サッカーの羅針盤

【無料公開】[飯尾篤史&神谷正明&河治良幸]沖縄キャンプから語り合うJ1開幕展望①浦和&川崎編

【2月10日に沖縄にて対談】

河治 3人ともアジアカップの取材から帰国して、すぐ沖縄に入り、5日間ぐらい取材して来ました。僕と飯尾さんは浦和、ガンバ、FC東京、川崎、札幌と回り、飯尾さんは選手のインタビュー取材などある中で、自分は名古屋のトレーニングマッチも観てきました。途中、大雨に降られちゃいましたけど。神谷さんは金武町で浦和を継続的に取材していて札幌も観て、浦和との入れ替わりで金武町に来る神戸の取材もするそうですが、そのあたりのクラブに関して二人の見解を聞きながら、他に気になるクラブも聞いて行きたいと思います。

飯尾 浦和は好印象ですけどね。Aチームは3ー5ー2のトリプルボランチが定まってるし、メンバーも上積み、ACLを戦うための層もあるし、ハイプレスなど基本やることに迷いがない。で、練習試合でハイプレスをかいくぐられてカウンターでやられたのはご愛嬌というか、本番になったらリスク管理もできると思うので。マウリシオがまだまだですけどブラジル人は本番で締まるから。それでも締まらなければ鈴木大輔も阿部勇樹もいるので、浦和強いなと。前線の健勇と興梠、ナバウト、でファブリシオも戻ってきたらどうなっちゃうのかなと。

河治 浦和はほんとJ1だけに集中したら優勝を川崎と争うぐらいなんだけど、やっぱりACLの思いが強くて、今回も補強もACLを見込んだ補強だから、例えば鈴木大輔がACLメインになるのかリーグになるのか。レギュラークラスが1.5人分ぐらい、プラス伸びしろのあるBチームの選手で構成されているので、ディフェンスラインはスタートの3人が決まったとしても、そこに入れなかった選手も十分に戦える。そこをACLにどう分けて行くのかなと。もしかしたらリーグ戦でサブでもACLで主力という選手が出てくるかもしれない。

飯尾 この前、河治さんが質問した時にオリヴェイラがまずは(でトルツメ)使い分けないと言ってたけど、全然ターンオーバーはできるメンバーですよね。浦和ウォッチャーの神谷さんはどうですか?僕ら甘いですかね(笑)

神谷 いやいやそんなことはないですよ。

飯尾 毎年裏切られてる神谷さんなりの意見をお願いします(笑)

神谷 練習試合でまともな90分を一度もやってない不安はあるかもしれないですけど、オリヴェイラさんのサッカーは浦和の一時代を作ったミシャさんみたいな細かいコンビネーションが必要じゃないのは鹿島時代から分かっていて、どちらかと言えばフィジカルコンディションが重要だと思います。今回のキャンプも二次キャンプで砂浜を使ったかなり負荷のかかるトレーニングをしたりとか、どちらかというとフィジカルコンディションを上げるための練習をやっていたし、やるサッカーを考えても特に不安はないかなと思います。大きなけが人がキャンプから出ていないのも良いかなと。

天皇杯の決勝で、武藤選手と青木選手が普段なら出られないような状況だけど、無理させた反動で別メニューが続いていたのがマイナス材料ではありますけど、その離脱のところにちょうど杉本選手、エヴェルトン選手が入ったという意味でも、大きな問題になりそうにないというか。特に杉本選手が能力高いのは浦和に来る前から知られてますし、浦和の選手も「速いし高いしうまいし、なんでもできる」と言ってました。キャンプはイメージ通りに過ごせたんじゃないでしょうか。

河治 アジアを戦いながらということではどうですか?

神谷 選手層という意味でもある程度は揃ってるかなと。やることはそんなに難しくないので。

飯尾 アンカーはどうですか?

