田中陽子選手加入で注目 レノファ山口FCレディース なでしこリーグへ再挑戦 伊藤さくら選手、赤嶺将太監督が語る現在地と山口県の未来
田中陽子選手の加入はレノファ山口FCレディースと山口県の女子サッカーに何をもたらすのか
2024年10月2日、レノファ山口FCレディースは2024プレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会の全ての試合を終えました。レノファ山口FCレディースはVONDS市原FCレディースと引き分け、残念ながら今回も、なでしこリーグ昇格を果たすことはできませんでした。
入替戦予選大会を通過したVONDS市原FCレディースは、11月に行われたホーム&アウェイの入れ替え戦で勝利し、念願のなでしこリーグ昇格を決めました。一方、レノファ山口FCレディースは、第23回 2024中国女子サッカーリーグ後期を戦い続け、勝ち点差3の2位に終わりました。

全国的に注目を集めるレノファ山口FCレディース 写真提供:レノファ山口FCレディース TOP写真も
元なでしこジャパン・田中陽子選手の加入で注目が集まる
年末も押し迫った12月に、山口県発信のニュースが全国の女子サッカー関係者を驚かせました。レノファ山口FCレディースが、田中陽子選手の加入を発表したのです。地域リーグの新戦力としては異例のビッグネームです。田中選手は、なでしこジャパン(日本女子代表)でのプレー経験もあり、スペインのスポルティング・ウエルバやラージョ・バジェカーノでもプレーしていました。2022年からプレーした前所属の仁川現代製鉄レッドエンジェルズはWKリーグ11連覇を達成した強豪です。
さらには12月26日に韓国女子代表のイ ジョンウン選手(華川KSPO)の加入も発表。12月27日には宮﨑珠里選手(ヴィアマテラス宮崎)の加入も発表しレノファ山口FCレディースの本気が伝わってきました。
今回はレノファ山口FCレディースの現在地を伊藤さくら選手と赤嶺将太監督にお聞きしお伝えします。Jクラブのレディースチームでプレーする意味を探ります。そして、2025年は、山口県の女子サッカーにとって、大きな一歩となるかもしれません。

伊藤さくら選手 写真提供:レノファ山口FCレディース
力の差を感じてきたプレナスなでしこリーグ2部入替戦予選大会
赤嶺— 2016年になでしこリーグ昇格を目指すと表明し、ちょうど今年で節目の10年目となります。特徴として山口県内出身選手が多いことが挙げられます。チームワーク良く、サッカーに真摯に向き合っているチームです。
伊藤— 私はレノファ山口FCの前身のレオーネ山口出身です。大学を卒業して地元に就職したタイミングで声をかけていただきました。山口県の女子サッカーを盛り上げられたらと思い、このチームでサッカーをしています。

赤嶺将太監督 写真提供:レノファ山口FCレディース
もっと自分に矢印を向けて個の能力を上げなければならない
赤嶺— 過去に参加した2回のなでしこリーグ2部入替戦予選大会は力の差をすごく感じました。どれも守備に追われるずっと苦しい試合でした。昨年は、しっかりと勝利を挙げることもできました。厳しい敗戦の試合でも対等に戦える時間帯はありました。その意味では手応えは感じました。それでも、突破できるかどうかの差は大きかった。チームの目指すところを改めて痛感した大会になりました。
僕らは毎年「今年こそ」と思っているのですが、他のチームもそう思っている。追い越さなければいけないのですが、置いていかれたと感じるところもありました。今年は今まで以上に、もっと準備しなければいけません。
伊藤— 結果を見て「惜しかったね」と声をかけていただくことが多かったです。今までと比べたら、自分たちが攻撃できる時間もあり「ちょっとなでしこリーグに近づけたかな」と感じる部分はありました。でもピッチでは「まだまだ自分たちが越えなければいけない壁が高い」というか「もっと力をつけなければいけない」と痛感させられました。
選手に、ある程度の技術、能力があってこそ、チーム力が上がると思うので、一人ひとりがもっと自分に矢印を向けて個の能力を上げることで、チームが強くなれると思います。やはりVONDS市原FCレディースは選手層が厚い。出場する選手が代わっても、質の変わらないゲームができる。そうした面で、まだまだ、私たちには足りないところがあるという印象を持っています。

なでしこリーグへの昇格を目指すレノファ山口FCレディース 写真提供:レノファ山口FCレディース
Jクラブの名を背負うと責任を感じるが得られるアドバンテージがある
伊藤— 実は、大学を卒業したらサッカーを辞めようと区切りをつけていました。大学4年生になると、日体大FIELDS横浜(現・日体大SMG横浜)のメンバーとしてなでしこリーグ1部の試合出場するようになりましたが、浦和レッズレディース(現・三菱重工浦和レッズレディース)や日テレ・ベレーザ(現・日テレ・東京ヴェルディベレーザ)と試合をするとレベルの差を感じました。戦えるけれども、必死に、ただ食らいついて戦うだけ。私がトップレベルでずっとプレーし続けるのは難しいと体感したのです。学生生活の最後にインカレ(第28回全日本大学女子サッカー選手権大会)で優勝してやり切りました。
一度はトップレベルから退きましたが、レノファ山口FCレディースをなでしこリーグに上げたいという思いで加入しました。大学時代に上のリーグでやる楽しさを経験していますし、自分がお世話になったクラブを上げて恩返しをしたいと思い、目標に向かって頑張っています。
—Jクラブのレディースチームでプレーすることで得られるメリットや背負う責任を感じる時はありますか?
伊藤— もちろん、レノファ山口FCの名を背負う責任もありますけれども、レノファの名を背負って戦えることがすごく嬉しいです。先行する男子のチームがあることで地域に密着していてレディースも応援してもらいやすいです。男女のチームが連携し地域を盛り上げていくメリットがあると感じています。
街中でも「頑張ってね」と言ってくださる方とお会いします。「元気をもらった」「サッカーをしたいと思った」「伊藤選手みたいになりたい」と言ってもらうと、また頑張れます。

スタンドをオレンジに染めるサポーター 写真提供:レノファ山口FCレディース
赤嶺— 僕ら指導者も目指すプレーを伝える際に、同じレノファ山口FCの選手のプレーは、すごく参考として示しやすいと思います。
レノファ山口FCのレディースチームだからメディアに取り上げられることがあります。例えば『キックオフ!山口(山口朝日放送)』では、毎週、試合の結果を伝えてもらっています。いろいろなメリットを感じますし、活動のしやすさみたいなものも感じます。クラブは女子も男子も偏ることなく現場をサポートしているので、私は男子のチームと大きく変わらない責任を背負っているつもりです。

レノファ山口FCレディースはJクラブの一員として地域の皆さんとの交流にも積極的 写真提供:レノファ山口FCレディース
初の女子プロ選手を迎えるレノファ山口FCレディースに求められること
—田中陽子選手の加入は山口県内だけではなく全国的なニュースとなりました。可能な範囲で経緯を教えてください。
赤嶺— これまで、田中選手はオフに山口へ帰ってくる際に、何度か練習参加していました。何年か前に一度、こちらから(加入に関して)コンタクトをとったのですが、所属チームとの契約期間の関係でご縁がありませんでした。
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