WEリーグ 中位対戦でエキサイティングなシーン続出 ちふれASエルフェン埼玉とAC長野パルセイロ・レディースの成長を感じた前半戦折り返し(無料記事)
強度の高い守備でお互い譲らず引き分けたWEリーグ前半の最終戦
2024年12月1日、2024−25 SOMPO WEリーグは第11節、つまり一巡目の最後の対戦が熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われました。晴天に恵まれた12時キックオフ。青空に歓声がこだまする1−1の引き分けに終わり、ちふれASエルフェン埼玉は9位、AC長野パルセイロ・レディースは8位で折り返すことになりました。
迫力あるゴール前にスタンドが沸いた好ゲーム
前から強いプレッシャーをかけてボールを奪うサッカーが得意な両チームです。激しいぶつかり合いが続きました。
近い順位の相手に勝ち切れない両チーム
AC長野パルセイロ・レディースの廣瀬龍監督は、リーグ前半戦の振り返りも兼ねて、この試合で明らかになったチームの力を話しました。なかなか同順位くらいの対戦相手に勝ち切れません。
「セットプレーから失点し、主導権をとられて追いかける形になってしまいました。PKで点をとれたのですが、押し込んだときも押されたときもありました。このようなゲームを勝ち切れないのは、チームとしてまだまだ力が足りないからだと思った。」
ちふれASエルフェン埼玉の山本絵美コーチからも似たような話があります。
「上のチームには食らいつくのですが、順位が同じくらいの対戦相手に難しくなってしまうところがある。」
両者とも、選手の奮闘を称えながらも、もう一押しできなかったことを悔やみました。ただ、後半は双方がロングボールを蹴り合う単調な攻めも目につきました。
古巣対戦で同点ゴールを決めた髙橋雛選手
岡本祐花選手(AC長野)は、あまり良い状態でボールに触ることができませんでした。試合後に「勝たなければいけない試合で勝てない勝負弱さが自分たち力不足」と話しました。ただ、両チームは、強度の高い守備組織から先に整備されています。ある意味、それは相手の持ち味を消す強みの表現ができていたのかもしれません。それもあって、ゴール前で気迫のぶつかり合いが多く見られました。
ちふれASエルフェン埼玉からAC長野パルセイロ・レディースに移籍し古巣対戦となった髙橋雛選手は45分+3に同点に追いつくPKを決めました。自らがディフェンスラインの裏に抜けだし倒され獲得したチャンスでした。
「ディフェンスラインの裏が空いて、仕掛けることができるイメージを持っていました。坂井(優紀)選手から良いボールがきたのでPKを誘えたと思います。
PKは緊張していましたが、『ここで決めないといけない』思い、落ち着いて決めることができすごく嬉しかったです。」
高橋選手は、前半のうちに追いついたところに、今シーズンのAC長野パルセイロ・レディースの成長を感じます。そして、次の課題も自覚しています。
「悪い状況でも、試合を重ねるごとに立て直す力は付いていると思います。そこは自分たちの強みだと思います。点をとれたのは良かったのですが、決められるシーンで決める力がないとチームを勝たせられない。もっと力をつけたいと思います。
だんだん自信がついてきて、仕掛ける回数が多くなり手応えは感じているのですが、質の部分がまだまだなので、もっとこだわりを持たなければいけないと感じています。」
自分が得点しても勝ち点1を得ても満足できない栃谷美羽選手
ちふれASエルフェン埼玉の先制点はコーナーキックからのヘディングシュートで生まれました。決めたのは栃谷美羽選手でした。叩きつけたように見えましたが、コースを狙ったシュートでした。
「(瀬戸口)梢さんが本当に良いボールでパーにピンポイントでくれました。自分にマークがついてなかったこともあり、フリーで落ち着いてコースに決めることができました。」
AC長野パルセイロ・レディースのゴールキーパー・伊藤有里彩選手はハイボールに強く、安定したキャッチングで、ちふれASエルフェン埼玉のチャンスの芽を摘み続けました。それでも、この一撃だけは止めることができませんでした。
しかし、栃谷選手の表情には、得点の喜びよりも勝てる試合を落とした反省の色の方が濃く現れていました。
「前半も後半も自分たちにチャンスが多く、決め切れなかった部分がすごく課題に思っています。そこを決め切れたら、1失点したとしても勝てた試合です。」
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どのチームも「確実に勝てる」と思える試合が減少した2024−25 SOMPO WEリーグ
90分間を通して停滞する時間は短く、決定機は多く、スタンドは湧きました。球際の競り合いには、終始、迫力がありました。できることは、たくさん披露できたはず。しかし、それでも、両チームとも、試合内容に満足できなかったところに成長を感じます。
WEリーグのレベルは着実に向上しています。
(2024年12月1日 石井和裕)
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