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[埼玉県OP 第7節]全員がデフの一般県リーグチーム、ガッツリ本気でトップを食う(アバンソールソルド・箱島武監督、東海林直広)(2019/1/10)

アバンソールというチームをご存知ですか?
ピンとこない人が多いかもしれませんが、かつて関東1部リーグに所属していた”アルティスタ埼玉”といったほうがわかりやすかったかもしれません。
2018年度より、アルティスタ埼玉はチームの名称をアバンソールさいたまと変え、現在は埼玉県リーグ1部に所属するチームです。
しかし今回インタビューを行ったのは、アバンソールさいたまでなく、埼玉県オープンリーグに所属する、アバンソールさいたまの下部組織のアバンソールソルドです。
一風変わったチームで、メンバーの全員が聴覚障碍者でありながら、デフのフットサルリーグでなく、一般の県リーグに所属しているというチーム。
その辺りの経緯などを、チームの監督である箱島武監督と、デフの日本代表キャプテンも務める#18 東海林直広選手に話をうかがってみました。

 

Pivo! アバンソールソルドというチームは、今季から結成されたチームと聞きましたが。

箱島 間違いないです。元々のチームの経緯としては、デフの上井っていうもうひとり日本代表の選手がいるんですけど、埼玉県でデフのチームをつくりたいっていうその話があったんですね。まぁ、形としては浦安さんとかがやっているような、健常者と一緒にデフの選手を多めに入れてやるっていう話でやりたいという話をされていて、協力してもらえませんかというところから、どうせやるなら連盟とか協会がOKであれば全員デフで・・・チームにひとりでも選手をできているなら、選手全員がデフの選手でも、スタッフにさえ健常者の人がいればできるんじゃないの? っていうことで、もし10人以上選手が集められるなら、埼玉でそれでチャレンジはできるじゃないかって、日本でまだ誰もやったことがないっていうことだったので、チームを立ち上げるときに、アバンソールのトップがFリーグを目指す活動をするということだったので、そのときちょうど僕も運営側のほうで携わっていたんで、そこの下部組織のなかにソルドっていうのを後から僕がくっつけた感じで、立ち上がったチームなんです。なんで一応今日も先ほどちょっとお話ししたように、日本代表のほうのサッカーの合宿があって、選手のほうが半分くらいしか来れていなくて、その中でも勝てたし、しっかりやること各々ができること・・・まぁ、ちょっと物足りない部分が個人的にはありますけど。でも、まぁ、そのなかではできたかな。

Pivo! デフだけのチームっていうのは初めてなんですか?

箱島 日本で初めてです。健常者のリーグに(デフだけで)チャレンジしているところはどこにもないです。

Pivo! すごいですね。

箱島 僕自体はデフの方々と・・・埼玉県にデフのチームの選手が多かったんで、何かしら、いろんな全国大会とかの運営に協力してきたりっていうのもあって、どこかでっていうのもあったんで、その話がどうせあるなら、誰もやったことないことを・・・パラリンピックも、オリンピックも東京であるんで、どうせだったら誰もやったことないことをできればなって、それが逆にいったらデフのフットサル全体、日本代表とかもそうですし、あんまり環境がそれほどよくない中でやれば、誰かが・・・今回の取材もそうですし、他のいろんなことでもそうですけど、注目してもらって、僕らが埼玉県のデフだけで活動していることが、日本代表だったりとか、もっと大きくくくるとフットサル全体が話題だったりっていうところで、その底辺からでもできることが、アバンソールのトップもF目指すっていう意味で埼玉県の活動とかがあって、すごく今年は1年間アルディージャさんといろいろイベントやらせてもらったりとか、いろんなところでやらせてもらっているんで、そういった意味では少し認知だったりとかしてもらったのかな。

Pivo! 運営組織自体もフットサル連盟であったりとか、ろう者サッカー協会って分かれちゃっている自体も、本来であれば一緒であるべきなのかな。

 

箱島 ただ、僕もそこは、だからっていっているよりも、行動起こしちゃって、自分たちが先に進んじゃえば、結局組織とかは後付けでついてきてもいいと思って。だから、待っていて例えば不満、不平をいったりとかしても変わらないので、先に突っ走っちゃえばいいかなというので、逆にいうと彼らが日本代表の選手として、モチベーションも高いですし、そういう意識も高いっていうのがあるんで、来年2月に日本代表がアジア大会やって、11月に世界大会がちょうどデフのほうの大会があるんで、そのタイミングでやっていく感じなんですよね。

Pivo! この間はデフ日本代表としてスペインに合宿行っていましたね。

箱島 そうです。

東海林 行って来ました。

Pivo! スペインへ行って、帰って来てすぐにリーグ。なかなか切り替えるのも大変なんじゃないですか。

東海林 う~ん、そうですね・・・普段アバンソールでやっていると代表でない選手たちもいるので、彼らとのバランスも考えながら、でも彼らに合わせようとはあまりしたくなくて、もちろん、彼らが僕らのレベルについてきてもらえるように、うまくモチベーションを維持させるようにしながら、そういうところの役回りもありますし、逆に自分たちがスペインで得たものはしっかり浸透させなければならないので、その辺りはしっかりチームに還元できればいいなと思っています。今後も考えていきたいです。

