縦割りのファン層を解消したい 女性スポーツリーグの独占的配信契約を締結したSPOZONEとは何か?
top写真提供SPOZONE
DAZNに加入されている方で、サッカー以外のスポーツの中継をご覧になった方はいらっしゃるでしょうか、筆者は、総合格闘技、ラグビー、ダーツ、馬車競技等の中継を見たことがあります。特に、今までは見たことがなかった馬車競技の面白さには驚かされました。DAZNに加入しなければ、見る機会は永遠になかったであろう競技です。
日本にはスポーツを中継する、いくつかの動画配信プラットフォームがあります。その中で、大リーグ(MLB)をライブ配信するSPOZONEがWoman Athletes Project(女性アスリートプロジェクト=WAP)参加リーグの独占的配信契約を締結しました。WAPは、女性スポーツリーグ同士が連携し、女性スポーツの社会的価値向上を目指した取り組みを推進しています。単一リーグでは達成が難しい女性スポーツの価値向上を、アライアンスを通じて実現することを目的にしています。
8つのリーグが参加するWAP
WAPに参加しているのは「プレナスナスなでしこリーグ(サッカー)」「WEリーグ(サッカー)」「Vリーグ(バレーボール)」「Wリーグ(バスケットボール)」「日本ハンドボールリーグ」「ホッケー日本リーグ」「日本女子ソフトボールリーグ」「女子Fリーグ(フットサル)」の8つのリーグです。2021年5月15日以降、WAP参加リーグのうち「プレナスなでしこリーグ」「ソフトボールリーグ」「ホッケーリーグ」「フットサルリーグ」の配信がスタート。順次、配信対象を拡大していきます。
今回は、SPOZONEを運営する株式会社 LIVE SPORTS MEDIAのコマーシャルオフィサー・梅澤孝さんに、お話をうかがいます。梅澤孝さんから女子サッカーファンへのメッセージは「登録は無料なので気軽にSPOZONEを見に来てほしい」でした。お話の隅々から「スポーツファン」を育成したいという強い思いが伝わってきました。梅澤孝さんは、日本には「スポーツファン」が少ないと現状を表現します。どのような意味なのでしょうか。
—SPOZONEはSNSやサイトのニュースページでも発信を活発にされていますね。
梅澤—まだまだです。今年は東京2020の関係で国内スポーツの中断期間があります。9月から再開される競技に向けて、コミュニケーションを改良していこうとしています。
男女ともに夢を見る
—WEリーグが始まり、2021年は日本の女性スポーツ新時代到来の年です。今までのSPOZONEのコンテンツは、MLB他、男性寄りのものが多かったのです。WAPの女性スポーツリーグの中継は新たな路線だと思いますが、いかがでしょうか?
梅澤—たまたま、我々の日本でのサービスのスタートがMLBであったというだけです。スポーツは男性のためのものではありません。男女ともに夢を見るとか、努力が実ることによる喜びや感動……男性が競技をしても女性が競技をしても、それは一緒です。
無料で視聴していただく配信
—SPOZONEの特徴を教えてください。
梅澤—ビジネスモデルとしては一般的有料課金サービスに近いです。大きく違うのは切り口です。既に巨大なファン数がいるスポーツの権利を獲得して配信し、それをユーザからの課金でお金に変えていくのが課金ビジネスです。
SPOZONEの配信コンテンツには巨大なファン数を有しているスポーツの有料配信(主にMLB)もあるのですが、無料でユーザに視聴していただくスポーツもあります。無料で視聴していただく配信については、企業に広告出稿などのサポートをしていただきますが、WAPの女性スポーツリーグの配信は、こちらのモデルを想定してます。
スポーツにはDOスポーツとENJOYスポーツがあります。我々はWAPとの取り組みで、世間離れした超人クラスの、もの凄いプレーだけではなく、もう少し身近なPLAY層(DOスポーツ)が参考にできるスポーツに、感情移入とともに没入してもらいたいと思っています。
—有料と無料のコンテンツがあるわけですね。
