J論プレミアム

『俺のやることが山雅の伝統になってくれたら嬉しい』田中隼磨がJ1残留に向けて示す覚悟とは【アテネ世代の今】

79年生まれを中心とした「黄金世代」に対し、81年生まれを中心としたアテネ世代は「谷間の世代」とも呼ばれていた。
その「アテネ世代」だが、現役を続ける選手はもちろん、サッカーとは違う場所でセカンドキャリアをスタートさせたりなど多士済々。
そんなアテネ世代に詳しいライター・元川悦子が複数回に渡り「アテネ世代の今」についてをJ論プレミアムにてお届けする。

 

▼今こそチームの経験を活かすタイミング

2015年以来、4年ぶりのJ1参入を果たしながら、今季開幕から思うように勝ち星を挙げられず、J1残留争いに巻き込まれてきた松本山雅。残り3節という現時点では勝ち点30の17位と崖っぷちに立たされている。

11月10日の前節・サガン鳥栖との下位対決に勝てば、J1残留圏内の15位も見えてくる状況だったが、その大一番で0-1とまさかの苦杯を喫してしまった。3月17日のサンフレッチェ広島戦以来、27試合ぶりの出番なしに終わった田中隼磨は、忸怩たる思いを抱えていたに違いない。
「J1初昇格した4年前、俺たちはJ1残留を争っていた鳥栖や(アルビレックス)新潟に終盤戦でことごとく負けてJ2に落ちた。あの経験を生かす時が来てますよね。その時と今はメンバーは変わってるけどチームとしての経験はあるので、同じことを繰り返しちゃいけない」と彼は試合前に語気を強めていただけに、この敗戦には打ちひしがれたことだろう。

とはいえ、松本山雅にはまだ3試合が残されている。対戦相手はJ1優勝争いを演じている横浜F・マリノス、ここへきて復調してきたガンバ大阪、チョウ・キジェ前監督辞任によってペースダウンした湘南ベルマーレ。前者2つに勝つのは容易ではないが、12月7日の最終節・湘南戦は本拠地・サンプロアルウィンでの最終決戦となる。ホームの熱狂的声援を受ければ、選手たちの闘志が掻き立てられないはずがない。そこで勝ち切って16位に滑り込み、J1・J2入替戦をしのげば、悲願の残留が見えてくる。もちろん他のゲームにも勝てれば自動残留も十分あり得るが、今の松本山雅にとってはそのシナリオが最も現実的ではないだろうか。
「俺たちのミッションは残留すること。それを果たすしかない。個人的なことはいろいろあるけど、今はそれを表に出しちゃいけない。それが自分のあるべき姿だよね」と37歳になった右ウイングバック(WB)は、9月以降スタメン落ちしている現状にじっと耐え、チームを第一に考えて献身的姿勢を示し続けている。

 

▼盟友・闘莉王の言葉を胸にJ1残留を目指す

2014年に故郷の松本山雅に赴いてから4シーズンをJ2で過ごした田中隼磨にとって、2度目のJ1昇格を果たした今季は「勝負の年」だった。というのも、ベンチを温める時間が長かった昨季の悔しさを最高峰リーグで晴らしたかったからだ。年初には三浦知良や松井大輔(ともに横浜FC)らと自主トレをこなし、プレシーズンのキャンプでは誰よりも負荷をかけて体を苛め抜き、最高のコンディションを作り上げた。

 

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