J論プレミアム

思わぬ場所で感じたパブリックビューイングの効用(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

思わぬ場所で感じたパブリックビューイングの効用(えのきどいちろう)えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』百十段目

 

■思わぬ場所で企画されていたパブリックビューイング

FIFA女子ワールドカップ オーストラリア&ニュージーランド2023の盛り上がりが足りない。読者がこれをご覧になってるのは8月に入ってだから決勝トーナメントがどうなってるかわからないが、少なくともグループステージ2戦終わった本稿執筆時点ではさっぱりだ。シーンと静まり返っている。グループCの初戦、ザンビア戦の16時キックオフは微妙な時間で、この日はJ1神戸-川崎1試合、J2の7試合、J3の8試合すべてナイターが組まれており、夕方の時間帯は移動してるかスタジアムで待機してるか、いずれにしてもマイチームのことで皆、頭がいっぱいだった。ガンバなんかセルティック戦組まれていた。サッカー好きのかなり大部分がなでしこどころじゃなかったのだ。

残りのJ1勢はザンビア戦を見てくれたと信じるが、大相撲中継で伯桜鵬を見ていたかもしれない(あと一歩で新入幕初優勝を果たしそうだった)。まぁ、ザンビア戦を見ていたサッカーファンも5-0で危なげなく勝ったから、「あ、いいね」以上の感想は特になかったかもしれない。女子ワールドカップはドタンバまでテレビ放送が決まらず、NHKが(日本戦に限って)手を挙げたけれど、決して世間的関心が高いとは言えない。スポーツ報道も大リーグの大谷君の方が時間を取っている。僕は案外、サッカーの女子ワールドカップが現在、南半球で開催されていることすら知らない日本人が多いんじゃないかと思う。

だけど、女子ワールドカップはビッグイベントだ。女子サッカーのプレステージは北米で圧倒的なのだ(アメフト、ベースボール等にタレントが流れてしまう男子よりはるかに高い)。以前、元日本代表の大竹奈美さんから「アメリカの中流以上の白人家庭で娘さんにやらせていちばん見映えよく、聞こえもいいスポーツ」が女子サッカーだと教えられ、びっくりしたものだ。当然、競技人口もケタ違いで、スポーツメーカーにとっては儲かる市場になっている。何しろ今回のアメリカ代表の最終メンバー発表のプレゼンターをバイデン大統領やテイラー・スウィフトが務めたくらいだ。アレックス・モーガン、メーガン・ラピノーはアイコンであり、カルチャーヒーローでもある。新時代の女性のロールモデルとして、女子サッカーを通じて、価値を創造している。今回、女子ワールドカップ・アメリカ代表初戦のテレビ視聴率はWBC決勝戦を上回ったそうだ。

だから、我が国の注目の薄さが何とも残念なのだ。2011年、澤穂希らが世界一を獲得したときは「東日本大震災で沈んだ心に希望を与えてくれた」とあんなに持ち上げていたじゃないか。なでしこジャパンが頑張ってくれないとWEリーグも火がつかない。困るのだ。ヨーロッパも女子サッカーのマネタイズに成功し始めている。僕らももっといかれぽんちになって、長谷川唯の名を連呼するようでありたい。だってお祭りだぜ。

で、パブリックビューイングを探したのだ。放映権買ったのだからたぶんNHKがPVを実施してるとにらんだ。僕は渋谷区神南のNHKホール隣りの「みんなの広場ふれあいホール」というところで、これまで五輪やW杯の8K大型モニターを楽しんできた。が、調べてみると同ホールは2020年1月に閉鎖されている。ネットで調べた範囲ではNHK仙台放送局とNHK長野放送局がPVを実施するようだが、(神南のNHK放送センターを含む)首都圏の局ではなぜか見つからなかった。

が、思わぬ場所でPVが企画されていた。戸田市役所だ。マンチェスターシティ所属の長谷川唯選手は埼玉県戸田市の出身なのだ。そういえば選手の出身地自治体がPVを主催するパターンがあった。ネットの告知を読んだかぎりでは戸田市民じゃなくてもタダで見せてくれそうだ。ヤフー乗換案内で見ると埼京線の戸田公園駅からコミュニティバスでサクッと行けそうだ。僕は東京下町在住なので戸田公園なら赤羽のちょい先くらいの地理感覚。下北沢とか吉祥寺よりよっぽど「ご近所感」がある。

 

 

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