梅澤—そうです。MLBは無料の会員登録をした上で課金登録をして視聴していただきます。WAPに関しては、基本的には無料の会員登録さえすれば中継は見放題です。登録方法は難しくないです。とにかくハードルは低く、最低限のメールアドレス等登録をすれば見られます。
女性スポーツには大きな伸び代がある
—独占的配信契約を締結の経緯を教えてください。
梅澤—SPOZONEのコンセプトとして「身近な、草の根のスポーツを伝えていきたい」という考えが元々ありました。WAPから頂いた配信の提案が、まさに、これにぴったりでした。
そして、もう一つは、日本の女子競技は高いレベルにあるということが挙げられます。女子サッカーは世界一になっていますし、他の競技もオリンピックにストレートインしているものが多いです。しかし、男子競技と比べるとステータスが低いのが現状です。これをWAPから聞いたときに「大きな気づき」がありました。
—日本の女子競技の実態と価値が乖離していたのですね。
梅澤—現状は社会的評価が低いので伸び代があると思いました。もっとスポーツとして適正な地位にいるべきリーグや選手が、その位置にいない不条理を感じました。
そしてWAPとして複数のリーグがまとまっていることに意義を感じました。実は日本にいる「スポーツファン」は、かなり少ないです。「サッカーファン」「バスケットボールファン」……。その競技だけを見る人はいるのですが、スポーツを競技の垣根を超えて複数見る「スポーツファン」はあまりいません。これは欧米と大きく違います。「今日はサッカーを見る、明日はバレーボールを見る」ような、スポーツ環境に、日本もなれば良いなと思いました。
私は、日本におけるスポーツのエンターテイメント価値が、あまりに低いと感じています。その理由は「日本のスポーツのファン層が縦割り」というところにあると思っています。日本のスポーツは土日の特定の時間に同時に開催されます。これを一つのプラットフォームで中継することで、ザッピングして視聴することができ、複数の競技に興味を持っていただけるのではないかと思います。結果的に、女性スポーツ全般を楽しんでもらうことができると思います。
—現状はむしろ他の競技のファンと敵対する人が目立つくらいですね。多くの競技を見てほしいですね。
梅澤—インターネットの良さの一つに「ザッピングしやすい」ということがあります。WAPとして8つのリーグがまとまっていることは、とても大きな意義だと思います。一つのプラットフォームでハシゴすることで日本に「スポーツファン」を育成したいです。
—反響はいかがですか?
梅澤—ホッケーについて、大学チーム同士の試合を配信したのですが、一部の試合については同日に配信した一部のMLBの試合と引けを取らない視聴数を記録しました。
—それは大きな反響ですね。配信スタート前に想定していた視聴者層はどのような方々でしょうか?
梅澤—まずはアスリートの周辺層からです。プレーヤーの親兄弟、友達、クラブの先輩後輩を中心に、俗人的なネットワークで視聴者が広がっていく考えでした。実業団の場合は、会社の方々、コーポレートユーザから広がればと思っています。
—DOスポーツの考え方のお話をお聞きした上ですと、今のお話に納得性があります。ところが、女子サッカーに関しては、やや競技のポジションが高い位置にあり、他の競技と違う感じがします。いかがでしょうか?
梅澤—プレナスなでしこリーグについては期待しています。競技数が多く、視聴していただく方が多いと思います。現状は、オフィシャルのYouTubeと中継が併用されているので、これからジワジワと広がっていくと思います。 ※WEリーグはプロリーグなので、今回の独占的配信契約の対象外となっています。
ヒーロー・ヒロインを伝えたい
梅澤—MLBで活躍している大谷翔平やダルビッシュ有は日本のヒーローです。SPOZONEはヒーロー・ヒロインを伝えたいです。自分のヒーローとヒロインをSPOZONEで見つけてほしいです。
—例えば、SNSやSPOZONEサイトのニュース、中継以外のSPOZONEの番組で特定の選手をピックアップすることはお考えですか?
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