神谷 アンカーは柴戸選手も青木選手もいますし、本来はもう一つ高いポジションの選手のようですがエヴェルトン選手もできます。不安は右サイドのところですかね。橋岡選手がU-20で引っ張られた時は宇賀神選手を右に回して、左に山中亮輔選手を起用する形で乗り切れますが、その時にどっちかが怪我しちゃうと、ウィングバックが本職ではない森脇選手を使わざるを得ないとかになってしまうので、そこはちょっと不安材料ではありますけど。

河治 けが人なくいけるかというのは。70試合戦えるチームと言ってますけど。

飯尾 オリヴェイラ監督はもともとフィジカルコーチだったから、その辺のけが人を出さず戦える体づくりには長けているかもしれない。

神谷 「練習試合は勝っても勝ち点3もらえるわけじゃない」から練習試合は組まなかったと言ってましたけど、本心は故障者が出ることを嫌がったと聞いています。練習試合でJ1のチームとやると互いのインテンシティーが高くなってけが人が出やすくなる、1個カテゴリーを落としても相手が気合い入って同じくインテンシティーが上がりすぎるのでさらにもう1つカテゴリーを下げたところの相手とやる、それも90分はやらないという形にしたみたいなので、かなり選手の怪我、コンディションは気をつかってる感じですね。

飯尾 これがオリヴェイラじゃなく新しい外国人監督なら選手たちも疑心暗鬼になってるかもしれないけど、もうオリヴェイラさんだから鹿島で三連覇した人だから任せて問題ないよね、といった、いい意味での安心感というか、まあ大丈夫だろうなと。

河治 ACLも戦った経験がありますからね。でもACLがある年はより難しくなるとオリヴェイラは言っていたから、しかもブリーラムからの帰りとかにどうするかとかが1つ焦点になりそうだということで。その最大のライバルになりそうな川崎はどうですか。

飯尾 やっぱり浦和とともに抜けてますよね。川崎が印象的だったのはレアンドロ・ダミアンもそうだけど、山村和也、それからセンターバックのジェジエウが190何センチあるんですよ。それから去年の途中から入って全然使われなかったけどボランチのカイオ・セーザル。例えばガンバとのトレーニングマッチの3本目、4本目を見てたらそういうサイズの大きな選手がいて、風間さんから鬼木さんになった当初は風間さんのスタイルが薄れることに恐怖心というか、風間さんのサッカーが知らない選手が増えて、風間スタイルが薄れるんじゃないかという危惧があった。でもこの時点で鬼木さんなりのアプローチというか、ACLに足りない高さとか加えても、もうスタイルが薄れるとかバタバタするようなチームじゃないから、二連覇の自信もそうだし、懐が大きくなったかなと。だからACL獲るために強くて高い選手を足しに来たと。それで決して機能しないチームではないと。

河治 結局ダミアンはもちろんトップのトップですけどジェジエウにしてもマギーニョにしてもブラジルで一流クラスで、水準的にJリーグの他のクラブと比べてもブラジル人のランクが一段高い選手たちを獲れるのはビッグクラブまで行かないけど、プチビッグクラブぐらいまで来てるのかなと。DAZNマネーも欧州のトップクラスを獲るには足りないけど、効いて来てる気はします。マギーニョも本当にいい選手なので。彼らが加わることで強さ、速さ、高さもあるけど、技術面で川崎のスタイルに付いていけないことはないかなと。ダミアンも足下で捌かせてもそれなりにやりますしね。あとは川崎のリズムにアジャストするだけで、そこは中村憲剛や小林悠がうまく引き出しているので。ACLもそうですけど、Jリーグでも相手に引かれたり川崎対策をされた時に有効かなと。

ガンバもトレーニングマッチはそのままぶつけて来て川崎の良さを出させちゃってましたけど、ツネさんも公式戦に向けて考えて行かないといけないと言っていたので。そこでダミアンの高さも使っていけるし川崎のスタイルも出せるということで、隙が無くなって来たなと。ただ浦和のように底上げされてるチームもあるので三連覇はそう簡単ではないでしょうけどね。

→ガンバ大阪、FC東京、コンサドーレ札幌、名古屋グランパス&気になるクラブ編に続く

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