WE Love 女子サッカーマガジン

2025年変わるWEリーグ なぜ8月2週開幕になるのか チーム(クラブ)本位の女子サッカーへ

ファン・サポーターの声はWEリーグに届いていた

WEリーグは2024年9月26日より新体制に移行。Jリーグチェアマンを兼ねる野々村芳和さんがチェアに、日本サッカー協会の会長の宮本恒靖さんが副理事長に就任しました。これは、人材、システム、ノウハウ、財務等……日本のサッカー界が一丸となってWEリーグを支える責任体制の現れと見られていました。そこに、組織の要となる専務理事の役職が復活し安達健さんが就任。また、新設された事務総長には黒田卓志さんが就任し、陣頭指揮を執っています。12月に入るとこれまでとは違うリーグ運営の考え方が具体的に見えてきました。2025年に入り改革が加速しそうです。

国立競技場に2万1524人のファン・サポーターを集めた2024−25 WEリーグ クラシエカップ決勝 Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410 TOP画像も

抜本的な組織変更で改革を急ぐ

WEリーグは大規模な組織変更を行っています。安達・黒田体制が全体を統括して計画立案と実行を担い、それを実行委員会(クラブの代表取締役または取締役)と理事会が検証・承認・決議する体制になりました。以前の、業務執行理事3名がそれぞれ独立した部署の責任者となる縦割りではなく、あらゆる業務を連携させながら迅速に意思決定できる組織としたのです。

黒田卓志事務総長と安達健専務理事

位置付けが変わった社会連携(社会事業)

特に注目したいのは社会連携の位置付けです。これまでのWEリーグは「サッカー事業」と「社会事業」を二本柱とし組織的にも予算的にも社会連携(社会事業)を大きく扱ってきました。しかし、今回の組織変更で社会連携は事業マーケティング部の中の「プロモーション・社会連携チーム」に組み込まれました。プロモーションと連携してWE ACTION DAY等を進めていきます。

佐伯夕利子さんを講師に招き「多様性」をテーマにしたWE ACTION DAYを実施した三菱重工浦和レッズレディース

WEリーグとなでしこリーグの一体化を白紙に戻した人事 

組織変更に伴い、スタッフの異動もありました。業務推進のスピードアップを図っています。旧体制はWEリーグとなでしこリーグの一体化を図っており事務局スタッフの垣根をなくして双方職員の多くが両リーグの業務に従事していましたが、これを11月末で廃止。運営体制を分離し元に戻りました。そして、日本サッカー協会とJリーグより専門知識と経験を有したスタッフがWEリーグに着任します。

「みんなが主人公になるためにプレーする。」WEリーグ  Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

急ピッチで進んだカレンダー改革

新体制は、まずカレンダー改革に着手しました。Jリーグの競技運営に長く携わってきた黒田事務総長は、改革の重要性を強調します。

「よりWEリーグの魅力価値を上げていくために競技日程は非常に重要です。ここを改革していくことによって、フットボールはもちろんですがマーケティングの領域にも効果が期待できます。」

栄冠を掴んだ選手に深々と頭を下げる野々村芳和チェア Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

リーグ戦開催期間

開幕 第1 202589() or 10() or 11(月・祝)
中断 20251229()2026213()
再開 2026214() or 15()
閉幕 第22 2026516() or 17()

キッチンカーの充実で一躍注目を集める存在となったちふれASエルフェン埼玉のホームゲーム

リーグカップ戦開催期間

グループステージ

1 20251025()or 26()
~第6 2026321()or 22()
4
チームずつ3グループによるHA方式2回戦制
AWCL(AFC女子チャンピオンズリーグ)出場によるシードはありません。

ノックアウトステージ

準決勝・・・HA方式による2回戦制
決勝・・・セントラル方式による1回戦制
準決勝・・・第1 2026411()or 12()
2 2026418()or 19()
決勝・・・2026429(水・祝)

胸を張って国立競技場に入場する選手たち Photo by Ke X→@ke780kx5 instagram→@ke_photo410

開幕を早めることに加えウィンターブレイクを1.5ヶ月に短縮し、活動期間は7ヶ月から8.5ヶ月に伸びました。これにより平日開催がなくなり過密日程を回避。また、極端に入場者数の少ない試合の発生を防止し、チーム(クラブ)の収益確保を支援します。

入場者数はまだ少ないが着実にファン・サポーターのベースを固めつつあるWEリーグ

明確に提示されたカレンダー改革の意義

新体制発足直後に着手した理由は、競技運営体制の正常化が重要な課題だったこと、そして、日本サッカー協会、Jリーグとの連携実現です。なでしこジャパン(日本女子代表)の活動や皇后杯 JFA全日本女子サッカー選手権大会、さらにはJリーグのカレンダーと調整をする必要があったのです。「日本代表年間カレンダー」は日本サッカー協会から12月16日に発表されています。例年、この時期の発表なので、WEリーグは日本サッカー協会の動きに合わせ、急ピッチで作業を進めたことになります。また、例年よりも早く対戦カードを発表したJリーグの動きとも連動しました。

