・サポーターに合わせた応援にしていきたいです。」

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