J論プレミアム

【森雅史の視点】2024年4月24日 ACL準決勝第2戦 横浜F・マリノスvs蔚山現代

ACL 準決勝第2戦 横浜FM 3(3-5PK4-2)2 蔚山
19:00キックオフ 横浜国際総合競技場 入場者数16,098人
試合データリンクはこちら

 

立ち上がりは横浜FMの一方的なペース。30分までに植中朝日の2ゴールとアンデルソン・ロペスの強烈な一発で横浜FMは3点をリードする。だが蔚山がイギュソンに代えてダリヤン・ボヤニッチを投入すると落ち着きを取り戻し、36分にCKから1点を返す。さらに39分、ペナルティエリアに侵入したオムウォンサンにスライディングした上島拓巳の手にボールが当たり、PKとともに上島が退場になった。このPKをボヤニッチが決めて3-2、2戦合計が同点となる。その後両者に際どいシーンが続いたが結局延長戦までゴールは奪えず、とうとうPK戦に。そのPK戦では蔚山の5人目が外したのに対して横浜FMは全員が決めて決勝へと駒を進めることになった。

 

ひどく冷めた、斜めからゲームを見たならば「すべて横浜FMが招いた結果」と言えるかもしれない。30分までに3点をリードしながら決定的なカウンターに晒されて退場者まで出してしまった。「3-0の時点でゲームを凍らせてしまえばそのまま楽に逃げ切れた」とも見えるだろう。

 

だが、そんなことができるゲームではなかった。横浜FMにはすごい熱があった。アウェイでの敗戦を挽回すべく、キックオフ直後から容赦なく攻め立てた。蔚山の関係者が「こんなにひどい出来は今季見たことがない」と嘆いていたが、それは横浜FMの反発心が招いたものだ。そしてそこから蔚山が反撃に転じたのは、これまた蔚山にもすごい熱があったからだった。

 

その蔚山を相手に1人少ない状態で80分以上を耐え抜いた。それができたのは、元々守備の意識が高い横浜FMだったからだろう。アンデルソン・ロペスが守備に参加せずとも、9人で守れたのは全員が他の選手のために自己犠牲を続けたからだった。

 

ただ、この試合に敗者はいない。とても冷たい雨が降っていたが、その場にいた誰の心も冷やすことは出来なかった。

 

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