J論プレミアム

またひとつサッカー雑誌の灯が消える(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

紙媒体の歴史にピリオドを打った『サッカー批評』と『フットボール批評』。最初に企画を持ち込んで仕事ができたときはうれしかったなあ。

 

またひとつサッカー雑誌の灯が消える(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]百一段目

 

■ついに季刊誌も・・・

さよならJ2ツアーのつもりで臨んでいる今季、アウェー遠征は特別な旅情が湧く。自分とこの東京ヴェルディはもちろん、相手だってどうなるかわからないのに、当分ここを訪れることはないんだなと勝手にしんみりしたりして、まったくいい気なものである。

名残惜しさは、ない。15年も続けて長居し、隅々まで堪能させてもらった。

ここしばらくはコロナの影響で会えなかった、会っても距離を取っていた旧知のライター仲間とも久しぶりに話せた。なにせ久しぶりだから話すことはいくらでもあるのだが、最近の仕事ぶりは互いによく知らない。これはだいぶ前からそうだった。

僕たちはサッカーによってつながりを持ち、書くものによって人となりを知る。いまはあんまりよく知らないものだから、どうも会話がつるっとしている。

サッカー専門誌は厳冬時代である。およそ10年前、かつて週刊のライバル誌だった『サッカーマガジン』(ベースボール・マガジン社)、『サッカーダイジェスト』(日本スポーツ企画出版社)が相次いで刊行ペースを落とし、ネットに軸足を移した。スポーツ誌を含め、雑誌メディアの隆盛は2002年の日韓ワールドカップのあたりがピークだろうか。以前は知り合いの書いたものを読み、面白いなあと感心したり、鼻白んだりすることがあったが、その機会はめっきり減った。

そして先月、『フットボール批評』(カンゼン)が休刊(事実上の廃刊)となり、僕はいよいよだなの感を強くする。ついに季刊も生き残れなくなった。時代の流れと言ってしまえば、この話はここまでだ。

 

■サッカーの書き手として突き詰めていくこと

負けたなあ、の思いが胸に湧く。何に負けたのかはわからないけど。そこに書かれているものが、鼻血が出るほど面白ければこうはならなかったのではないか。不遜は承知である。そもそもイチライターにどうにかできることではない。

前身の『サッカー批評』(双葉社)時代からかれこれ20年余り、興味の赴くままに企画を立て、好きなことをたくさんやらせてもらえた書き手はいい。やるだけやって、負けたと思えるだけ幸せなほうだ。

雑誌の衰退は、雑誌文化の中から生まれる人が消えることを意味する。雑ではなく、雑多な事柄を意味し、本来、いろいろな角度から楽しむことができるサッカーとは相性がよかった。

名残惜しさが、ある。これははっきりと。フリーランスは個人戦だから、その号でほかの誰よりも面白い記事を書いてやろうというのはモチベーションのひとつだった。

 

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