Pivo! できたばかりのチームでこんなに日本代表の選手が所属しているって、自然と集まってきたんですかね。

箱島 まぁ、僕も条件として、もともと僕、インペリオっていう、烏天狗インペリオというところにずっといて、そこでやっていた中で、フットサル1度1年間離れた中で、もう当たり前のような・・・Fリーグのチームをつくるとか、難しいことであればやりたいなと思ったんですけど、ただフットサルを漠然とやるみたいなことがある中で、逆にいうと彼らにやる条件として、10人以上集められるならというところで、声かけして集まってきたところなんで、どっちかというと今は立ち上げたばかりなんで、本来はアバンソールに入ってないと日本代表になれないぐらいのチームにしたい。全体的にここのチーム。だから、ここで活動していれば、ここでレギュラー取ることだったりとか、試合に出るようになることが日本代表になるって、それをまんまもっていってくださいぐらいのところに彼らも持っていって欲しいですし、トレーニングを本当は見て欲しいんですけど、健常者のトレーニングなんか比じゃないですからね。やっている日々のトレーニングは。そういうところも見ても、僕も今、じゃあそういうのをやりましょうっていうのも、彼らのモチベーションだったりとか、意識の高さがあってなんで、難しいも何も、見ているところが県リーグじゃなくて、世界を見ている彼らは、だから難しいことも何もないですね。携わって初めて難しさはわかるんですよ。例えば今日も何回かあったんですけど、ディフェンスが声で修正できないんで、裏を取られちゃったりとかっていうところが結構難しかったりとか、今までのフットサルの声で修正という概念が全部なくなった状態でやらなければいけないんで、たぶんそれすらも乗り越えるような気がする。いろいろ話あったりとか、こうしたほうがいいみたいなことをやりながら、彼らは乗り越えられるのかな。だから僕は、ここのカテゴリはあっさり優勝するくらいじゃないと、世界狙っているやつらなんで、こんなところで終わっちゃいけないなとは思いますし、僕自体は狙っているのは本当はもっともっと高くて、選手権も本当はトップに勝ちたかった。だから、トップが選手権の関東へ行きますけど、本気であそこを狙っていたんで僕らは。だから来年、世界大会が終わった頃に、たぶん選手権があるんで、そこではガッツリ本気でトップを食うくらいな感じで、選手権をデフだけで関東大会へ行きたいなーっていうのがチームの目標でもあるんですけども。僕自体よりも、彼らのアピールをしてあげてもらって、僕いいたいこと伝えたいことはいったんで。

Pivo! 聞きたいなと思ったことは、いわずとも語ってくれてた部分は結構あり助かります。

箱島 彼(東海林)自体が、チームの中でも補聴器付けていれば、ちゃんと会話もできる数少ない選手なんで、例えばインタビュー取るにしたって、たぶん手話ができなかったりとか、通訳だっているじゃないですか、彼は逆にいうと僕が受け入れるときも、気にしているところだったんですよ。伝えるとか、教える何かがあるってときに手話ができない。彼らが、僕の回りについている子が、多少言葉が理解できて、手話ができる子が周りを固めてくれているんで、僕のとなりにいて言葉で伝えたことを、全部手話で伝えているって状態でできるってことで、今チームが回っている感じなんですね。

Pivo! 監督から指示を受けたときに、コミュニケーションをとるのが難しいですよね。

箱島 試合中は無理ですよね。

東海林 練習の中で例えば、監督のいっていることに関しては、僕が通訳すればいいだけのことなので、オンプレーのときの指示っていうのは、言葉で説明する余裕はないので、ジェスチャーというか、ボディーランゲージか、この腕の動きで、寄せろとか、下がれとか、まぁ、そういうところをうまく使っていくのが僕らの強みなのかな。

Pivo! 声で指示出しているシーンというのはあったじゃないですか、そういったシーンでも、通訳というか、間に立って伝えるっていうことを、その場でしていくような感じなんですか。

箱島 交代が一番そんな感じ。試合中の流れはだいたい試合前に話しあっちゃって、例えば交代もこれぐらいの時間ベンチを見てくれみたいな。そこのやり取りを誰かが交代するのを見たときに、手話で伝えてもらうのが選手と。

東海林 あとは試合中の指示はなるべくシンプルにしてもらっているので、例えばハーフにするなら、”ハーフ”のひとことですし、前からいくなら”前プレ”のひとこと。あまり多い情報量だと試合の中で伝えきれないので、その辺りはまぁ、監督にも工夫してもらっているほうだと思うので。

