東本貢司のFOOTBALL Dungeon

ガルナーチョ・センセーション転じてロナウドの“愚痴”【東本貢司 この際、ユナイテッド“偏愛”宣言】

英国プレミアリーグの黎明期、まだネットが今のように普及していない時代、数少ないリソースから現地情報や知識をかき集めた世代にとって、東本貢司の独特の筆致で展開されたプレミア論は特別な存在だった。
その頃から時代も流れ、日本人選手がプレミアでプレーするのも珍しくない時代に、往年のプレミアウオッチャーの眼は何を捉えているのか。フットボールを独特の視点で捉える筆者のペーソスやユーモアはまだまだ健在。しかも、今回の新連載では、「この際」と割り切り、やや、いや、かなりのユナイテッド偏愛を隠そうともしていないのだから興味深い。
あの東本貢司が長い沈黙を破りお届けするプレミア論の不定期連載の第3回。さて、今回はいったい誰が俎上に上がるのやら!?

 

『第3回 ガルナーチョ・センセーション転じてロナウドの“愚痴”』

 

■新星現る!ガルナーチョ・センセーション!

アレハンドロ・ガルナーチョ。「ナー」にアクセント(“ガルナチョ”じゃない!)。マンチェスター・ユナイテッド期待の新星、18歳。ユナイテッドの“ワールドカップ休み”前の最終フルアム戦にて、ゲーム終了間際に疾風のごとき決勝弾をゲット。(筆者注:少し前までのユナイテッドには、まず望みようもなかった劇的な展開!)

ピッチ上・ベンチを問わず、チームメイトはこぞって狂喜乱舞、ロンドン・クレイヴンコテッジに馳せ参じたビジターファンも狂喜乱舞。さて、後刻~翌日のメディアも・・・・と思いきや、複数の先輩OB「マケーダやヤヌザイの二の舞にならなきゃいいが」とか、監督テン・ハフの「これから、特にこのワールドカップ“休暇”中の心身のケアや過ごし方が肝心、よ~く肝に銘じさせようぞ」などなど、要するに、ぐっと我慢の冷めた(実は、アッツい)目で、そう、めったにない虎の子中のトラの子扱い。さもありなん。

ところが一夜明けて、今度は“ほんまもんの冷水”、いやもっとタチの悪い、イジも悪い、まさに舌打ちしたくなるような“冷や水攻撃”が降りかかってきたのデス。

 

■37歳成人男子の“あられもない反逆”

クリスティアーノ・ロナウド。本当なら「ロナルド」(この点についてはいずれまた機会を得て触れる)。今更説明は不要と思う(前回は彼の話に終始したんだし)・・・・が、少々補足しよう。テン・ハフはヨーロッパカップ戦後の先発フル起用を予定していた。なぜなら、サンチョとアントニーが体調不良などで使えず、マーシァルも故障明けで不安先行。にもかかわらず、クリスは「原因不明・不詳」の「病気欠場」。なんだこれ、計算狂っちゃうなぁ・・・・と首脳陣のため息吐息。しかも、それが2試合連続で?

つまり、もう(ワールドカップ明けまでの)12月第1週まで・・・・だったはずなのに、ホントよせばいいのにおよそ耳を疑うような内容の「インタヴュー録映像(の予告とサワリ)」が、おそらく故意のリークによるものだと思われるが、メディアをヒラヒラと我が物顔で席巻してしまったのデス。

正直言って、言葉にするのもおぞましいその中身。仮に、たとえ事実のひとかけらでも含まれていようと、この微妙な時期、この状況下、この“好ましからざる”あれやこれやの積み重ねのあとで、はたして口にしていいことだと思ったのか・・・・37歳になった億万長者の分別ある男子たるものが、まさか判断がつかなかったとでもいうのだろうか?

「ずっとこのクラブには、わたしを追い出そうとしている人々がいるのを感じていた」

「何人かチームメイトらから良く思われていないらしいのもわかっている」

「ファーガソン勇退以来、(このクラブには)何の進歩も見えない。ファーギー自身(覇権奪回には)ほど遠いと言っている」

「アンフィールド(のファン)でさえそうしてくれたのに、クラブはわたしの(生後まもなく亡くなった)娘の件でまったく共感らしいものを示そうとしなかった」

「ラルフ・ラングニックってどこの誰なんだ? 聞いたこともない」

「テン・ハフには敬意を払ってもらってない。そんな人に敬意は払えない」

「ウェイン・ルーニーがわたしに苦言を呈したとか? たぶん、自分はもう引退して、わたしの方はまだ世界のトップクラスでプレーしているから(羨ましいん)だろう」

 

■クリスの“里帰り”は仕組まれていた?

