知られざる夕刊フジ・久保武司記者の素顔的な
老舗の夕刊紙、夕刊フジが休刊となる2025年1月31日まであと3カ月になってしまいました。
夕刊フジのサッカー担当と言えば何と言っても久保武司記者。独特な語り口で読者をクスッと笑わせたり、怒らせたり、感情を揺さぶるのが得意な方です。
いろいろなこだわりを持っていらっしゃる方で、どんな暑い日にも必ずネクタイにジャケット。記者会見で座るのは後ろのほう。質問も、最初はじっくり聞いて、最後にとどめの一撃的な一言を発します。
そう言えばヴァイッド・ハリルホジッチ監督時代、最初は久保記者が質問するとハリル監督はニコニコしていたのですが、厳しい局面で鋭い質問を飛ばしたので監督がすごく驚いた顔をしていました。それくらい、報道としての姿勢がハッキリしている方です。
で、僕は一度久保記者に注意されたことがあります。あるとき、ミックスゾーンでどうしても話を聞きたかった選手が通り過ぎてしまって、次のテレビのゾーンで立ち止まってコメントしていたのに聞き耳を立てていました。
そこにやってきた久保さんが「森さん、それはダメなんですよ」と教えてくださったのです。
まずもって、新聞記者とフリーランスは立場が違います。ですがそういうのを越えて、あえて声をかけてくださいました。人に注意するというのは勇気もいりますし、もし相手が変な反応をしたら自分も気分が悪くなると思います。それでも注意し、しかもその話し方と声のトーンが久保記者の記事のようにユーモラスな部分が含まれていて、注意された側が決して嫌にならないやり方だったのです。
そのクラスを越えて指摘してくださったことと、今後自分も真似したいと思うような語り口だったことは、本当にありがたい出来事でした。
それから書いておかなければいけないのは、久保記者は本当に現場主義の方で、日本代表は当然としても、Jリーグのいろんな会場でお会いします。「このカードって記事になるんですか?」と思うような試合まで足を運んでいらっしゃいます。だからこそシニカルな書き口もできるというものでしょう。
インターネットを見ていると久保記者の語り口に対する厳しい意見を言う人を目にしますが、そこは相手を揺さぶる久保記者の術中にハマっている感じです。それくらい独自の色を持っている久保記者ですから、夕刊フジが休刊になってもたぶん引っ張りだこでしょう。これからもずっと現場でお会いすると思います。
残念ながら夕刊フジさんとはお付き合いがありませんでした。それどころかライバル紙にときどき投稿させていただいています。でも、だからこそ久保記者のそういう一面を書き残しておけると思っています。