WE Love 女子サッカーマガジン

アルビレックス新潟レディース 初タイトルとの距離は紙一重 「メグ(上尾野辺)にタイトルを」の意味するところ

皇后杯獲得まであと一歩。アルビレックス新潟レディース一筋・上尾野辺めぐみ選手の立場は変化した

川村優理選手はチーム結成当初のアルビレックス新潟レディースでプレーしているしている選手です。移籍で新潟を離れたこともありますが、このチームに愛着があります。中学生のときから「将来のなでしこジャパン(日本女子代表)候補」としてテレビで取り上げられ、黎明期・アルビレックス新潟レディース成長の象徴でもありました。

「自分が現役でやってる以上は、このチームにタイトルをという思いも強いですし(上尾野辺)メグと一緒に、ずっとプレーしてきたので……。」

いつもクールに取材対応してくれる川村選手が、ここで言葉を詰まらせました。目に光るものが見えました。

「メグにタイトルをとらせてあげたかった……という気持ちはすごい大きいと思います。」

三菱重工浦和レッズレディースが2度目の優勝を達成

皇后杯 JFA 第46回全日本女子サッカー選手権大会はPK戦にまでもつれ込む激闘の末、三菱重工浦和レッズレディースが2度目の優勝を達成しました。アルビレックス新潟レディースは過去に4度の準優勝。常に悔しい思いを胸に大会を終えてきました。今回が5度目の準優勝です。

惜しくもPK戦で初タイトルを逃したアルビレックス新潟レディース Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410 TOP写真も

1年前の決勝と何が違うのか?

202324 WEリーグカップも決勝で敗れました。今回は、そのとそのときと同じPK戦での敗戦。果たして、アルビレックス新潟レディースとタイトルとの距離は1年間で縮まったのでしょうか。今回のWE Love 女子サッカーマガジンは「『堅守柔攻』の実現」「上尾野辺めぐみ選手とチームメイトの関係」の両面から考えます。

タイトルは手の届くところにはある

川村選手は、こみ上げる悔しさを抑え込みながら冷静に試合を振り返りました。

「タイトルは手の届くところにはあると思います。レッズさんはすごく良いチームで強いけれど自分たちもチャンスをつくれた。身体を張って最後まで守れた。自分たちの長所も出していたと思うので、もう少し。やはり何かが足りないのかなと思いますね。」

真っ向勝負の90分間+延長戦でした。両チームとも簡単に引くことなく、相手ボールを奪うために果敢な守備を見せました。その圧力をものともせず、前進する意思が感じられる攻撃の連続にスタンドが湧きました。

スタメン出場となった川村優理選手 Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

5度目の準優勝となった上尾野辺めぐみ選手

背番号10を背負う上尾野辺めぐみ選手は新潟で多くのファン・サポーターに愛され続けてきた選手です。「手に届きそうなところまで来てる分、なおさら悔しい気持ちがある」と言います。

「自分たちが点をとれるチャンスも何度かありました。どちらが1点をとるかという拮抗した試合になったと思います。

自分たちに流れが来たときに、どれだけ得点をとれるかが、今の三強と比べて足りないところと痛感しました。

本当にちょっとのところなのですが……自分がシルバーコレクターで5個目(笑)何も言えないというか、チャレンジするしかないというところですね。」

大事な場面で投入された上尾野辺めぐみ選手 Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

「堅守柔攻」のサッカーを印象付けたアルビレックス新潟レディース

自分たちの形を本当にバチバチに出せた 

主将の川澄奈穂美選手は、すっきりとした表情でミックスゾーンに現れ取材に対応しました。

「ある程度は押し込まれる時間もあるという点も含め、自分たちが準備してきたもの、 自分たちの形を本当にバチバチに出せたという感じはあります。ですから、それに対する後悔みたいなものはないです。」

例えば、前線の滝川結女選手と山本結菜選手は、三菱重工浦和レッズレディースの守備陣形を見ながらお互いの立ち位置を動かしチャンスをうかがいました。三菱重工浦和レッズレディースの最終ラインを見ながら山本選手は右のポジションに流れ、中央に残った滝川選手の先制点が生まれました。1年前には考えられないレベルで状況を踏まえたサッカーを展開することができるようになっています。

「(相手の状況への柔軟な対応が)あまり上手くいっていない時期も正直あったのですが、本当にみんなスムーズにできるようになったと思います。チームの成長の証だと思います。」

それが、川澄選手が後悔しない理由でしょう。

120分間のフル出場となった川澄奈穂美選手 Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

立ち上がりは劣勢も、ポジションを動かしながら前半のうちに盛り返す

立ち上がりは三菱重工浦和レッズレディースが攻勢をかけアルビレックス新潟レディース陣内に押し込み、高橋はな選手が最初の決定機を確実に得点に結びつけました。しかし、アルビレックス新潟レディースは、そこから力強さを見せました。いつも自己評価の厳しい園田瑞貴選手が戦い方自体には手応えを感じていました。

「最初はばたつくこともあったけれど、時間が経つにつれ、すごく良い形で守れたし、攻撃もできた手応えはありました。」

対面する相手の動きを見て素早く判断する園田瑞貴選手 Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

滝川選手も、前半の途中で試合の流れを奪い返したことが、90分間の激戦と延長戦のギリギリの戦いにつながったと考えています。

「前半の途中から延長戦の最後まで素晴らしい守備、攻撃ができました。自分たちでピッチで、しっかりと修正できたことが大事なポイントと思います。」

滝川結女選手の同点弾について楠瀬直木監督(浦和)は「今ベストである石川璃音選手と後藤若葉選手が対応してあのシュートを決められたら相手を褒めるしかありません」と脱帽 Photo by Ke Twitter→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

守備も柔軟に攻撃も柔軟にやるべきことができたアルビレックス新潟レディース

試合後の監督会見で橋川和晃監督に試合中の選手の対応力が素晴らしかったことについて質問すると「私も見とれていたのでよくわかってない」という「本気半分、半分冗談」の答えが返ってきました。この会見では、終始、選手を褒め続けました。

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