J論プレミアム

サッカー界と「恩返し」の関係性(えのきどいちろう)

タグマ!サッカーパック』の読者限定オリジナルコンテンツ。『アルビレックス散歩道』(新潟オフィシャルサイト)や『新潟レッツゴー!』(新潟日報)などを連載するえのきどいちろう(コラムニスト)と、東京ヴェルディの「いま」を伝えるWEBマガジン『スタンド・バイ・グリーン』を運営する海江田哲朗(フリーライター)によるボールの蹴り合い、隔週コラムだ。
現在、Jリーグは北は北海道から南は沖縄まで58クラブに拡大し、広く見渡せば面白そうなことはあちこちに転がっている。サッカーに生きる人たちのエモーション、ドキドキわくわくを探しに出かけよう。
※アルキバンカーダはスタジアムの石段、観客席を意味するポルトガル語。

 

サッカー界と「恩返し」の関係性(えのきどいちろう)[えのきど・海江田の『踊るアルキバンカーダ!』]五十四段目

 

 

■遂にアウェー席が首都圏で解禁される

J2第6節の取材で相模原ギオンススタジアムへ出かけた。今月はノンキな話を書かせてほしい。

この週末もプロスポーツ界はコロナ禍で大揺れだった。巨人の主力選手ら5人が陽性(Jリーグならガンバ大阪のケースに匹敵するだろうから試合中止になりそうなものだが、プロ野球はやるんですねー。この判断の差はちょっと外部からはわからない)。Bリーグにも陽性者が相次ぎ、感染力が強いとされる変異株の影響が懸念される。Jリーグも同様だ。FC岐阜の選手2名に陽性判定が出て、トップチーム全員に保健所から自宅待機の指示が出てしまった。この自宅待機がエントリー期限までに解除されず、J3第4節、鳥取‐岐阜は直前で中止せざるを得なくなった。もう前乗りで鳥取に向かっていた岐阜サポもいたそうだ。

他には浦和の選手1名に陽性が出たとニュースになった。そりゃノンキな話も書きたくなる。今や誰がいつ感染してもおかしくない状況になった。僕はプロ野球やJリーグはある程度、東京オリンピック・パラリンピックへ向けた世論誘導や対外的なアピール(それから大規模会場の運営テスト!)に使われてると思っている。「コロナ禍のなかでも、ほら、やれますよ!」という役割りだ。まぁ、国際的なスポーツイベントに協力するのは競技の社会的評価を上げるという考え方もあるだろうけど、肝心の選手らはまだワクチンも打てない。マスク、手洗いという僕ら一般と同じレベルで頑張っている。さすがに危ないんじゃないかなぁと思う。

そんなもやもやを抱え、4月最初の日曜日、JR相模線の原当麻駅に降り立ったのだ。ギオンスタジアムは以前、女子サッカー(ノジマステラ神奈川相模原)の試合で来たことがあった。原当麻駅からスーパーの横を抜け、黙々と道路脇の歩道を行くと突然、森への誘導路がある。そこからはハイキングコースの雰囲気だ。当日は午後から雨予報が出ており、一応、僕も傘とカッパは持参している。これ、もしかすると帰りはザーザー降りなのかなぁと思う。ギオンスはゴール裏が芝生席だし、悪天候はきつそうだ。

と考えながら歩いていたのだが、一緒にスタジアムへ向かってる一群がどうもオレンジの小物を身に着けている。いや、わかりやすく新潟ユニの人もいるのだが、スニーカーがオレンジだったり、リュックがオレンジだったり。もしかして大半はアウェーの新潟サポではないかと思った。J2第6節、SC相模原は今季初めてアウェーサポ受け入れのオペレーションを実施する。J2昇格して初めてのアウェー客が(人数が多いことで定評のある)新潟なのだ。席割りや交通手段等、クラブ側は苦心したと思う。ただコロナ禍の入場制限は生きていて、上限が定められている。SC相模原の運営能力なら楽勝でさばけるはずだ(何しろ過去、12,000人を経験している! ちなみにこの日は観客数は3,420人)。

で、スタジアムに入ったら本当にオレンジ色が目立っていて驚いた。両方のゴール裏を比較すると明らかに新潟が多い。開幕から5連勝、前節・東京V戦は7‐0で大勝しサポーターも勢いがついている。それに首都圏在住の新潟サポが大勢駆けつけていた。就職就学で東京に出た新潟県出身者にとって、サッカー応援は故郷との絆を再確認する場だ。ただ今年はずっと首都圏に緊急事態宣言が出ていたこともあって、ホーム観戦を控えていた人が多い。第6節になってやっと首都圏アウェー戦が組まれたのだ。そりゃギオンスにオレンジ色が目立つわけだ。

僕は去年、このコラムでも取り上げたが、八戸でSC相模原の試合を見ている。シーズン終盤、昇格目前の試合だった。こうしてJ2の舞台で相まみえると、あぁ、相模原昇格よかったなぁ、自分はJ3時代の試合が見られて貴重だったなぁとしみじみ思う。

 

■サッカー選手は船乗り?

強風の吹きつける試合だった。風の影響は随所に見られた(雨は大丈夫でした)が、悪天候もサッカーの一部だ。結論を新潟側から言えば2-2でタイムアップ、「開幕6連勝」は成らなかった。相模原側から言えば奪ってカウンターの戦法がハマり、好調新潟と互角にやり合う「手応えありのドロー」だ。互いに収穫のある試合だったと思う。この試合の反省なり、手応えなりは必ずチームを成長させる。

が、僕の心は相模原・平松宗に惹きつけられていた。この試合、平松が活躍したのだ。48分の2点目ゴールも平松だった。もちろん彼は以前、新潟に在籍した選手だ。こんなとき、ネット記事やSNSの「実況」等では「恩返しゴール」と書かれることになる。「恩返しゴール、イラネ」とか。元は相撲用語らしいのだ。アレは何だろうか。いつからサッカー用語として定着したのか。

 

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