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「頭脳派」橋本英郎が占う2024シーズンのJ1。ボール保持型は苦戦必至!?優勝争いと残留争いの大局を読む

思考力の高いサッカー選手として活躍し、昨年現役を引退した橋本英郎氏。現在は指導者、経営者、解説者などポリバレントに活躍し、最近は初の著書『1%の才能 特別な武器がなくてもプロで成功する方法』を上梓した。DAZNでの解説も好評な橋本氏に選手視点で2024シーズンのJ1の大局を占ってもらった。(情報は取材時の12月末時点)

写真/松川啓司

 

●なぜ終盤に中位のチームが勝てなくなるのか?
●雪国でプレーしたからこそわかる秋春制の課題
●ボールは持つべからず!? 2024シーズンで有利な戦い方とは?
●守備の構築に時間をかけるチームが増えた?
●町田ゼルビアとヴィッセル神戸に共通する「強み」とは?
●マリノス、フロンターレへの期待と未知数すぎる鹿島
●ガンバ大阪が強くなるために必要なことはたったの2つ?
●注目選手は山本悠樹、森田晃樹、鈴木武蔵と湘南ベルマーレの逸材
●優勝争いしそうなクラブはあの3クラブ
●残留争い必至!? 苦戦が予想されるクラブは3から4クラブ
●結果が出ない時期を乗り越えるためにやってはいけない“禁じ手”
●3チーム降格の熾烈な残留争いのゆくえ

 

■なぜ終盤に中位のチームが勝てなくなるのか?

2024シーズンのJ1について橋本さんに占っていただきます。勢力図に変化はありそうですか?(インタビューは202312月下旬に行いました)

上位は昨季と変わらずヴィッセル、マリノス、サンフレッチェあたりかなと見ています。そこにフロンターレがどこまで盛り返してくるか。

勢力図はあまり変わりそうにない。

はい。ただ昨季は怪我人の影響が大きくて、とくにフロンターレはすごく苦労していた印象です。マリノスもSBに怪我人が出ていました。ヴィッセルも軸になる齊藤未月選手とか(山口)蛍選手とかが途中怪我で不在になりましたけど、大迫(勇也)選手、武藤(嘉紀)選手あたりがしっかり稼働できたのが大きかったですね。

―力が拮抗しているがゆえにケガ人の多さが明暗を分けた。

そういう面もあると思います。あとはJ1は終盤に残留争いしているチームが急に強くなるんですよね。そうすると中位のチームがなかなか勝てなくなります。優勝争いしているチームと残留争いしているチームが勝ち続けるというのが終盤戦の傾向で、それがJ1の面白さでもあると思います。

―全体としても上位から下位までそこまでの力差はないような印象です。

もちろん、ある程度の差はあるんですけど、めちゃくちゃ開いているわけではない。モチベーションやメンタリティで埋めることができるぐらいの差ではあるのかなと思います。あとは後半戦にACL、天皇杯、ルヴァンカップと重なってくるチームはしんどくなります。浦和は年間60試合と言ってましたけど、コンディションが厳しいなかモチベーションが高いチームとやるのは簡単ではないと思います。メンバーを変えて調整しながらやっていましたけど、いい試合はしてもなかなか勝ちきれない状況になりました。

―ケガ人が多くなる原因はどこにあるんでしょうか?

いろいろあると思うんですけど、シーズン始めの入り方もあると思うんですよね。よくフィジカルコーチと言われるんですけど、監督のチームの作り方というのも影響があるのかもしれません。

 

■雪国でプレーしたからこそわかる秋春制の課題

―大きな話題になったシーズン移行についても聞かせてください。2026年から秋春制に変わることが決定しました。夏場の試合が減るとケガ人が少なくなったりしますでしょうか?

あまり関係はないと思います。逆に寒いときにやるのがどうかなと。あとは一般社会とのギャップも気になりますね。学校や企業の9月入学・入社はあまりないと思うので、たとえばプロになって早くに引退した場合、すぐに転職したり大学に入り直したりが難しくなる。指導者や先生になりたい選手も多いので、とくに高卒で引退とかを考える選手は苦労するんちゃうかなという気がしていますね。最終的にはうまくシフトはすると思うんですけど。

―雪国問題といい解決すべき課題も多いですね。

雪国は大変ですよ。長野の雪を経験した者からすると、あの寒さで日本人が試合見ようと思わないんじゃないかなと思います。

AC長野パルセイロでプレーされていたので実感がこもっていますね。

約2カ月のウインターブレイクを設ける方向みたいですけど、雪があるチームはウインターブレイク明けの2月後半から3月中旬か下旬までずっとアウェイでホームに戻れない可能性は高いですよね。1月もまともにトレーニングできないので合宿をすることになるかもしれない。2ステージ制のやり方に近くなるのかなという気がしますね。

―確かに中断期間が長めです。

チームだけじゃなくサポーターの移動の問題もあります。ホームはもちろん、アウェイで試合をやるとしてもサポーターが移動するのは難しいかもしれない。あと、ウインターブレイクがあることでゆっくりできる時間はあるかもしれないけれど、逆にリーグの期間は今の10カ月から8カ月ぐらいになるはずなので、水曜日の試合が増えるんじゃないかなと。20チームなのでリーグ戦でもミッドウィークにやらざるをえないはずです。

―観客動員が逆に心配ですね。ACLとの関係や欧州に合わせることで海外移籍がしやすくなったり、Jリーグのシーズン中に抜かれることが少なくなったりするメリットはわかるんですけど、はたしてこれでリーグとして収入が大きく増え、より魅力的になるのかという疑問もあり、いろいろな問題を包み込めるぐらいのメリットがあるのかどうか、まだ実感がつかみづらいですね。

Jリーグも引き続き課題を継続検討していくとのことなので、うまくいくように進めて欲しいですね。

 

■ボールは持つべからず!? 2024シーズンで有利な戦い方とは?

―話がそれましたので戻します。勢力図で言えば、一時期川崎とマリノスで盤石な時期がありましたけど、昨季は橋本さんがかつて在籍したヴィッセル神戸が初めてのリーグ優勝でした。

 

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