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厳しい人事の木枯らしが、早くも湘南に吹く! アナリストプレーヤー職は消滅か!? [山下コラム](2019/1/26)

横澤直樹アナリストプレーヤー。2017年10月28日、快進撃を続けているころの、何の迷いもない一葉の写真。

 

彼の“不在”に僕が初めて気づいたのは1月19日(土)の第30節アウェー浦安戦だった。選手のナイスディフェンスにガッツポーズする奥村監督。横澤在籍時はこのわかりやすさ、選手との距離の近さはあまり感じられなかった気がする。

 

「崖っぷち」の意味するもの

シーズンの結果を踏まえた人事異動・体制変更が実施されることは珍しくない。だが、湘南ベルマーレのそれは、6試合を残してシーズン途中にコーチ職が“はく奪”されたという点で、異例だ。

アナリストプレーヤーとは、2017/2018シーズンを迎えるにあたって湘南が新設したポジションで、相手チームのスカウティングと、それを前提とする戦略・戦術の全権を担うアナリスト(分析家)と同時に、プレーヤーとして実際にピッチに立つ“一人二役”を指す。要するに選手兼任コーチの新名称である。

2017/2018シーズン、アナリストプレーヤーの新設は大成功を収める。
湘南は2007年のFリーグ開設時から参入しているが、初年度から2017/2018シーズンまでの湘南の戦績は以下のとおり。

2007 8チーム中5位
2008 同7位
2009 10チーム中8位
2010/2011 同8位
2011/2012 同8位
2012/2013 同9位
2013/2014 同4位
2014/2015 12チーム中10位 横澤直樹監督
2015/2016 同10位 横澤直樹監督
2016/2017 同10位 横澤直樹監督
2017/2018 同3位 奥村敬人監督

要するにFリーグが現在の12チーム制になった2014/2015シーズン以降、3年連続10位と低空飛行を続けた。
それでもクラブは横澤のたぐいまれな戦術眼を評価し、2017/2018シーズンから監督の座から外しはしたものの彼のために新設のポストを用意した。それがアナリストプレーヤーであり、新設初年度にいきなりクラブ過去最高順位の3位を獲得し、クラブ初のプレーオフ進出を果たしている。同時に横澤が構築したメソッドで指導してきたサテライト(PSTCロンドリーナ=当時)も関東フットサルリーグで優勝している。横澤はキャリアのピークにいた。

しかし、2018/2019シーズン、状況は暗転する。

どうもがいても勝ち点の積み上げが思いどおりにいかず、5位が定位置となった。悪いことにプレーオフは上位3チームの狭き門となり、5位は悪い順位ではないのに前年との比較の中で低迷ばかりが目立った。その過程でチームにとって、横澤にとって転機が訪れる。

自身の進退にもかかわる一戦

思えば第25節(12/2)、準ホームの南足柄に立川・府中アスレティックFC(2位)を迎え撃つ、湘南の横澤直樹アナリストプレーヤーの表情はいつになく深刻だった。試合直前に彼は「崖っぷちです」と僕に語っている。それは、上位3チームに与えられるプレーオフ出場権を争ううえで重要な試合と位置づけたうえでの発言と思っていた。だが、それだけではなかった。今振り返れば、横澤アナリストプレーヤー自身の進退にもかかわる一戦だったといわざるを得ない。この試合を0-1で落とした湘南はその2節後(第27節、12/15)、今度は2位を行くシュライカー大阪にもホームの小田原アリーナで2-3で敗れ、湘南はこの試合を機に事実上プレーオフ争いから大きく後退。同時に横澤はアナリストという戦術担当コーチの職を事実上、失っている。その背景には一体何があったのか。第30節(1/19)アウェー浦安戦後に奥村監督に話を聞いた。

まとめ◆デジタルピヴォ! 山下

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