デジタルピヴォ! プラス

無料:2004年世界選手権/日本のエース・木暮賢一郎『世界との距離』を語る[フットサル史探訪]

 

2004年11月21日~12月5日 台湾大学体育館、林口体育館

 

私事になるが、この3月に転居した。引越しの整理と準備に追われる中で思わぬ宝物に巡り合った。「FIFA FUTSAL WORLD CHAMPIONSHIP CHINESE TAIPEI 2004」、まだ、FIFA FUTSAL WORLD CUPの名称が付けられる前の世界選手権大会の“のぼり”だ。縦152cm・横63cm。台湾の首都・台北での大会らしく、「2004 世界盃五人制足球賽」と漢字で縦書きされている。こののぼりが、日本代表が1次リーグを戦った林口体育館の正面ゲート前の道に重し付きのポールに刺された状態でズラーッと並べられ風になびいていた。日本代表の出場はかなわなかったが、決勝トーナメントが行われた台湾大学体育館といい、ここ林口体育館といい、僕が移動した範囲内で台湾はフットサル関連の飾りは皆無といってよかった。台湾大学では体育館の外で大学生だろうか若者たちが野球に興じていた。フットサル未発展国で開催することでフットサルの周知・宣伝に貢献しようというFIFAの意図があったのだろうが、その効果は乏しいと感じた。それだけに林口体育館前アプローチのその眺めはちょっとうれしかった。と同時にこののぼりが欲しいと思ったのを覚えている。5日後、取材を終え体育館を出たとき、それは相変わらず風にたなびいていた。時間が遅かったこともあって大会関係者が撤収に取り掛かっているときで、つたない英語で欲しい旨を伝えるとポールから外したばかりの1枚をくれた・・・。あれから16年。それを新居の自室のドアの内側に貼り付けてみると、おぼろげながら当時のことがよみがえってきた。さっそく当時を記録したフットサル専門誌フットサルマガジンピヴォ!の大会関連記事を繰ってみた。記事を通して強く伝わってきたのが日本のエース、木暮賢一郎の存在感だった。当時の彼へのインタビューを再録して大会の1次リーグを振り返る。

デジタルピヴォ! 山下浩正

 

 

[フットサル日本代表登録選手]
1 川原永幸光<ゴレイロ>(田原FC)
2 鈴村拓也(MAG’S FUTSAL CLUB)
3 前田喜史(CASCAVEL)
4 小宮山友祐(FIRE FOX)
5 比嘉リカルド(FC琉球)
6 難波田治(FIRE FOX)
7 金山友紀(CASCAVEL)
8 藤井健太(MAG’S FUTSAL CLUB)
9 小野大輔(フトゥーロ フットサル)
10 木暮賢一郎(FIRE FOX)
11 相根澄(PREDATOR)
12 定永久男<ゴレイロ>(FIRE FOX)
13 高橋健介(PREDATOR)
14 石渡良太<ゴレイロ>(シャークス)
※()内は所属チーム、「https://www.boas-compras.com/japansamurai5/players」より転載させていただきました)

[フットサル日本代表1次リーグ結果]
第1試合 日本 4-5(前半3-2、後半1-3) パラグアイ
第2試合 イタリア 5-0(前半2-0、後半3-0) 日本
第3試合 アメリカ 1-1(前半1-0、後半0-1) 日本
(最終結果)
1分け2敗・勝ち点1、得失点差ー5、1次リーグ敗退

 


木暮賢一郎インタビュー

1本のシュートの差

Pivo! 世界選手権、3試合で1分け2敗、1次リーグ敗退という結果でしたが? 

木暮 1つの目標として、1次リーグ突破というのは、僕だけじゃなくて全員が思っていましたし、それ1勝、勝利というところは、必ず達成しないといけない目標だったと思うので、1勝もできなかったというのは残念でしたね。たくさんのサポーターのみんなが現地まで来てくれて、これ管区てもインターネッットやテレビで見てたりとか横断幕作ってくれたりとか、そういう応援してくれた方に応えるには、やはり勝利というのが一番感謝を表すことだったので、本当に申し訳ないという気持ちですね。

Pivo! 対戦して日本での試合との違いは感じましたか?

木暮 それは当然日本でやってるものとは全然違いますけど、行く前のアルゼンチン戦でサンチェスやプラナスとかと2試合やれたから、ヨーロッパでやってる選手に対して多少慣れることができたのかな。それに体の大きさとか間合いというのは、日本人と違うから、アルゼンチンと2試合することによって、世界選手権に結構スムーzに入れましたね。

Pivo! パラグアイ戦ですが、最後の最後で逆転されました。任本は何が足りなかったんでしょうか?