「選手会の皆さんにもご意見を聞いています。選手から見てどのようなカレンダーが望ましいのか、現状のカレンダーの課題点をヒアリングさせていただきました。チーム(クラブ)とは強化担当、運営担当会議を中心に検討を進め、10月時点で一旦は検討事項として実行委員会と理事会に付議しています。

さまざまな意見をもらいながら、11月に、また同じようにステークホルダーの皆さんと協議をし、最終的に12月にもJFA、チーム(クラブ)の強化担当と話をしました。また、選手会にも直接それまでの議論をフィードバックし、ご意見をいただいて、実行委員会、理事会で決議をしたという流れになります。」

2月の試合については降雪地のチーム(クラブ)はアウェイゲームとし、できるだけ影響を小さくしています。

1月は雪に悩まされるアルビレックス新潟レディースのトレーニング

長崎開催への不満の声を受け止め検討した WEリーグ クラシエカップの開催方式

202526 WEリーグ クラシエカップ準決勝の開催日と開催場所の見直しについては、今回の長崎開催日以前から検討が進んでいたようです。黒田事務総長の説明から、チーム(クラブ)やファン・サポーターから噴出した不満の声を受け止めていることが感じられます。

「今シーズンは長崎でのセントラル方式で1日で試合を行いましたけども、来シーズンはホーム・アンド・アウェイ方式による2回戦制とさせていただきます。なぜこのようにしたかというと、まずフットボールの面においてです。ファイナリストを決めるための準決勝は非常に重要な戦いです。それぞれのチーム(クラブ)がホームのサポーターの声援をはじめとする環境の中でしっかりと力を出して、それぞれのホームで1試合ずつやるのがフットボール的に良いだろうという考えです。」 

黒田事務総長は、まず「フットボールとして何がベストなのか」を理由の第一に挙げました。

「それからもう一つはマーケティング面です。ホームゲームを開催するということはチーム(クラブ)にとって収益を得る重要な機会となります。たった1試合しか増えませんがマーケティング機会を設けようという考えです。そして、このような緊張感ある試合を増やしていこうということもございます。」

もちろん、準決勝を戦うチーム(クラブ)のホームゲームとなっても、その試合の収支を黒字にしなければチーム(クラブ)の利益とはなりませんが、それでも、そのチャンスを提供しようという新体制のスタンスが伝わる発言です。

子どもたちの歓声がこだまするノジマステラ神奈川相模原のホームゲーム

やむを得ず8月第2週開幕となった根拠は欧州5大リーグのデータ

活動期間について、選手やファン・サポーターから不満の声が出るとしたら、暑い8月に開幕することについてでしょう。例えば、閉幕をもう少し後ろにずらして開幕を9月にすることはできなかったのでしょうか。黒田事務総長に聞いてみると、そうした声が出ることを承知の上で、この活動期間に決定した根拠が明確にあることがわかりました。

2026年5月16日() または17日() に最終節。おそらく翌週にWEリーグアウォーズが開催されます。確かに観戦環境の悪化する梅雨入りまで、まだ少し時間があるのですが、問題は、なでしこジャパン(日本女子代表)の活動との重複でした。5月26日(月)から6月5日(木)がF I F Aインターナショナルマッチウィンドウとなっており、代表選手不在の期間がやってくるのです。

独自性を打ち出しているマイナビ仙台レディース

そのため、閉幕を遅らせることができず、週末開催のみでカレンダーを作成すると、どうしても開幕が8月になってしまうのです。実行委員会、理事会はその考えを支持しました。その根拠はJリーグのシーズン移行検討資料にありました。

「同じ暑さでも、今のJリーグの暑さとは少し意味合いが違うと思います。しっかりと暑熱対策をやれる前提で、8月の2週目開幕となりました。」

Jリーグの公開しているデータによると、秋春制の欧州5大リーグは、疲れの軽いシーズン開幕に夏を越して徐々にパフォーマンスを向上させ、シーズンを通して良いパフォーマンスを維持しています。

クオリティの維持、そして、蓄積疲労による選手の怪我を防ぐ意味で、8月開幕はやむを得ない選択かもしれません。アルビレックス新潟レディースでプレーする川澄奈穂美選手は冬の寒さは大変だとしながらも平日開催による連戦の解消を歓迎します。

「できれば連戦がない方が選手はコンディションを整えやすいです。ファン・サポーターにパフォーマンスが上がっている選手の試合を見せられる意味でも、なるべく連戦を避けた方が良いとは思いますね。」

アウェイゲームにも駆けつける熱心なサポーター

次に改革に取り組む可能性が高いチケッティング

202425 WEリーグ クラシエカップ決勝は予想を上回る2万1524人のファン・サポーターを集めました。 WEリーグからJリーグに業務委託し、JリーグID(Jリーグチケット)を活用したチケッティングをすることで、これまでにない集客施策を実現しました。また、JリーグのみならずJFA IDへも試合の開催情報を発信し集客を図りました。

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