目指すサッカーで戦い抜いたサンフレッチェ広島レジーナが準決勝進出 日テレ・東京ヴェルディベレーザは奮闘するも力及ばず 2024−25 WEリーグ クラシエカップ(無料記事)
引き分けだがサンフレッチェ広島レジーナの強さを見せつけた90分間
引き分け以上で準決勝に進出できるサンフレッチェ広島レジーナ、勝利が必要な日テレ・東京ヴェルディベレーザの激突。2024−25 WEリーグ クラシエカップ グループA 第6節(最終節)は2024年11月6日に味の素フィールド西が丘で開催されました。
いつも以上に気合い十分だった日テレ・東京ヴェルディベレーザだが
日テレ・東京ヴェルディベレーザは必勝態勢を敷いてU-17日本女子代表の青木夕菜選手と眞城美春選手をスタメン起用しました。怪我でなでしこジャパン(日本女子代表)を辞退していた土方麻椰選手もベンチスタート。
試合前に選手紹介のアナウンスが大音量で流れるとき、ゴール裏スタンド下の通路から、それを上回る大きな声が聞こえてきました。日テレ・東京ヴェルディベレーザの選手は、いつも以上に気持ちを高めてピッチに入ったようです。
先制攻撃が不発となった日テレ・東京ヴェルディベレーザ
どうしても先制点が欲しい日テレ・東京ヴェルディベレーザ。それに対して、サンフレッチェ広島レジーナは立ち上がりの時間帯にポジションを少し動かし、強度の高い守備をできる選手を高い位置に配置。勢いをつけたかった日テレ・東京ヴェルディベレーザを止めました。その後は5枚のディフェンスラインを敷いてデリケートなラインコントロール。試合の主導権をサンフレッチェ広島レジーナが握っていきました。
狙い通りの守備から得点したサンフレッチェ広島レジーナ
サンフレッチェ広島レジーナは高い位置でボールを奪って、50分にカウンター攻撃から先制点。その後、オウンゴールで追いつかれたものの1−1で引き分け、サンフレッチェ広島レジーナが準決勝進出を決めました。
良く戦ったが、またしてもカウンター攻撃に沈んだ日テレ・東京ヴェルディベレーザ
「選手たちは最後までよく戦ったと思っています。」
日テレ・東京ヴェルディベレーザの松田岳夫監督は、アディショナルタイムまで闘志をむき出しにプレーした選手を讃えました。むしろ、このようなグループステージ敗退の結果を招いたのは、ここに至るまでの過程でした。
「長野、大宮、広島と3戦に引き分け。上のステージに行くために厳しい状況に自分たちで追い込んでしまったと思ってます。」
特に10月9日に行われたAC長野パルセイロ・レディース戦は試合運びに悔いが残ります。10月27日に行われた大宮アルディージャVENTUS戦も縦に速いカウンター攻撃で痛い失点を喫しました。
若いチームでも頂点を目指すのは日テレ・東京ヴェルディベレーザの宿命
記事の冒頭で「必勝態勢」と書いたものの、この試合の日テレ・東京ヴェルディベレーザのスタメン平均年齢は21.91歳です。唯一の30代となった村松智子選手は、試合後に悔しさを隠せませんでしたた。
「AC長野戦は2−0で勝ってる状況から追いつかれたのでディフェンスとしてすごく責任を感じています。勢いのあるのある相手に前から来られて飲まれてしまうことがちょっと多いです。最近は、ビルドアップを良い状態で前の選手につけられないことが多く、フォワードが落ちてきて、ようやく前に進める。けれども、前に人がいないことが続いていたので、そこはもう1回、しっかりとやらなければいけないと思います。」
平均年齢のことを聞いてみると、間髪入れずに答えが返ってきました。
「年齢とか、若さとかは全く関係ないと思っています。ボールを持つこと、奪われないことは当たり前。こだわりを持ってずっと練習で取り組んでいるので、それを出すところは試合……というか、それが出せないのだったらもっと突き詰めてやらなければいけない。」
焦る日テレ・東京ヴェルディベレーザの攻撃を冷静に跳ね返したサンフレッチェ広島レジーナ
この試合で衝撃的だったのは、攻め手を失い、日テレ・東京ヴェルディベレーザがロングボールの放り込みを何度か行ったことです。準決勝進出のために、どうしても1点が欲しい場面ではありましたが日テレ・東京ヴェルディベレーザらしさを失った攻撃でした。松田監督は、これを良しとしなかったのか、浮き玉の競り合いに強い鈴木陽選手を投入しませんでした。
一人ひとりが役割を全うするサンフレッチェ広島レジーナの強さ
サンフレッチェ広島レジーナの最終ラインを牽引する左山桃子選手は「自分たちがやってきたことをしっかり出し切って戦えた」と振り返ります。
「(日テレ・東京ヴェルディベレーザが)放り込んでくれたので跳ね返すだけでした。目の前で細かくつながれる方がきつかった。最後の最後で相手は人数をかけてきました。(ディフェンスラインのコントロールのような)細かいところをチーム全員で集中してできたと感じています。」
50分の先制点を演出したのはサンフレッチェ広島レジーナの柳瀬楓菜選手でした。ハーフウェーライン付近でボール奪い一気にドリブル。ラストパスを李誠雅選手に送りアシストしました。このシーン以外にも、前に飛び出し相手を振り向かせないための守備のスプリント、味方が縦に蹴り出して窮地を脱した際の前からの追い込みといった献身的な走りを繰り返しました。
「自分は逆に、皆の足が止まりそうになるラストの時間が好きです。皆が本当に苦しい状況の中でこそ自分が走りたいという気持ちがあります。そこでチームに貢献できればと思っています。」
今のサンフレッチェ広島レジーナの強さを象徴するようなプレーを随所に披露しました。
サンフレッチェ広島レジーナは連覇に向けて一歩前進
繊細なディフェンスラインのラインコントロール、確実に前を向いて相手を剥がす姿勢、正確なパス、ボールのないところでのスプリント……基本に忠実で難しそうに見えないサッカーのサンフレッチェ広島レジーナが、グループステージを突破。連覇に近づきました。準決勝は12月8日(日)にピーススタジアム コネクテッド バイ ソフトバンクで行われます。
(2024年11月7日 石井和裕)