J論プレミアム

どうせなら強いエピソードをくれ!(海江田哲朗)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

開催中止になった水戸ホーリーホック戦。常磐線のひたち野うしく駅から折り返すことに。

 

どうせなら強いエピソードをくれ!(海江田哲朗)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]八十七段目

 

■試合開催が二転三転

13日の昼下がり、僕は常磐線のひたち野うしく駅のホームに突っ立っていた。千葉と茨城の県境である利根川を越え、ちょいと向こう側に入ったところである。

台風8号の影響で開催が危ぶまれていた、J2第31節の水戸ホーリーホックvs東京ヴェルディ(18:00 ケーズデンキスタジアム水戸)は、当日12時頃に可否を最終決定となっていた。12時を回り、台風の直撃を避けられない関東のゲームが軒並み中止と発表されるなか、水戸は開催するという。

だったら行くしかない。オンライン取材は過去のものとなり、選択の余地なしである。迫りくる台風とぶつかる帰路を考えると、気が重かった。日帰りの予定だが、交通機関がストップする可能性もある。そうなった場合はどうやってしのごうか。

今日はいつにも増して勝点3が重要だ。勝ちさえすれば、大抵のことは試合にまつわるスパイスとしてポップに扱える。

予定どおり、ラジオを聴いたり本を読みながらのんびり鈍行列車の旅に出かけた。14時26分、東京から上野東京ラインに乗り、常磐線に乗り入れる。そして15時31分、開催中止のメールがピコンと届いた。

ひたち野うしく駅で降り、とりあえず反対側のホームまで歩く。電車は遅延していた。誰かに会えるかもしれないとホームを端から端まで歩いた。知り合いはおろか、ひとりの緑者すらいやしない。多くがクルマ移動か、アクシデントを想定し見送った人も少なくないだろう。

この際、都内で誰かに連絡したり、ふだんしない遊びをすることも考えたが、接近中の台風がネックだ。寄り道をしているうちに帰れなくなったらアホらしい。動き出した折り返しの電車に乗り込み、揺られるているうちに怒りが沸々と湧き上がってきた。やり場のない憤まんが熱を持ってくる。なんで、いつもこうなのだ。

 

■大量のがっかりポイントを獲得してみたい

いまに始まった話ではない。これまで数々のトラブルに見舞われながら、だいたいにおいて僕のエピソードは弱い。インパクトがなさすぎて、使いものになりゃしねえ。

今回、マッチコミッショナーと水戸の実行委員が下した判断の是非に関しては、ひとまず脇に置く。

差し当たって、開催中止のタイミングだ。目的の赤塚駅に着き、スタジアムに向かうシャトルバスが出発したあとであれば、中止にどよめく車内の雰囲気をスケッチできた。スタジアムに到着し、意気揚々と訪ねた報道受付で知らされてもいい。相手がちょっと引くくらい、僕は大げさに落胆して見せただろう。がっかりポイントを稼げるタイミングはいくらでもあったのだ。ひとりでいる電車で、メールを着信するのは一番ダメなやつである。まあ、1時間前に着けばいいかとぐずぐずしていた僕が悪いのか。

 

※この続きは「サッカーパック」に登録すると読むことができます。

(残り 1166文字/全文: 2742文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