Pivo! やっぱりいろいろと工夫をしているんですね。

東海林 ははは(笑)。

箱島 ただおもしろいですよね。逆にいうと今まで僕がインペリオでやってきたフットサルが全部覆されるじゃないですけど、通用しないので。全部通用しないので、僕の感覚からすると、新しいものをゼロから・・・伝え方にしてもそうだし、本来音で修正する部分をどうやっていいかって、さっき言ったみたいに前の選手はこうやることで・・・スイッチ、入れ替わりとか、手でやるときって、あとはボールサイドで絶対に手を上げて、自分がボールいきますよってその合図とか、今までやったとしても、音があったのでそんなに重要視していない部分。例えば、手を挙げたとしたって、音があるんで音のほうが実際問題、手を挙げるより声のほうが早い。動作はめんどくさいじゃないですか選手は。でもこれを基本ベースにやって、どうやって合わせていくかって考えると、やっぱり新しいし全く違う。同じようで、全く違うことをやっている感じがしますし。

Pivo! 選手間というのは、普通だと声出したりとか、手でやったりとかアクションがあると思うんですけど、基本的には動作で統一されているから、ある意味では選手間のコミュニケーションというのはしやすいんじゃないでしょうかね?

東海林 そうですね、まぁ、言葉はないので、シンプルな動きだけで指示になるので、その辺はもう見てわかるっていう部分では強いのかもしれないですね。逆に見る側にも工夫が必要なので、そこはチームとして注意してやっているところです。

Pivo! 試合観ていても意思の疎通は、普通のチームよりは強いのかなという感じはしています。

東海林 ありがとうございます。

Pivo! 先ほども日本代表の選手がいっぱいいるということで、1年目で立ち上げてこれだけ集まったというのは選手間のコミュニケーションで集まってきたって感じなんですかね。

東海林 もともと聴覚障碍者の日本代表として活動している選手が関東は非常に多かったので、関東にいるメンバーにまず集中的に声を掛けただけで10人集まったんですよ。その中で日本代表にはなれないけど、高いレベルでフットサルをやってみたいていう有志が数名いたので、彼らにもぜひぜひということで練習してもらって、今のメンバーになりました。比較的集まりやすかったかもしれないです。

Pivo! このチームとして今の段階で目指すところってどこなんですか?

東海林 リーグ優勝と昇格ですね。それであとは来年の選手権で埼玉県大会で決勝ぐらいまで行けるくらいのチーム力に今のうちに上げることですかね。チームとしては。

Pivo! 監督らもそういったことも聞きましたが、最終的に目指すところって。

東海林 目指すところは1部昇格、ゆくゆくは関東リーグ入りですかね。行けたら。

Pivo! このチームのセールスポイント、アピールポイントをお願いします。

東海林 聞こえないハンデをものとしないフットサルのチーム力ですかね。そこが強みだと思っているので、先ほどのボディーランゲージじゃないですけど、声のない中でどうやってコミュニケーションとっていって、それがうまくハマるようなフットサルができるところをアピールしていきたいなと思います。

 

インタビューを行った12月22日(土)の試合は、アバンソールの一部のメンバーは、デフサッカーの合宿へ行っており、フルメンバーで挑むことができなかった。
高い目標を掲げるアバンソールがゆえの、試練なのか?
しかし、相手のSURPRISEはさらに人数が少ない。

試合は前半4分を経過したところにアバンソール#14 光野が先制点を決める。
前半の半分に差し掛かったところ、キャプテン#7 吉岡が2点目のゴール。
1分もしないうちにアバンソールゴレイロがゴールを飛び出したところSURPRISE #22 のファー詰めでボールを押し込まれ1点献上。
その後前半は再び#14 光野が1点、#7 吉岡が更に2点決めハットトリックで前半5-1で折り返す。

後半はこう着状態でお互い点を奪えず時間が過ぎていった。
ゴール前に転がってきたボールを#16 松本(寛)がファーでチョンと触れて6-1。
負けじとSURPRISE #11 も1点返すが、残り時間はあと5分。
最後にアバンソール#9 塩田が7点目を奪取してSURPRISE はなす術なく試合終了。
7-2とアバンソールが勝利を収めた。

 

Super Sports XEBIO埼玉県フットサルオープンリーグ2018 第7節
アバンソールソルド 7-2 FC SURPRISE
2018年12月22日(土) 富士見市立市民総合体育館

[得点経過]
1-0 4分 アバンソール 14 光野誠
2-0 10分 アバンソール 7 吉岡成哲
2-1 11分 SURPRISE   22 
3-1 14分 アバンソール 14  光野誠
4-1 16分 アバンソール 7 吉岡成哲
5-1 18分 アバンソール 7 吉岡成哲
6-1 33分 アバンソール 16 松本寛大
6-2 34分 SURPRISE   11 
7-2 37分 アバンソール 9 塩田知弘

 

先制点は#14 光野誠がゴール正面から。

 

ハットトリックのチームのキャプテン#7 吉岡成哲。

 

後半開始13分ファーで待ち構えてキメた#16 松本寛大。

 

#8 曽根靖裕。

 

#9 塩田知弘。

 

#12 折橋正紀。

 

#13 川村貴志。

 

#25 松本伸正。

 

まとめ◆デジタルピヴォ! なか

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