木暮 やっぱりそこが力の差だったりとか、まだ自分たちの足りないところなのかな。もし立場が逆で全く同じ場面でってなったときに、日本の選手だったら決めれるかってところですよね。たぶん入らないなって思うし。同点のゴールも冷静にキーパーの股狙っているし、最後の場面なんてトップスピードの中からニアの上に強いシュートを打っているっていうのは素直に力があるんだなぁって思いますよ。

やっぱりあそこで勝ちきれない日本と、ああいう場面で決められるパラグアイの差がそのまま出ちゃったと思いますね。ホントにもったいない試合というか最悪でも引き分けられた相手だと思いますし、まだまだ経験が足りないのかなと。プレー中は無我夢中でしたけど、今振り返ってそういったことを反省すると、やっぱしその最後の点だったりとか1本のシュートに差があったかなと思いますよね。

シュートを打たされた

Pivo! イタリア戦はどうでした?

木暮 完敗ですよ。

Pivo! パラグアイとは違いましたか?

木暮 違いますね。すべてにおいて、あれはホントのプロフェッショナルなチームだったなぁって。ショート打てなかったですから。もう研究されてましたね。イタリアの選手と話したときとか、リカルドの友達がイタリアにいて聞いたんですけど、大会の前からイタリアは相手の顔写真とプレースタイルのデータの紙を配っていて、日本戦の前も僕らのデータを配っていたみたいですよ。

Pivo! イタリアの選手は日本の戦術を知ってたわけですね?

木暮 ピヴォ当てのこともいっていたし、ゲームやっていてもやっぱり守り方がうまいなって感じたしね。ボールがピヴォに入ったあとに、キーパーとか他の挟む選手はみんなポジション取りが決まっていて、もうどっちかにしか振り向けない状況なんですよ。1対1だと思っていても、実は1対2であったり1対3であったりっていう状況を作ってきましたね。

Pivo! ポジション争いも激しかったですか?

木暮 いや、ポジション取りに関しては、日本の選手がムキになってるのかなぁって。前を取られたたくないっていう意識は日本人のほうが強くて、外国の選手は別にキープされてもいいやみたいな、それでそこからがうまい。

Pivo! ディフェンスの組織力は感じました?

木暮 単純に自分の力がなかっただけかもしれないですけどね。ただなんかシュート打たされてるなぁって気はしてました。イタリア戦で特に。こっちにトラップさせられて、こっちに振り向かされて、こっちにシュート打たされるっていう。あとキーパーもうまい。なんかうまいと思いましたよ。僕らが日本で体験しているキーパーとはやっぱり違いました。どこの国もキーパーうまい。ポジショニングとかも、そのさっきのイタリアの話と一緒で、どこの国もある程度連動してますしね。

いつか絶対みんなで喜びたい

Pivo! 3試合通して、ベッキ(フィクソ)とのマッチアップで日本との差は感じましたか?

木暮 基本的に外国人は日本人をなめてる部分がありますよね。プロでやってるイタリアとかからすると完全に見下しているわけじゃないですか。そkはやっぱりプロとアマチュアだし、日本は弱いと思っているでしょうし。そう思っている選手に勝つには気持ちでも負けちゃってたら、絶対勝てない。だからマークしてる選手に対して、「コイツ、ゴールに向かってくるな」っていうのを示していかないと、40分間戦えないと思うんですよね。

Pivo! 世界レベルはまだ先ですか?

木暮 いや、間違いなく手の届かないレベルじゃないなっていうのは感じたし、試合をやってみてね。もうちょっと、ちょっとじゃ足りないかな。もうだいぶ頑張ればってとこじゃないですかね(笑)。

Pivo! その手応えは今回得た大きな財産ですか?

木暮 まぁ手応えっていうかね、アルゼンチン戦を含めて5試合か。2次リーグ行ってあと3試合やりたかったけど、まぁ5試合。アルゼンチン、パラグアイ、イタリアに関しては知ってる選手がたくさんいて、彼らはみんなヨーロッパでやってるわけで、やってみて通じた部分もあったし、まだまだだなっていう部分もありましたけど。

Pivo! その中でいい自信を持てましたか?

木暮 いい部分と改善しないといけないところが半々ぐらいあるんですよ。ただそれが100%のうち10%と90%だったりしたらすごい落ち込んでいると思うんですけど、実際50%ずつぐらいかなぁって。それだったら、頑張れるなって。負けてるから、ホントはこんなこといえないかもしれないけど、アメリカだってプロ、パラグアイだって全員がそうかどうかわからないけどプロ。だからその辺のレベルに何か足りない部分があって勝てなかったけど、そこを追いついたり、逆転するっていうのは自分たちで頑張れば。絶対手の届くとこだと思うんです。イタリアやブラジルっていったら、もっと長いスパンでもっと変えなきゃいけない部分があると思いますけど。だから、その世界選手権の1次リーグを突破するっていうレベルに関しては、そう遠くない位置にあって、それはアマチュアでも達成できると思ってます。

Pivo! 今回の一番の収穫は世界との距離感を感じとれたということですか?

