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スポーツ選手は我慢しがち 女性300人以上のヒヤリングで把握したPMS(月経前症候群)生理痛に潜む病気と怪我のリスク

女子スポーツチームに特化したコンディション管理サービス『Lean』の提供で解決を図る立道友緯さん

女子サッカーに関わる男性指導者の多くは女性特有のコンディショニングを把握する壁の存在を感じると言います。それは、あらゆる競技の指導現場に共通する悩みのようです。公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)スポーツプロモーション部の松尾亜紀子さんは、スポーツ指導者向けの研修会を開催した際に、指導者たちから意見を聞いて感じたことがあると話しています。

「月経や貧血に対する悩みを抱える競技者が多いという現状です。女性特有の健康問題は、どうしても男性にとって直接実感できる部分ではなく、理解がまだ足りていないように感じます。これについては男性指導者からも、『女性を指導するにあたり、女性特有の健康問題にどう配慮して指導するべきかわからない』という悩みをよく聞きます。男性が女性の健康問題や身体的な特徴について学ぶ機会がそもそも少なく、知識と理解の少なさゆえに適切な指導が行き届いていないという問題があると感じました。」

公益財団法人日本スポーツ協会(JSPO)は「女性スポーツ促進に向けたスポーツ指導者ハンドブック」( https://www.japan-sports.or.jp/publish/tabid776.html#guidew01)を発行し、「スポーツ現場で活きる」知識の共有を促進しています。

パリ五輪で優勝の名将は選手の生理周期を含む体調を把握してきた

近年、女性特有の健康問題として、特に研究が行われているのはPMS(月経前症候群)です。PMS(月経前症候群)は月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。とくに精神状態が強い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)の場合もあります。

女子サッカーにおいては怪我の回避やトレーニング効率の向上の観点から注目が集まっています。その第一人者として知られるのは、アメリカ女子代表監督のエマ・ヘイズさん。パリ五輪でアメリカ女子代表を優勝に導きました。昨シーズンまでチェルシーの監督としてチームを指揮し、イングランド女子プロサッカーリーグWSL5連覇を達成した名将です。その強さの背景には、世界でもいち早く導入したアプリで選手の生理周期を含む体調を把握する取り組みがありました。

日本でも誕生している女子スポーツチームに特化したコンディション管理サービス

海の向こうの話だけではありません。株式会社LEANは、日本で女子スポーツチームに特化したコンディション管理サービス『Lean』を提供している会社です。『Lean』は女子スポーツチームのパフォーマンスを上げることに特化していることが強みです。そして、特に重要なのが、このサービスの利用(入力)は、選手たちにも馴染みが深いLINEを経由できる点です。

株式会社LEAN 代表 立道友緯さん(左) 画像提供:株式会社LEAN

株式会社LEAN 代表の立道友緯さんが会社を立ち上げたのは2023年5月。外資系投資銀行出身の立道さんは、なぜ、このサービスを立ち上げたのでしょうか。立ち上げの経緯で把握した女性特有の悩みについてもお聞きしました。

コンディションや健康状態を把握することが怪我を減らし成長につながる 画像提供:株式会社LEAN

経験とヒヤリングから生まれた「女性特有の健康課題を解決したい」思い

スイスでの経験が立道さんの起業につながりました。

「ジュネーブ大学に1年間、留学をさせていただいたときに、一緒に旅行した友人は生理痛がすごく重く悩んでいました。帰国後に、彼女は病気が発覚し手術をしました。生理痛の裏に病気が潜んでいたのです。将来の不妊につながることがあると知り衝撃を受け、問題の大きさに気づきました。だから、こうした女性特有の健康課題を解決したいと思い起業しました。」

300人以上の女性に一対一でヒアリング

立道さんの行動力に驚くのは、すぐに技術開発や資金調達に動いたわけではないところです。まず始めたのは産婦人科現場でのボランティアとヒヤリング調査でした。

「300人以上の女性に一対一でヒアリングをさせていただきました。その結果、家族にも話していないような女性特有の悩みを把握することができました。タブー視され、1人で悩みを抱え込んでいることが課題だと思いました。」

ヒヤリングを通じて驚いたことがあります。予想以上に詳しく悩みを打ち明けてくれる女性がいたのです。「家族にも言っていないのですが、私、実は手術しました」「1年以内に、産むか産まないかを決めなければならない」といった話が飛び出してきました。立道さんは「全く面識のない人」だから話してくれた面があるのではないかと考えました。

客観的に見ると悩んでいてもおかしくないはずなのに、他の人と比べられないから悩んでいない女性たち

さらに、全く予想外なこともありました。

「皆、悩んでいるだろうという前提でヒヤリングしたのですが、実際に話を聞いてみると『当人は悩んでいない』と感じることが多かったです。ただ、詳しく話を聞くと生活に支障は出ている。

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