J論プレミアム

ぱっとしなかった東京クラシック2020(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

東京クラシックの日、町田GIONスタジアムの空は晴れていた。この写真もぱっとしないぜ。

 

ぱっとしなかった東京クラシック2020(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]四十七段目

 

■コロナの中で新たな楽しみが誕生する

後世で失われた2020年と振り返られるだろう、奇禍のシーズンが終わろうとしている。

新型コロナウイルスが広まりだした春先から、あぜんとする出来事が次々に起こった。今年の目玉だった東京五輪の延期をはじめ、各種イベントの開催見送り。日常生活で手放せなくなったマスク。ステイホーム、ソーシャルディスタンス、リモートワーク、etc.

サッカー界もまた多大な影響を受け、尋常ではない過密日程のなか、ひとまず最後まで走り抜いたすべてのクラブにおめでとう、おつかれさまである。これでもし自分の生活からサッカーまで奪われていたらどうなっていたか、想像するのも恐ろしい。

つくづく、ぱっとしない一年だったなあと思う。コロナに翻弄され、あれよあれよという間に気づいたらもう年の瀬だ。いつもはもっとこう日々の営みに起伏があって……。とは思うけれども、じつのところぱっとしなさ加減では、例年とそれほど変わらないのではないかという気もする。ふだんからぱっとしまくっている人が言うならともかく、ぱっとしなかったのを全部コロナに押しつけるのはいかがなものだろう。ん、ぱっとするってどういうことだ。

悪いことばかりだったわけではない。

今年、僕は毎日を少しでも気分よく過ごすことの大切さに気づかされた。これまでは、どうせひと晩寝れば気分はリセットされるから、よかろうが悪かろうがたいした問題ではないと捉えていたのだ。実際そんなことはなく、充実感は得られなくともいい気分で一日を終えたほうがずっといい。それしか変化の乏しい毎日に対抗する術がなかったとも言えるが。

外出の機会が極端に少なくなり、在宅で過ごす時間が長くなった結果、どうすれば自分の機嫌を上手に取り、ストレスを軽減できるか工夫を余儀なくされた。そうして僕は、人生初のひいきの漬物屋さんを見つけた。ルミネ立川の食品売り場にたまに出店する『マルタケ』。ひとりで切り盛りしているおばちゃんと仲よく話すようになり、つい先日「僕はここのお漬物のファンです」と大まじめに告白するに至る。定番の白菜の漬物を買って帰れば、夕食の時間はご機嫌だ。ほれ見ろ、ぱっとしない話である。

 

■ダービーマッチの熟成方法

12月6日、J2第39節のFC町田ゼルビア vs 東京ヴェルディ。東京クラシックと銘打たれる一戦は、今季を象徴するようなぱっとしないゲームだった。

 

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