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東京ヴェルディが見せたコンパクト4-4-2でのマリノス/レッズ攻略法と城福浩による対抗策へのアンサー

笛の音が5万人超が入る埼スタに響いたとき、両チームの選手の表情からは悔しさが募っているように感じられました。ホームである浦和レッズからすればどうにか追いついたのは良いものの、PKによる得点のみで終わってしまったことに加え、PK獲得に至るまでの流れも、マティアス・ヘグモ新監督体制で積み上げてきた形によるものでもなかったからかもしれません。逆に東京ヴェルディからすれば、2試合連続で勝ち点3が逃げていったことによるものと考えられます。アウェイ連戦とはいえ、開幕節では最終的に逃げていった勝ち点自体を浦和戦は1でも食い止めることができたため、それはそれで進歩は見られるものの、2試合とも昨季のJ1上位チーム相手を尽く苦しめました。城福浩監督からすれば「ともすれば自信を喪失する」との発言もありました。試合終盤から出場したSB翁長聖選手が、試合終了後に共に途中投入だったFW河村慶人選手の肩に腕を回していて…。2試合連続のPK献上…しかもほぼ同じような時間。初戦の横浜F・マリノス戦、ハンドでPKを与えてしまった河村選手が、前節を思い出して何か悔やんだ発言をしたのかもしれません。
ただそれでも、第2節までで最も効果的な守備を行っているのは、共に昇格組であるFC町田ゼルビアと東京ヴェルディと言えるかもしれません。第2節でいえば、5-4と打ち合って勝利したジュビロ磐田や横浜F・マリノス相手に勝利したアビスパ福岡も素晴らしく、この4チーム中に昇格チーム3チームが含まれているのはとても興味深い話だなと感じます*

しかしそれにしてもアンカーを配置するチームにとっては受難とも言えるようなシーズンです。逆に言えば東京ヴェルディのようにベースをコンパクト型の4-4-2システムにするチームや、横浜FM戦で勝利したアビスパ福岡のように初期配置4-2-3-1から二次配置で4-4-2に変化するシステムを持つチーム、FC町田ゼルビアのように、4-4-2を軸としながらも、3バック型や変速型などの可変性を持つチームなどを含め、ミドルゾーンにコンパクトなブロックを築き上げて、ボールホルダーに定期的なチェック対応、ボールレシーバー…特にアンカーにはいずれかの選手が徹底したマークを施すことで中央へのパスコース封殺。これにより中央経路とアンカーを失ったチームが尽く機能不全に陥って混乱し、外回しの迂回経路を活用して相手に揺さぶりをかけたり(遅いビルドアップ)、スペース的に相手選手が不在となる相手2トップの脇からビルドアップを施すような4-4-2システムへのスタンダードな対策方法が見られないまま、焦ったチームが焦った戦い方を施し、徐々に目が揃わなくなってしまう姿が見受けられます。
当然プロのチームです。選手も監督も、一般的な話として出てくる戦術の話のようなものは把握されています。だから、セオリーと言われるような取り組みをしないケースがあるのは、「基礎基本」がないのではなく、それらだけでは対処が難しいため、次の策に打って出るも成功しない場合や、「基礎基本」で対処に移行する間でチーム内の目が揃わなくなってしまったり、焦りの部分でズレが生じたりすることによる個別のマネジメントによる問題が大半です。
今回は東京ヴェルディと城福浩監督が浦和レッズ戦でとった方法論を通じて、いかに浦和レッズのビルドアップを防いでいたかを確認いただきましょう。この試合における速報的な話は佐藤の個人チャンネルで既に話していて、この試合のプレビュー的な要素や、レビュー自体は既にミルアカでアップしているので、音で聞く派の皆様にはそちらもおすすめします。それではまいりましょう*

◎元からマリノス戦とレッズ戦のSB起用は分けて考えていた可能性


開幕節の横浜FM戦と第2節の浦和戦ではSB以外の9選手は固定で、SBだけが変更となりました。エウベル選手のフェースガード担当だったMF稲見哲行選手の疲労回復が難航した可能性も考えられますが、横浜FMと浦和のWG事情を考慮し、城福監督は開幕時から稲見・翁長のセットとSB山越康平・SB深澤大輝のセットを使い分けることは考えていたのかもしれません。

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