J論プレミアム

16年前の取材ノートから(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

マッチデイプログラムの表紙は飯尾一慶だった。

 

16年前の取材ノートから(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]百二十五段目

 

■5464日のブランク

山見大登がトントーンとボールを押し出してボックスに入る。席から立ち上がった僕は「振れ!」と叫んでいた。

シュートがズバッと決まって、東京ヴェルディは逆転に成功。4月3日のJ1第6節、アウェーの地で湘南ベルマーレを2‐1で破り、今季初白星&16年ぶりにJ1での勝利を挙げた。新加入の山見は1ゴール1アシストの大活躍だ。

翌朝、平塚駅近くのコンビニに寄ると、なんと日刊スポーツの一面を飾っているではないか。「ヴェルディ勝った」の見出しがデカデカと躍っている。スルーできるはずもなく、引き抜いてレジに持っていった。

5464日のブランクは史上最長。世の緑者にとって、この数字は銀行やクレカの暗証番号にちょうどよさそうだ。いまどき自分の誕生日にしている不用心な人はいないだろうが、個人データに関係するものと違って推測されづらい。忘れてもネットで検索をかければすぐに出てくるところが便利である。

2008年10月18日、J1第29節の大宮アルディージャ戦(1‐0○)以来か……。どんなゲームだったか、きれいさっぱり憶えていなかった。あらかじめ、この勝利を最後にしばらくJ1で勝つことはないぞと宣告されていれば印象に刻んだだろうが、気づいたら15年以上経っていただけの話である。

家に帰り、段ボール箱にしまっている古い取材ノートを引っ張り出した。「この勝利で勢いに乗っていける!」とか書いてあったらヤだなあと思いつつ、ページをめくった。

先発メンバーはGK土肥洋一。DF福田健介、土屋征夫、那須大亮、服部年宏。MF菅原智、福西崇史、柴崎晃誠、ディエゴ。FW平本一樹、飯尾一慶。82分、福西からのパスを途中出場の廣山望がヘディングでゴール前に入れ、ディエゴが右足でゴールを決めたことになっている。う~ん、やっぱり何も思い出せない。

 

布陣は[4-4-2]。ゲームが始まったら平本とディエゴの2トップで、飯尾は右サイドハーフと修正が入っていた。

「ディエゴ、ベンチで抱き合う」と書いてあり、値千金のゴールを派手に喜んだようだ。まさかこの2週間後の天皇杯、サンフレッチェ広島戦(0‐1●)でレッドカードを受け、正念場である残り4試合を出場停止で欠こうとは柱谷哲二監督も思っていなかったに違いない。

残留争いの直接対決を制した東京Vは勝点35とし、16位から14位に順位を上げた。当時のレギュレーションは17位以下が自動降格で、16位がJ2との入れ替え戦となっていた。ひとまず、降格圏からは脱出したことになる。
選手コメントのメモ。決勝点をアシストした廣山はこう語っている。

 

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