ロクダス

新国立をカズスタジアムに

文・写真=六川則夫

三浦知良に最もふさわしいスタジアムは、どこか? 残念ながら横浜FCのホームスタジアム三沢球技場ではない。彼が立つピッチは国立競技場以外考えられない。

 

国立で見た多くのカズゴールやカズダンス、そう、国立のピッチにはカズのDNAが残されている。消え去る事のない、サッカーの記憶が埋まっている。

 

 

新装となった国立競技場が一般に公開された。満員の観客を前に最初にピッチの芝を踏んだのは、プーマのスパイクを履いたカズの左足だった。

 

「おかえり、カズ」僕は撮影しながら、心の中でそう呟いた。

 

新しい国立は、以前とどう違うのか。ピッチサイドに立った印象からすると、「あっ聖火台がない」がまず口にでた。次いで、360度観客席を覆う屋根が視界に迫ってきた。ざっくり言うと、昔の国立に屋根をかぶせただけ、というのが僕の偽わざる感想だ

 

なぜなら、そこに相変わらずトラックがあるからだ。屋根がついても、スタンドに傾斜がついて見やすくなっても、ピッチとスタンドの間には、暗くて深い河が横たわっている。

 

相変わらず、ゴール裏からピッチまでは遠い。臨場感あるボール競技を都心のど真ん中で堪能できないのは残念でならない。

 

新しい国立はゲートが五つある。各コーナーに一つずつで4か所、アウェー側ゴール裏にもゲートができた。資材の搬入搬出や、人の出入りがよりスムーズにできるようになった。

 

利用者というより、使用者の使い勝手優先ということか。トラックというオープンスぺースをいかに有効に使い、売り上げにつなげていくかが、新国立の課題だろう。フィナーレの終盤、嵐が移動ステージで歌いながらトラックを回ったが、これはどこかで見た光景だ。

思い出した。等々力劇場である。川崎に倣い国立競技場改め、国立劇場と呼ぼう。自虐を込めて。

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