木暮 そうですね。普通に生きてたら、きっとわからない世界だと思うんですよ。だから、今回集中的に世界のチームと5試合できたってことは幸せなことだと思うし、ただ、最初にもいいましたけど、応援してくれる人たちには全然物足りない結果だとは思ってます。だから僕らももっと頑張るから応援し続けてほしいし、今回届かなかった勝利は、いつか絶対みんなで喜びたいですね。そうやって応援し続けてもらうためには恥ずかしくないプレーをして、また応援したいって思われるような試合をしていかないと。世界選手権ではサポーターの声がすごい力になったし、もしかしたらあれだけのサポーターがいたからパラグアイにリードしていたのかもしれないし。サポータ-1人もいなかったら、イタリア戦も途中であきらめちゃったかもしれない。そのぐらいホント勇気をもらったから、絶対それに応えたいですよね。

取れるタイトルは全部取る

Pivo! 計3得点というのは、自分で物足りないですか?

木暮 物足りないですよ。うーん、でも、わからないな。1点だろうが5点だろうが、チームの勝ちにつながっていればうれしかっただろうけど。

Pivo! 勝利に結びつくゴールが欲しかった?

木暮 そうですね、3点取っても1勝もしてないですし。勝つために必要なのは、点だけじゃなくて、守備かもしれないし、声出すことかもしれない。だから、全然満足っていうのはないですね。得点に関しては、取れないよりは取れたほうがいいから、自分のポジション的な部分とか、役割的なことを考えれば、0より3のほうがいいけど、3より6のほうがいいと思うし6点より3勝のほうが全然いいと思いますしね。元からチャンスが3点しかなくて、3点だったらもしかしたら満足してるかもしれないけど。でも得点ランク見たらフォーリア(イタリア)と一緒じゃん、みたいな(笑)。1ファンとしてはね。選手としてじゃなくてですよ(笑)。

Pivo! 自分のこの部分なら海外でも通用するという、手がかりはありましたか?

木暮 手がかりはわからないけど、イタリア人が名前覚えてくれたのはうれしかったですね。満足してるってわけじゃないけど、試合やる前に僕のことなんか知らなかったと思うけど、終わったら、コグレ、コグレって来たからね。それイコールかどうかわからないけど、ちょっとは認めてくれたのかなって。

Pivo! 当面の目標は?

木暮 優勝です。日本で。

Pivo! 全日本選手権は去年決勝でやられちゃいましたからね。

木暮 関東リーグ、全日本、取れるタイトルは全部取りたいですね。何かのきっかけで観に来てくれた人に、フットサルを好きになってもらうようなプレーを見せたいですね。個人的なプレーもそうだし、チームとしてもそういうことも目指したいですよね。

Pivo! 股抜きとかの派手なプレー?

木暮 それは行き過ぎないレベルで。

Pivo! ブラジルも試合決まるとファルカンショーになりますしね。

木暮 でも、勝つことが一番大事ですから。まぁ流れの中で観ている人が喜ぶプレーができればいいですけど。狙っているわけじゃなくて、タイミングだったりとか、なれば自然になるだけの話ですよ。でもやっぱり、サッカーもそうだと思うんですけど、一番単純に見て盛り上がるのは、点入ったとこだと思うから、そういうシーンを多く作っていければいいのかなっていうにはありますけどね。

Pivo! 世界選手権の経験は日本で生かせますか?

木暮 それは、先回選手権行って、行きっぱなしじゃダメですよ。2次リーグに入るのは手の届くところにあるっていいましたけど、日本で頑張らないとダメですからね。ただ世界選手権に出たってだけじゃなくて、常に世界を意識してプレーしないと出た意味ないですから。ちょっとだけじゃなくて、だいぶ頑張らないとダメだと思いますよ(笑)。

 

[プロフィール](当時)
木暮賢一郎 こぐれけんいちろう
1979年11月11日生まれ。FIRE FOX所属。
小学校から中学3年まで読売クラブでプレーし、湘南工科大付属高校へ。浪人時にウィニングドッグでフットサルを始め、その後FIRE FOX。2001年のアジア選手権から日本代表入りをし、次第にエースとして不動の地位を築く。中央大学卒、日本体育大学大学院在籍。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