J論プレミアム

そして、新しい歴史の扉を開ける(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

3年と少しの活動に終止符を打った「J2バスターズ」

そして、新しい歴史の扉を開ける(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]百十九段目

 

■来年は、J1だ

12月11日、ごく一部でカルト的な人気を博したYouTubeの企画ユニット「J2バスターズ」の解散LIVEが開催された。場所は高円寺のスポーツ居酒屋KITEN!である。おかげさまで満員御礼。席は隙間なく埋まった。

『ゼルビアTimes』の郡司聡さん、『栃木フットボールマガジン』の鈴木康浩さんの3人で今季を振り返りつつ、ややリスキーな裏話をちょこちょこ話す。暮れの忙しい時期にきてくれたお客さんに土産話を持って帰ってもらいたかった。

ラストの卒業式は鈴木さんが式辞を述べ、集まった栃木サポーター(やたらと気のいい人ばかりだった)が県民の歌を合唱し、僕と郡司さんは送り出された。栃木で育った人なら誰でもそらで歌える、日本指折りのメジャー県ソングだそうだ。

つくづく異様な空間だった。初めて耳にするメロディ、郷土を誇る歌詞に、なぜか胸がきゅっとなる。まるで惜別の唄のように響く。うそだろと思った。ほんの軽はずみに始めた遊びのトリオなのに。まして、J2に心残りなんてこれっぽっちもないのに。出ていく側はいい気なものである。一方的なビューティフル・グッバイだ。完全クローズドの門外不出イベントではあったが、この場面だけは記録として映像に残さなかったのが悔やまれた。

こうして「J2バスターズ」は3年と少しの活動に終止符を打った。僕は花束とプレゼントの品々を両手に抱え、中央線に乗った。来年は、J1だ――。こうしてまたひとつリアルなものを得て、師走の一日が終わる。まだ全然、現実に実感が追いついていない。

 

▼なぜプレーオフを勝ち上がれたのか

三度目のプレーオフだった。

2017シーズンは準決勝でアビスパ福岡に0‐1の敗戦。2018シーズンは1回戦、2回戦を突破するも、最後の決定戦でジュビロ磐田に0‐2と一蹴された。そして、今回だ。レギュラーシーズン3位で初めてホームアドバンテージを有して臨む東京Vは、準決勝でジェフユナイテッド千葉を2‐1で下し、決勝は国立競技場で清水エスパルスを迎え撃つ。1点ビハインドの後半アディショナルタイム、染野唯月のPKで同点に追いつき、ついに16年ぶりのJ1昇格をもぎ取った。

 

その夜、旧知の緑つながりの人たちと祝杯をあげた。言うまでもなく、16年の歳月は長い。変わらずにサッカーライフを謳歌する人がいれば、この世を去った人もいた。「もう一度、一緒にJ1で応援したかったな」。ある人がぽつりと言い、僕はいくつかの顔を思い浮かべる。

別にJ2だったから不幸というわけではない。それならそれで、楽しみを見つけ出すものである。あらためて、人間は環境に順応する生き物だと知った。

2022シーズンの途中から就任した城福浩監督が変えたのはまさにそこである。

 

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