土俵際の西が丘 痛み分けで最終節へ 2024−25 WEリーグ クラシエカップ 大宮アルディージャVENTUSは初勝利を逃す(無料記事)
日テレ・東京ヴェルディベレーザと大宮アルディージャVENTUSの大激戦は1−1の引き分け
勝ち点3を積み上げてグループA首位で最終節を迎えたい日テレ・東京ヴェルディベレーザ、何が何でも初勝利を手にしたい大宮アルディージャVENTUS、両チームがエキサイティングな攻防を繰り広げました。全選手が限界までファイトする素晴らしい試合でしたが、残念ながら、これを958名しか目撃しませんでした。極めてもったいないことです。
1−1の引き分けながら、見せ場が多く、来場したファン・サポーターの多くは、獲得した勝ち点のことを抜きにすれば、満足を得られた「観戦」となったのではないでしょうか。
お互いにどうしても勝ちたい試合試合だった
2024−25 WEリーグ クラシエカップ グループステージは、残すところ、あと1節となりました。日テレ・東京ヴェルディベレーザは勝ち点9。首位・サンフレッチェ広島レジーナを勝ち点1の差で追い最終節を迎えます。準決勝進出のためには、もう、勝利しか選択肢は残されていません。
大宮アルディージャVENTUSはグループステージ勝ち点4。4つの引き分けで勝ち点を積みましたが、まだ勝利がありません。2024−25 SOMPO WEリーグも未勝利なので、2つのコンペティションを合計すると11試合で、まだ、白星がないということになります。
エース復活の大宮アルディージャVENTUSが最後まで攻め続けた
ワイルドな背番号9・井上綾香選手が日テレ・東京ヴェルディベレーザの最終ラインを突破。66分にシュートをゴールネットに突き刺して先制しました。日テレ・東京ヴェルディベレーザの村松智子選手が前に出た隙を突いた見事な抜け出しでした。
先制点で勢いづく大宮アルディージャVENTUS。逆に、日テレ・東京ヴェルディベレーザはリスクを承知で得点を奪いにいきました。試合の終盤は、激しいフィジカルコンタクトを伴うカウンター攻撃の応酬となりました。
大宮アルディージャVENTUSは守りに入らず、リードしてからも前線に残す選手の数を減らしませんでした。それでも日テレ・東京ヴェルディベレーザはディフェンスラインに人を残す対応をせず、攻撃の枚数を増やすことを選びました。それが、大激戦の最大の要因です。
失点後も受け身に回らず逆襲に出た日テレ・東京ヴェルディベレーザ
3バックの一角でプレーする坂部幸菜選手は失点のシーンの反省をしつつも、持ち味を生かした攻撃的なプレーを選びました。
「ちょっと怖い部分もあるのですが、前に出たら、どんどん圧をかけて同点に追いつけたっていうのは良かったと思います。」
こうした攻撃は選手の主体性から生まれました。日テレ・東京ヴェルディベレーザの松田岳夫監督は、大宮アルディージャVENTUSの勇猛果敢なカウンター攻撃に危ないシーンも多かったけれども、攻撃的姿勢で同点・逆転を狙った選手の判断を支持しました。
「リスク管理のところで負担はありますけれども、そのようなリスクを冒さないとゴールを奪えないという判断だったと思います。勝負に対する執念が選手に自然と出てきたのは、良いことだと思っています。」
非凡な才能が日テレ・東京ヴェルディベレーザを救った
同点ゴールのシュートコースをほとんどの人は予測できなかったはずです。松永未夢選手は意外なことにWEリーグ初ゴールでした。2006年生まれの若い選手ですが、WEリーグデビュー当初の勢いに任せたプレーではなく、今は、クレバーなプレー選択が目立ちます。このシュートも、右足でうたず、切り返してディフェンダー2人の体制を崩した上での左足。しかも、コースがひらけたファーサイドではなく、至近距離のニアサイドに放ちました。
「自分が最初にWEリーグに出場させてもらったときと監督も代わり、システムが代わり、自分に求められているプレーもどんどん変わっていく。でも自分ができることは変わらないので、そこをどのように出していくのか。そして、要求されている以上のプレーをしていきたい。もっと自分にできることを増やしていきたいと思いました。」
日テレ・東京ヴェルディベレーザに早くも訪れた大きな試練
72分の一撃で、日テレ・東京ヴェルディベレーザは同点に追いつき2024−25 WEリーグ クラシエカップ グループAの無敗を維持しました。しかし、最終節のサンフレッチェ広島レジーナ戦、首位との直接対決で勝利しなければグループステージ敗退となりタイトル獲得の野望は潰えてしまします。
日テレ・東京ヴェルディベレーザは昨シーズンから進化を止めません。しかし、まだ、本物の強さを手に入れているわけではありません。土俵際に追い込まれたシチュエーションで、何を出してくるのか…………もし、ここで勝利できれば、見えない壁を打ち崩し飛躍的な進歩を遂げるかもしれません。その可能性を感じるチームです。
(2024年10月27日 石井和裕)