J1夏の緊急補強ポイントと後半戦の大展望。鹿島の安定感は不吉な予感? 優勝争いのカギを握る札幌、鳥栖、川崎の「強すぎる中位」【後編】
J1夏の緊急補強ポイントと後半戦の展望を識者2人に占ってもらった。
今回、取り上げたのは横浜F・マリノス、名古屋グランパス、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、鹿島アントラーズ、サガン鳥栖、北海道コンサドーレ札幌、川崎フロンターレ、FC東京。
サッカージャーナリストの西部謙司、河治良幸が見る、それぞれのクラブの補強ポイントと展望、そしてJ1の潮流とは?
たっぷり2万字超えでお届します。
後編は以下5クラブを中心に展望します。【鹿島アントラーズ】
・安定の先にあるのは停滞か、それとも…
・噂になる柴崎岳復帰は諸刃の剣?
・鈴木優磨はマンチェスター・ユナイテッドにおけるカントナ
・佐野海舟が見せる国内ナンバー1の技術【サガン鳥栖】
・期待以上だった救世主・河原創
・前半戦の「最大の被害者」は鳥栖?
・最大の補強はケガ人の復帰?
・後半戦に台風の目となる可能性
・トップチームと同じくらい大事なU-18の成績【北海道コンサドーレ札幌】
・昨季より増したリーグ屈指の攻撃力
・田中駿汰という逸材と岡村大八の成長。それでも減らない失点(笑)
・札幌らしさ全開だった非常識な得点
・覚醒したJリーグNo.1のドリブラー
・ピンポイントで補強するならあの選手の代役【川崎フロンターレ】
・「過渡期」という見方は楽観的すぎる?
・大きく響いた屋台骨の崩壊
・補強すべきはCB。次に欧州から狙われるのは?
・優勝レースのカギを握るのは川崎【FC東京】
・なぜアルベルは失敗したのか? クラモフスキーは何を変えるのか?
・松木玖生の後釜の補強は必須?
・もしかしたら狙われる山形の選手?→J1夏の緊急補強ポイントと後半戦の大展望。優勝に一番近いのはマリノスではなく名古屋? 積極補強も浦和に足りないピースは?【前編】
【鹿島アントラーズ】
■安定の先にあるのは停滞か、それとも…
―鹿島アントラーズは4-4-2で安定して復活してきました。
河治 岩政監督が言うには、各ポジションに複数の良い選手がいて、競争も激しくて、ベンチメンバーを決めるのも大変だと。
―負担が大きいのは佐野海舟とピトゥカのボランチ、あとは知念慶が負傷中のFWでしょうか。
西部 ボランチは樋口もいるからね。
河治 ルヴァンカップはありますが、ACLはないので、やたらと補強しても余剰戦力が多くなりマネジメントが難しくなる恐れがありますね。数はいるので、さらに上乗せできるようなタレントをピンポイントで補強をするかどうか。サイドハーフで決定的な仕事ができる選手とかですかね。ただ、藤井智也は序盤は使われて、いまはうまくハマっていないけど、潜在能力は高い選手ですからね。
―4-4-2だとフィットしきれない感じはあります。荒木遼太郎がより使いづらくなりそうです。
河治 難しいですよね。サイドハーフは守備のパワーも求められますからね。ボランチも厳しいとなると、4-2-3-1にしてトップ下ぐらいしか使いどころがない(その後、7/1京都戦ではトップ下で先発)。4-4-2で安定していて大きく崩れるリスクもないので。
―柴崎岳、復帰の噂もありますね。
河治 復帰しても使い方が難しい部分がありそうです。
西部 いろいろと中盤の構成とかも試行錯誤して4-4-2の今のシステムに落ち着いたじゃないですか。鈴木優磨と垣田裕暉の相性もすごくいいし。これでまとまったわけですよ。逆に言えば、ここからもうどこにも行けなくなった感がある(笑)。
―原点回帰というか…
西部 このままでもそこそこの成績は出るとは思うけど…。上にも下にも行けそうにない感じになっちゃったかなと。
河治 そうなんですよね。ある意味、ハマっちゃったなという感じではある。
■噂になる柴崎岳復帰は諸刃の剣?
西部 柴崎が入って、トップ下とかアンカーで使ったりすればチームも大きく変化するかもしれないけど、良い変化になるかはわからないからね。繰り返しになるけど、4-4-2のフォーメーションでこのやり方っていうのは、今のメンツにはすごくいいと思うんだけど、ここで固まった感じはある。ある意味、広島と似てる感じはあるというか、広島よりも固まってしまった感じがある。
―変えようとしたけど、もとに戻した。
河治 柴崎が戻ってきて、佐野とピトゥカ以上のパフォーマンスをするかというとわからないし、それでも岩政さんは無理しても使っちゃう可能性があるかなと。
西部 そりゃそうだろうね。
河治 基本的にすごく選手をリスペクトする監督だし、もともと一緒にやってきた盟友みたいな感じもあるので、使っていこうとするといまのバランスがよくも悪くも崩れてしまうかもしれない。いい方にいって上位を席巻する可能性もあるけど、崩れる可能性もある。となると、気づけば柴崎は佐野、ピトゥカの次という序列になってしまうかもしれない。戦力にならないわけではないですよ。ただ、イニエスタがいる神戸のリスクと似ているかもしれない。
西部 ここまで固まってしまっていると、ギャンブルとして獲るのはありかもしれない。ある意味、先が見えている感じだから。
河治 基幹となる軸まで変わってしまうとこれまでの土台が揺らぐ可能性はありますよね。名古新太郎と仲間隼斗のハードワークとか、チームを支えている強みがね。
―諸刃の剣になる可能性ですね。難しいところですね。
■鈴木優磨はマンチェスター・ユナイテッドにおけるカントナ
西部 このメンバーでポゼッションはできないんですよ。じゃあカウンターができるかと言ったらそれも微妙なんだよね。4-4-2でしっかりミドルプレスしてハードワークして、ダイレクトプレーで攻めていくというやり方がしっかり機能しているだけに逆に動かせなくなったなと。
河治 それが崩れたのがガンバ戦ですよね。ガンバがボールを持って、押し込まれて、崩された。はめられてしまって、やられっぱなしになってしまった。ガンバが持つんだったら、ここで奪って裏返しにして徹底的につこうぜ、とはならなかった。
―攻撃でも守備でも主導権が握れなかった。
河治 それを見越して、選手起用で使い分けられればいいんですけど、今のところは基本的には全員で寄せていって、選手の個性はプラスアルファぐらいみたいな感じかなと。ただ、鈴木優磨という選手だけはやっぱスペシャルなので。そこは欠けないという前提ではあるかな。神戸で言う大迫じゃないですけど。鈴木優磨がいないと変わってきちゃう。
西部 すべて変わっちゃうよね。
河治 そうなったらトップ下が必要なサッカーになるかもしれないので。
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