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[座間コラム]なくなるポジションという概念、フットサルのバロンドールを勝手に予想

ワールドカップ決勝で2得点を決めたブラジル代表のネット。ワールドカップMVPが世界最優秀選手のポールポジションにいることは間違いない。

 

 

フットサルプラネットが2000年から毎年行なっているフットサルの祭典。

 

「AGLA Futsal Awards 2012」

 

毎年最も活躍した選手を決める賞だ。

 

過去にはマヌエル トビアス、ハビ ロドリゲス、シュマイケルら名手が受賞している。フットサルのバロンドールだ。2012年の各部門のノミネート選手、チームがフットサルプラネットで発表された。

 

ポルトガル代表のリカルジーニョ。高い個人技で観衆を最も沸かせた選手だが、ワールドカップ、欧州選手権では準々決勝で敗退している。クラブチームでは名古屋、ベンフィカを牽引している。

 

 

最優秀選手部門ではポルトガル代表で名古屋に所属するリカルジーニョ、最優秀代表監督部門では日本代表のミゲル ロドリゴ監督、最優秀代表チーム部門では日本代表がノミネートされている。そして最優秀若手選手(U-23)部門には日本代表で名古屋に所属する逸見勝利ラファエルがノミネートされた。

 

このノミネートされた一覧を見て、今回は僕が好き勝手に予想したいと思う。

 

まずは最も注目が集まる最優秀選手について。

 

ポールポジョションにいるのはブラジル代表のネットだ。なんといってもワールドカップのMVPだ。世界一を決める4年に一度の大会で母国を優勝に導いただけでなく、決勝戦で2得点を決めている。延長戦終了19秒前の劇的な決勝ゴール。対峙するフェルナンダウを抜き去り、ひとりで勝負を決めてみせたのもネットだった。クラブではリーグタイトルを手にできなかったが、やはりそのワールドカップでのインパクトは強烈だ。彼の同僚で2004年、そして2011年にこの個人賞を手にしているファルカン、そしてディナモ モスクワのアタッカー、フェルナンジーニョもいるがネットのインパクトには敵わない。彼は決勝点を決めた直後、バンコクのコートをうれしさのあまり走り回った。8年前はスペインとの準決勝でのPK戦でシュートをバーに当て、ブラジル最後のキッカーとなってしまったネット。台湾のPKスポットでずっとその場を動けずに泣いていた青年は今やベテランと呼ばれるような年齡になり、トロフィーを手に満面の笑みでバンコクを後にした。

 

ノミネートされたスペイン代表のミゲリン。欧州選手権優勝、ワールドカップ準優勝に貢献。ただ彼の所属チームのエルポソは国内のタイトルを手にしていない。

 

ワールドカップファイナリストのスペインからはシルバーボールを手にしたキケ、そして攻撃を牽引したミゲリンと共にバルセロナ所属のトーラスがノミネートされた。この3人の中で注目すべきはトーラスだ。1月に行われた欧州選手権のMVPであり、得点王。ワールドカップでも決勝戦でゴールを奪っている。所属クラブのバルセロナではUEFAフットサルカップを制覇。欧州ナンバー1を決める舞台でもトーラスはゴールを奪い、クラブに史上初めてのタイトルをもたらしている。さらに国内のリーグ、カップ、国王杯を連覇。タイトルの数、貢献度からいえば、ネットにも負けずとも劣らない。

 

ネットとトーラス。かつてスペインの名門クラブ、インテルで共にプレーをした2人には大きな共通項がある。ひとつは左利きであること。そしてもうひとつは本来のポジションがフィクソであることだ。フィクソとは本来をディフェンスするのが大きな職務となる。トーラスも「自分が得意なのは相手のアタッカーをマークすることだ」と語っている。ネットも巻きつくようなディフェンスでボールを奪い取ることを得意とする。ただ今大会のワールドカップでは互いに決勝でゴールを奪っているように、ディフェンス力だけでなく、その攻撃力も相手の脅威となっていた。齢を重ねて、2人ともプレーが熟された。円熟味のあるプレーというやつだ。具体的にいえば、ネットとトーラスは自身が駆け上がるタイミング、そして自分の長所の活かし方にさらに磨きがかかった。ワールドカップでのネットはまるでアタッカーのように幾度となくドリブルで仕掛けていた。得意のルーレットはあまり目にすることはなかったが、相手ディフェンスとの駆け引きがさらにいやらしくなった。トーラスはゴール前に思い切って飛び出していく。得点が生まれる瞬間を確実に嗅ぎ取れるから、彼は前線に駆け上がり、得点を効率よく奪っていく。2人も左利きで強烈なシュートを打てるので、セットプレーでも重宝される。

 

インテルで2人の同僚だったシュマイケルがかつてフィクソという概念を変えた。ディフェンスだけでなく、彼はタイミングよく駆け上がってよく得点を奪った。あきれるほどゴールネットを揺らしている。ポジションに関係なく、ゴールを奪うシュマイケルはすべてのポジションをこなせるということで宇宙という意味を持つウンニベルサーレと呼ばれた。トーラス、ネットはそんなウンニベルサーレの系統を継ぐ者たちだ。

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