秋春制WEリーグのウィンターブレイク短縮 2月再開案を選手・監督はどのように考えているのか 私たちは『WEリーグの基盤を作っている選手』という川澄奈穂美選手の考え
WEリーグは2025−26シーズンの開幕を8月に、ウィンターブレイクを短縮し2月再開とする方針
WEリーグは、2024年10月の新体制スタート直後から2025−26シーズンのカレンダーについて検討を進めています。11月28日のWEリーグ理事会後メディアブリーフィングにおいて2025−26シーズンの開幕を8月に、そして、ウィンターブレイクを短縮し2月再開とする方針が発表されました。
WEリーグの打ち出した方針を現場はどのように考えているのか
降雪地をホームタウンとするアルビレックス新潟レディース、AC長野パルセイロ・レディースの選手・監督、そして「暑さ対策日本一」熊谷市でホームゲームを開催するちふれASエルフェン埼玉の選手は、2025−26シーズンのカレンダー案についてどのように感じているのでしょうか?日本プロサッカー選手会(JPFA)女子支部は、どのように動いているのでしょうか。
過密日程を解消するのが新カレンダーの狙い
では、まず、現状と新カレンダー案の狙いを確認しておきましょう。
この2シーズンは平日開催が多く連戦が増加していた
今シーズンの2024−25 SOMPO WEリーグは2024年9月14日に開幕しました。ただし、2024−25 WEリーグ クラシエカップは8月31日に開幕しています。ウィンターブレイクが明けるのは2025年3月1日(土)。それを「WEリーグ8月開幕、2月再開」に変更する検討を進めています。
今シーズンは平日開催の試合が増えました。9月以降はリーグ戦とリーグ戦の間の平日にカップ戦が入り、並行して2つのコンペディションを進めたからです。現在のサッカーのトレーニングは科学的検証が進み、試合翌日と試合前日はコンディショニング中心のメニューになっています。そのため、中2日もしくは中3日で試合が開催されると、チームとして力を積み上げる戦術的なトレーニングを行える日がほとんどありません。
昨シーズンは平日開催による過密日程が話題となりました。特にアルビレックス新潟レディースは、3月16日開催された第10節以来、中3日、中3日、中2日、中2日で試合を続けました。選手の負担が重すぎました。
そうした反省を踏まえ、適切な試合間隔とすることが、あらなたカレンダー検討の狙いです。開幕を早め、ウィンターブレイクを短縮することで、原則として平日開催を廃止し中2日もしくは中3日の試合を行わないように調整します。つまり、検討の最も重要なポイントは「過密日程(連戦)と暑さ・寒さを比較した上でどちらの回避を優先するか?」という選択です。
対話を重視しているWEリーグの新体制
WEリーグの黒田卓志事務総長は現場の意見を重要視しています。各チーム(クラブ)の現場運営担当者、強化担当者、選手の意見を取り入れながら、旧体制の考え方にとらわれることなく変革していくことになりそうです。
ウィンターブレイクに関しては、強化担当者より「インターバルが2ヶ月以上も空いてしまうというところについてはもう少しやっても良いのではないか」という意見をもらっていると話しています。 「マーケティング面でも平日の夜開催は集客が難しい」「フットボールとビジネスの両面から平日開催は見直してほしい」という声が現場より上がっていることを明かしています。
過密日程を我慢するか、暑さ・寒さを我慢するか、選手の声
カレンダーの問題が議論になると「雪国軽視」「雪国切り捨て」という声が上がることがあります。選手はどのように考えているのでしょうか。
「怪我のリスクを考えると冬は避けたい」という考え
まずは安倍乃花選手(AC長野)に聞いてみました。AC長野パルセイロ・レディースは、2024年1月29日から2月8日まで、寒さから逃れるためにタイ・バンコクから車で東に1時間ほどの場所にある、ダイナミックフットボールキャンプでトレーニングキャンプを行いました。今シーズンは2024−25 WEリーグ クラシエカップで24人、2024−25 SOMPO WEリーグで18人の選手が出場しています。
「選手の疲労を考えると、水曜日開催の連戦はすごくタフでハードな日程だと思いました。でも、今シーズンはWEリーグカップがリーグ戦と並行して行われ、チーム的にはメリットがありました。チーム全体がまとまる一つの要因になりました。そこに関してはポジティブに考えています。長野はすごく寒いので、怪我のリスクを考えると冬は避けたい気持ちはありますね。」
「連戦がない方がありがたい」という考え
アルビレックス新潟レディースは全力で2024−25 WEリーグ クラシエカップ獲得に移挑んでいるチームです。18人の選手がプレーしています。2024−25 SOMPO WEリーグは21人の選手がプレーしています。
川澄奈穂美選手に聞くと、安倍選手とは異なる意見でした。やはり、チーム、個人、各々で考え方は違うため、ただ、降雪量が多いという地域特性だけが意見を決めるわけではなさそうです。
「できれば連戦がない方が選手はコンディションを整えやすいです。ファン・サポーターにパフォーマンスが上がっている選手の試合を見せられる意味でも、なるべく連戦を避けた方が良いとは思いますね。WEリーグは、まだ、Jリーグのように各チームが30人以上の選手を抱えているリーグではありません。私個人としては連戦がない方がありがたいです。
ベターなやり方をどこにするか、いろいろなことを試しながら検討されていると思ます。昨シーズンと今シーズンではカップ戦のやり方が変わりました。そこはポジティブに捉えたいです。今、私たちは『WEリーグの基盤を作っている選手』だと自覚して、出されたカレンダーを全力で戦っていきたいと考えています。」
かつて、Jリーグが立ち上げ直後の1990年代に、何度も開催フォーマットを変更して当時のベストな方法を導き出しました。今、WEリーグは「基盤を作っている」……選手はその一員であるという見解を示しました。これまでも、自らの考えをWEリーグ、日本のサッカー界に表明し続けてきた川澄選手の考えです。
「連戦になると時間が足りない」という考え
逆に、暑い地域の選手は、どのように考えているのでしょうか。ちふれASエルフェン埼玉の吉田莉胡選手に聞いてみました。ちふれASエルフェン埼玉がホームゲームを開催している熊谷市は、2018年7月23日に観測史上最高の気温41.1度を記録した「暑さ対策日本一」の街として知られています
「ハードな連戦を経験したので……どのチームも一緒だから、やっていくしかないと思って戦っていました。試合の前後はコンディションを整える軽い練習になるので課題解決をするだけでいっぱいいっぱい。新しい取り組みをするための時間はとれないですね。連戦になると時間が足りないという感じです。でも、熊谷は暑いから暑いのも嫌だな。」
自チームのことだけでなくリーグ全体の発展を願い考えている監督たち
チームを指揮する監督はどのように考えるのでしょうか。
「リーグの魅力をどのように創っていくか」橋川和晃監督(新潟L)
「この話を始めたら1時間くらいかかりますよ。」
質問すると、アルビレックス新潟レディースの橋川和晃監督は、いつものように場を和ませてから、カレンダー作りの基本の部分を話してくださいました。
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