・・・・たぶん、彼はもう帰ってくるつもりもないのだろう、クラブに対して(まさかこんな言い方をする自分を許すはずもないから)事実上の決別のつもりなのだろう・・・・か?

ファーギーと話をした? このクラブの“悲しむべき実態と将来”について? そのクラブのれっきとした主要プレーイングスタッフのひとりと? 本当か?

筆者、実はおよそ2年前から、どうにも捨てきれないままでいる“疑惑”がある。

クリスの「ユヴェントス退団濃厚」が「確実」に変わった頃のこと。ウワサに毛も生えないレベルの雑音が静かに漏れ始める中で、突然「ペップ、ロナウド獲得に色気」の報。そしてほぼ時を措かず「ファーガソン、急遽愛弟子と直談判?」。

かくて、ファーギーじきじきのお声掛かりの形をもって、「クリスティアーノ・ロナウドの電撃里帰り」は実現した。

そこで「疑惑」の正体とは・・・・はたして、グアルディオラは、本気でクリスを獲りたかったのか。ひょっとして、これはペップが仕掛けた「どっちに転んでも損はしない」、巧妙な誘導戦術だった可能性は・・・・ないと言い切れるだろうか? ファーガソンは「わかっていてその手に乗った」のか、それとも、つい“感情的・郷愁的”になってしまって?

もうこれ以上は言うまい。まだこの先何がどうなるのかも未定、わからない。ただ、少なくとも「八方無事何事もなく」とはいきそうにない。それが、どうにも悔しい。

腹立ちまぎれに(?)、その苛立ちのようなものをぶつけるスケープゴート、いや違うな、騒動の真の仕掛人(に違いない)探しをここでさせてもうおう。

その人物の名こそ、このスキャンダラスなインタヴューを行い、おそらくロナウドに掛け合って申し込んだ張本人。知る人ぞ知る“自称”ジャーナリスト・TV司会者・作家にして、この種のゴシップにかけては当代一流の仕掛け人、ピアース・モーガン!

 

■ロナウド、まさかのアーセナル移籍?

ひょっとしてご存じの方も多いはず? そう、オプラ・ウィンフリーとメーガン王大子妃の対談インタヴュー映像を仕組んだものの、あれこれの「事実誤認等」でメーガン妃から訴えられ、英王室にも蛇蝎のごとく毛嫌いされるネタを提供した、あの“懲りない”ヤツ、である(むろん、本人は痛くもかゆくもないらしい)。

よって、このロナウド・インタヴュー録にも当然「かなりのミソ」がつけられている疑いでほぼ真っ黒、というのが大方の見方。何がウソで、何がホノメカシで、何がイキスギなのか、わかったものじゃない、というわけだが、仮にモーガンの罪状が「いつものタチの悪さ」で実際にはうやむやにされるとしても、クリスの“爆弾(発言)”は当然後を引く。今は12月以降の進展を見守るしかない。

しかし、すべての元凶は、ねえクリス、それって実は、仲間や上司たちの疑心暗鬼でも何でもないはずだよね。そう、君の、“あの頃”とは比べ物にならない体のキレの悪さと、隠しようもない決定力の衰え・・・・まずはそれを自覚するのが先だと思うんだが?

まずは、何はともあれ、ときびり将来有望な後輩(ガルナーチョ)に祝福の言葉と、ならではのアドバイスなど贈ってみてはどうか。そして“再起”について熟考してみる。

蛇足ながら、モーガンについてもう少々。この男、言うに事欠いて「ロナウドが(1月にユナイテッドを出て)アーセナルに来てくれれば、ガナーズ悲願のプレミアタイトル奪回も夢じゃなくなる。是非、そう願いたいね」とか宣っているらしい。すでにおわかりと思うが、ピアース・モーガンが長年の熱烈なアーセナルファンなことはかなり有名なのだ。

もっとも、かつてのアーセナルの守護神、ボブ・ウィルソンはモーガンを評して「横柄で小うるさい○○野郎」とこきおろしているし、モーガンにケチをつけられたアーロン・ラムジーは握手を求めてきたモーガンをきっぱりと拒否、無視を貫いた。それにモーガンは「ふ~ん、何様のつもりかね」と口をとがらせたとか。

なお、モーガンがアーセン・ヴェンゲル監督交代論を幾度となく繰り返したのは有名な話。そんな手合いも皆無ではあるまいが、「ガナーズ命のモーガン」の方にはどう考えてもそれなりにファンがいるとは言えないようだ。

 

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